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【相互インタビュー#01】言ノ葉執筆屋・ぶちさん「人の話を聞き、言葉の力でデザインしたい」

フリーランスのWebライターとして活躍するぶち(岩渕ゆり)さんは、オンライン取材や東京での対面取材もこなすベテランライターである。
私はSNSを通じてぶちさんと交流があった。今回、彼女が企画する「相互インタビュー」の相手役を務めたので、その内容をnoteにまとめようと思う。

生まれ育った関東の地を離れて岩手へ嫁ぎ、彼女はどのように仕事と向き合い、自身のスタイルを確立してきたのだろうか。
多忙な執筆業をこなす彼女に、仕事への思い、責任感、これからの展望などを聞いた。

岩渕 友理(Iwabuchi Yuri) / ライター名:岩渕 ゆり
1989年、埼玉県出身。株式会社ニュートンの社員として、パーティ会場の接客を中心に10年以上サービス業に従事。2020年、再婚した夫の故郷である岩手へのUターンを機に、ライターへ転身。フリーランスライターとして2020年7月から活動を開始。
執筆記事は、ビジネスや士業・医療などSEOを意識したものが中心だったが、2022年以降は、地方創生・社内外広報・生き方などをテーマにした「オンライン取材」や「東京・岩手・宮城県内での対面取材」も対応を始める。
現在はSEO・取材のほか、コーポレートサイトの執筆や地方団体の記念誌執筆など、幅広く活動中。
2歳からピアノを習い、高校は芸術学科音楽専攻を卒業。芸術(音楽・美術)や光・海などの自然、建物を見るのが好き。アニメ・ゲーム・漫画など、古のオタクでもある。

プロフィールページより引用

インタビュアー・ばんびの自己紹介は↓こちら

結婚を機に岩手へ

ぶちさんの経歴を見ると「ニュートン」という文字に目がいった。ニュートンといえば、あの有名な科学系雑誌だろうか。

「リゾートホテルやウェディング事業などのあるサービス業です」

前職の会社ではサービス業に従事。接客の仕事が好きで、お客様の喜ぶ姿にやりがいを感じていたと言う。
「でも、結婚を機に岩手に引っ越してきてから、なかなか納得のいく仕事に就けなくて...…」

筆者自身、田舎に暮らしているので、彼女の悩みはよくわかる。都心に比べると圧倒的に就職先が少なく、車で何十分もの通勤時間をかけて出勤するのが普通だ。勤務地まで一山越えて出勤するなんてこともある。

なるべくなら家の近くで働きたい、というのが主婦の本音だろう。

だが、通える範囲で求人があったとしても、彼女の接客スキルを存分に発揮できる職種ではなかった。

悩んだ末に、ぶちさんが辿り着いたのは在宅ワークだった。

「自分で仕事のスケジュールを決められるのが魅力的でした。最初は車通勤をしなくていい、そんな理由で始めたのですけど、だんだんと自分でも何か価値あるものを提供できるのでは、と思うようになったんです」

SEOライターから取材ライターへ

最初のライティング業務は、クラウドソーシングサイトで受注した採用記事の執筆だった。1文字1円以下の、いわゆる低単価案件。彼女もここからスタートしたのかと驚いた。

「簡単なタスク案件とか、2000文字で600円とかからのスタートでしたよ」

それからしばらくはSEO記事中心に執筆していた。単価も少しずつ上がり、オウンドメディアを運用する企業との直接契約も増えていった。インタビューや取材記事も、ぽつぽつと受注するようになっていた。

転機となったのは2023年秋頃。SEO記事を受注していたクライアントから「取材をやってみませんか」と声をかけられた。

それまで取材を担当していた社員が退職し、後任ライターを探していたクライアントが、ぶちさんに白羽の矢を立てたのだ。

これをきっかけに、取材の仕事が爆発的に増えていく。コーポレートサイトの執筆やコンテンツ制作など、SEO記事以外の仕事を紹介してもらえるようになった。

ところで、前任者の退職があったとはいえ、なぜクライアントはぶちさんを大抜擢したのだろうか。
ぶちさんがクライアントに理由をたずねてみると、こんな答えが返ってきた。

「まず納期を落とさないよね。誤字脱字も少ない。レギュレーションにとても気を遣ってくれていることが文章からわかるし、あと、徹底的に調べてるのがわかるから、安心して任せられる

真摯に取り組む姿勢が実を結んだ。
そこからの活躍はめざましい。採用サイト、医療従事者、レジャーなどの分野でも取材依頼が絶えなくなった。

誰かの人生が変わるかもしれない。文章への責任感

ただ、ふと疑問が浮かぶ。納期を守り、誤字脱字のない文章を書くだけなら誰でもできる。彼女はなんでもないことのように語るのだが、もっと何か人と違うものがあるのではないか——。

