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詩だけを抜き出したマガジン

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創作を雑多に入れていたマガジンから「詩」を抜き出して読みやすいようにします。
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#詩

秋に思う(事故で亡くなった従兄に寄せて)

あなたとの別れが始まったのは 初夏の日の夕暮れ あなたは自転車に乗って ちょっと出かけただ…

入り江わに
13日前
3

死者の呪縛

親は子に 我知らず呪いをかける 特に逆縁では 遺された兄弟姉妹に 兄は賢かった 姉は美しかっ…

入り江わに
9か月前
8

青に眩む(ぬまづ文芸2023入選)

雲ひとつない青空は 誰の目にも同じ色 ではない 名前のある青 名前のない青 打ちのめされて…

入り江わに
11か月前
3

実るもの

春は一面のれんげの花 こどもたちは花冠をつくり 首飾りをつくり 遠くへ もっと遠くへと あっ…

6

ネクタイを買う

ネクタイを買った 最初は父に 父の日のネクタイ 派手好きな父が 好みそうな配色を ネクタイの…

1

実るもの

春は一面のれんげの花 こどもたちは花冠をつくり 首飾りをつくり 遠くへ もっと遠くへと あっ…

4

愚者~タロットより~

若者は愚かなのではない 経験が足りないだけ 晴れた空を仰ぐことができる 小鳥と話すことができる バックパックひとつで 世界を渡ることができる 私たちは賢いのではない 慎重になっただけ 坂道をうつむき歩くから 空の深さに気付けなくなった どうか転ぶ前に止めないで 彼の世界を狭くしないで 転んだときに助けてあげて 踊るようなステップを止めないで 若者の一歩が世界を開く 彼の眼差しは未来を見る 私たちの目にまぶしいのは 若さの持つ輝き

ひこうき雲

私たちの権利は しあわせになること 権利は容易に剥奪される 焼け野原 爆撃 日本の老人が涙を…

7

それ演歌じゃないか

歌を聞いて泣くお前が また泣き出して 泣きながら言うには アタシ死なないから アンタより先…

終末まで何光年

私は空に星を飾る 見えないのは光が弱いから そこにある ただそこにある 星は残る きっと 誰…

1

無限階段

降りることを許されたものだけが 階段を降りることができる 一段ずつ 上って上って 踊り場で…

2

事故で死ぬということ

赤信号 自転車で 止まっていた従兄はなぜ 追突されなければならなかったのか ICU 管につ…

3

葬送曲

従兄が死んだ 葬儀があった 年をとるほど 死に近くなる けれど母は 死から離れる 生きている…

3

いまどうしてる?

いまどうしてる? 車椅子の生徒 進学クラスの理系で 情報処理系の学部を目指してた 数学を友人に教えてたあの子 いまどうしてる? 強迫神経症気味で 清潔な職場を探して いくつも見学に行って 製パン工場に就職したあの子 いまどうしてる? 軽い発達障害 工場でじっと立つ作業ができない 冬も間近にやっと求人が来て 高所作業車で働くことにしたあの子 いまどうしてる? 俳優養成所 競輪選手養成所 才能に賭けた 進路の子たち いまどうしてる? 就職氷河期でどこにも採用されず 探して