鞄が一つしかない ー 創作詩13

何かを詰めようとしても
もう中がいっぱいいっぱいで
何も入らないみたいだ

でも、あれもこれも全部大切なモノで
持って行かないなんて考えられない

でも、鞄は一つしかないから
私はどうにかしてこの鞄に
全てを詰め込まなければいけないのだ


成功はしなくてもいいから
失敗したくないと思う
だから大切ななものは全部抱えて
そうしてから旅へ出て行きたい

皆はそれは難しいことだと言う
なぜって、君が持っていけるのは
その鞄一つだけだろ と


やっぱり全部は無理だろうか?

確かに、よく、よく考えてみたら
私がいくら躍起になって頑張っても
あの鞄一つには入り切らない
私は我儘で欲張りなのかもしれない

そんな考えへ辿り着いて
私は諦めることにした、
だから諦めようとしていた

それなのに


彼等は私に言う
君はもっと挑戦してみるべきだ

どこか他人行儀な
閉じ籠もってばかりの私自身も
まるで数学の証明を解くように
皆、口を揃えて私に話してくる


挑戦することも、旅に出ることも
やることは同じはずだ

何かしらの経験や結果を自覚して、
今の私に小さくても変化が起こる、
そういう挑戦にはどうしたって
準備が必要になるのだ

しかも大抵、私以外の誰かが
成果を評価する期限を決めている
限られた期間にできることは
これもまた限られているだろうに


挑戦は人を成長させるらしい
だからなんだ、と私は思う

可愛い子には旅をさせろ?
よく言ったものだ

たいして私のこと、
可愛いと思ってもいないくせに

失敗したくなさに逆らってまで
挑戦しよう!
みたく馬鹿な考えを持つ奴が
いったい何処にいるというんだ

少なくとも此処にはいない
いや、ああそうだ、そうだった


「此処にいるのか。」

とても皮肉めいた言葉だなと
そう感じるようになったのはいつから?

自然と口から放たれたそれは
隠したはずの傷を私に見せつけてきた

私は自分が何者なのかを見失って
目の前の自身に八つ当たりをして
ガラスか何かが割れた音を聞いた

少しの間、部屋の窓を眺めながら
大袈裟なくらい顔を歪めて
涙は流さないで、私は一人泣いた


そして今日という日付が変わる前

私は私の不安が塗り潰した筆の墨汁で
もう書き連ねてある字を清書する


「私、頑張ります。」


挑戦は人を成長させるらしい
確かにそうだ、と私は言った


皆が口を揃えて難しいと言ったが、
無理だとは誰の一人も言わなかった


大事なものの全てを抱えて
そうしてから、私は旅に出たい
不安は一つも無くて、
明日が楽しみに思える旅をしたい

誰も来たがらない場所へ
私だけが目指している場所へ

そんなふうに、強く、思ったから


鞄は一つしかない
だから今、
私はこれに全てを詰め込んでいる


さあ、旅に出よう
荷物は全部持っている

鞄一つだけ?
足りないんじゃないか?

そんな彼等に向かって私は言った


大丈夫
全て此処に入っているから

少なくとも私は、
荷物はこれで十分だと思えるから


私は私が行きたかった世界へ
ついに挑戦しに行くんだ

だから
楽しみでしかない
不安はなにもない

きっと最高の旅になる


そんな未来の自分を想像して
わくわくしながら旅の準備を始めた




未来に不安や恐怖を感じている_へ

「だから、私は私のかいた詩に初めて
メッセージを書いてみることにした。」


私が自分のことを否定的に見れば、

私は、かなりの心配症で恐がりなのに
挑戦や未来を考えることが大好きで、
とても強がるのに少しの我慢もできず
よくミスをするおっちょこちょいだが
それでいて完璧主義者、そんな人間だ。

ほんとうは、完璧を求めすぎるのは
あまり良くないと分かってるつもり。

だけど、ここは安全でもう大丈夫だと
そう思うことがない場所で、状況で、
安心するような人は、たぶんいない。

それに、
未来が恐いと思うのは自然な感情だ。
もっといえば大切な考え方だと思う。
だって未来が恐いと思い感じるのは、
「明日を今日よりも良い日にしたい」
そんな素敵な考えを持っているから。

だから、完璧を追い求めるこの行為が
悪いことであるはずがないと思うし、
きっとそうだと信じ続けていたい。


でもこれから先、自分の夢が定まり、
生きたいと思える未来が見えたとき。

私にはあまり時間が残されていない。


何故だか分からないが、この考えに
疑う気持ちは一切生まれないから、
きっとそうなのだと、思ってしまう。


夢を叶えたいなら、私は諦めなければ。


だって、私の追い求めている完璧は、
挑戦を始める前にする準備だからだ。
いわば冒険前の荷造り。
絶対に辿り着けると思えても、その時、
私はまだ旅に出てすらいないのだ。

時間が限られていると分かってるのに
完璧を追い求め続けていてはダメだ。

そう、思っている。


だから、
この願いを閉じ込めてしまいたくて、
でも、どうしても消したくなかった。


だから、私は私のかいた詩に初めて、
メッセージを書いてみることにした。

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