なにか、記事を書くうえでのこだわりのようなものがあるのだろうか。たとえば、徹底したリサーチとはどの程度のリサーチ量なのか?
質問を重ねてみた。

「図書館で本を借りたりもするし、自分でも本を買って調べます。知り合いにそのジャンルについて詳しい人がいたら、話を聞きにも行きます。いろんな角度から見て、一つ一つめちゃくちゃ調べてます」

自分の中で疑問がなくなるまで、納期の限界までリサーチを続けるという。

私も同業者なので、リサーチの大切さはよくわかる。だが、正直彼女ほど徹底的に調べているかというと、もう少し早めに切り上げているような気もする。

ここに、ふつうのライターとの差があるのかもしれない。

ぶちさんが徹底的にリサーチするのは、自分の疑問を解消するためではない。書いた文章が読者に与える影響の大きさを理解しているからだ。

「例えば、採用記事を読んで応募しようと思ったら、その人の人生が変わるかもしれないですよね。サプリメントの記事を書いたら、それを買った人の悩みが解消されて、人生が変わるかもしれない。もちろんその逆もある。そう考えると、軽はずみに書けないんです。私が書いた文章が、誰かの行動を変えるきっかけになる可能性がある。だから、納得できるクオリティになるまで調べることを心がけています」

真摯にコンテンツと向き合い、手間を惜しまずリサーチを重ねる。ぶちさんの仕事への姿勢は、クライアントからの厚い信頼を集め、新たな扉を開いていった。
ライターとしてのスキルを着実に向上させながら、ぶちさんは着実にキャリアを積み重ねている。

主婦業と両立しながら取材をこなす日々

相互取材をする1か月ほど前、ぶちさんがポストしていた内容がなかなか衝撃的だった。

活躍ぶりが垣間見える。別案件も執筆しながらの出張取材だ。2人の子供を育てながら仕事をこなすのは、決して楽ではないだろう。

「3月は1か月で15本のインタビュー記事を書いたんです。キャパオーバー気味でしたね」と苦笑する。

「子供たちの春休みと重なってしまって、なかなか集中できない日もありました。でも、何とかスケジュール調整しながらやり切りました」

子供は8歳(小学2年生)と5歳(保育園)。まだまだ、手のかかる年頃だ。ぶちさんは、平日は7時半から16時までの間に集中して仕事に取り組むことを心がけているという。

「16時以降は子供たちの相手をしたり、家事をしたりと、プライベートの時間を大切にしています。ただ、納期が迫っている土日には夫に子供を見てもらったり、夜中にも執筆したりしています」

多忙な毎日だが、ぶちさんは「人の話を聞き、人と話した上で何か作っていく仕事」に関わっていきたいと話す。

「コーポレートサイトの改修にしても、求人サイトの記事を書くにしても、どんな考えをされているのかとか、ターゲットやプランとかの話を聞いて、気持ちを伝える部分をデザインしたい。人の思いを伝える部分を担っていければと思っています」

だれかの真似ではなく、自分がやりたいことをやる

だれか目標にしているライターがいるのかと、ぶちさんのロールモデルを聞くと、意外な答えが返ってきた。

「ロールモデルとか憧れの人とかは、いないですね。一言でWebライターといっても仕事内容はさまざまで、歩いているところが全然違うから」

「ライターとして名の知れた人になりたいとか、そういう気持ちもまったくないわけではなく、有名なライターさんの書籍を読むと憧れる気持ちはあります。でも、その人になりたいとか真似したいとかは一切ないですね。私は私で、自分でやってみたいと思ったことをやりたい。なんか面白いやつがいるぞ、くらいに名前が認知されたらうれしいですけどね」

確かに、Webライターの仕事は千差万別で、だれかが成功した方法をそのまま取り入れてもうまくいくとは限らない。
小手先のノウハウや手法には目もくれず、「私は私」と言い切るぶちさんからは、ブレない軸のようなものがしっかりあるのだと感じた。


今回のインタビューを通して、ぶちさんのライターとしての揺るぎない信念と、言葉に対する真摯な姿勢を強く感じることができた。

接客業で培ったコミュニケーション力を活かし、相手の話に耳を傾け、丁寧に言葉を紡ぐ。そんな彼女の姿は、屋号の「言ノ葉執筆屋」にふさわしいと言えるだろう。

納得できるまでリサーチを重ね、ヒアリングをもとに思いをデザインする。丁寧な仕事ぶりはクライアントの信頼を勝ち取り、着実にキャリアを積み重ねている。

主婦業と両立しながら、多忙な日々を過ごすぶちさん。それでも、人の思いを言葉にすることへの情熱は尽きることがない。「言葉のプロ」としてのプライドと責任感を持ち、これからも自分らしい道を歩んでいくことだろう。

彼女の言葉が紡ぎだす世界に、今後も注目していきたい。


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