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2021年7月の記事一覧
フニクリ・フニクラ 冒険心あおるCMソングの元祖
変拍子っぽく聴こえるトリッキーなモチーフの割付。ⅢmやⅤへの部分転調。転々とした和音進行と怒涛の同音連打「フニクリフニクラ」は呪文のよう。ノリ良く親しみやすいメロ・リズムは「おにのパンツ」ですら許す大きな器。
歌い人・森山良子の一筆箋『この広い野原いっぱい』
かろやかな曲想というのが第一印象でしたが、普遍の風光明媚とロマンが理想高くうたわれています。あなたと私の関係に現実のリスナーと森山良子をあてはめても読めることから、彼女のファーストシングルとしてとてもおあつらえ向きという点にも鑑賞を重ねてから気づきました。飽きの来ない垢抜け感。当時の森山良子のジャズ志向をあながち無視したものでもない秀作。
吉田拓郎『たどり着いたらいつも雨降り』 雨天は人生の普遍
雨天は人生の普遍。平易なコードに、ちょっとⅢorⅢmの癖。音楽上の字余りが独創性を高めています。今日聴いても今日の歌。明日聴いたら、明日の歌。
The Beatles『Eleanor Rigby』 不協和とシュールの寓意
シュールな歌詞の世界の手ざわりは硬質。哲学の問いのようでもあります。弦楽器のストロークやカウンターラインが奇麗。ボーカルと同時に横に流れ、ときに縦の線で不和を起こします。不協を背景に跳躍の歌唱は高度。空耳のおかしみは音楽の魅力に符合します。
松田聖子『瑠璃色の地球』三賢人の楽船
平井夏美の音楽の語彙の豊富さ。こりかたまった心に染み入る松本隆の言葉つむぎ。音楽とことばを透明に映しとる松田聖子の歌唱。裏表のない美しさに出会えた稀。普遍を究めるほどに、いろんな個人や社会の境遇に響くのです。
井上陽水『帰れない二人』 星よ、帰らないで。
曲に独立した深い想像の世界を持たせた上で現実をネタにしたジョークの世界としても超一級。アイディアの出発点はRCサクセション『指輪をはめたい』とのこと。ふらふらしたもやつくコード感やイケズなメロディセンスも絶品。
くるり『野球』 モチーフを大事に
モチーフを丁寧に扱うことの大事さ。モチーフはそこらにあるし、すでにここにあることも教えてくれます。背景を変えたり、環境を移したりするのもきっかけ。主題や資源への執着もヒントのひとつかもしれません。明日もきっと、音楽好き。
坂本九『ともだち』 拡散のエナジー・バトン
印象深い低音下行はアコベに低域ブラスの合音。スウィンギーでエナジーがあり、ともだちに託した! のマイナーシックス・アドナイン。結ぶのでなく開くエンディングはむしろプロローグ。ともだちと前を向いて事を始めるための歌か。
RCサクセション『君が僕を知ってる』規範を否定する規範
歌い出しの歌詞は不変の仲とは何かの思考をくれます。友達ってそういうものでは。音源を聴けばさまざまな彩りが気付きをくれますが、それ以上の主題をこの曲は含んでいます。音楽で、音楽以上のものをやっている。そんな気にさせる偉業であり、なのにこんなにも愛嬌がある。
渚にまつわるエトセトラ 松原ってどこ?
痛快珍奇な歌の世界。固有名詞をつかってありえない世界を描く仙人芸。松原は各地に存在しますが、福岡県にもあるようです。ガザミ(ワタリガニ)が揚がる土地みたいですよ。サビ“カニ食べ行こう”にも合点がいきます。
めだかの兄妹 就寝前の箴言
一見ゆるいお遊戯。萩本家3姉妹、就寝前設定の「欽どこ」。姿かたちの似た種でスケールアップする想像(あるいはペンギンのオチ)。大きくなっても種族までは変わらないの正論で覆す。歌いやすく平易なリズムで抑揚・ポジ取りの妙。深読みゃ箴言。