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実るもの

春は一面のれんげの花
こどもたちは花冠をつくり
首飾りをつくり
遠くへ もっと遠くへと
あっちの方が花が多いよと

おおーい そっち行くなぁ
農家のおじさんが呼びかける
用水路があるから危ないぞぉと

遠くのれんげはなぜ呼ぶのだろう
遠くのれんげはなぜ濃いのだろう

ある日農耕機がれんげの花畑にはいり
れんげの花々を掘り返す
力強く
花のじゅうたんをひっくり返す
花畑の遊びはおしまい
村のこどもたちはみな知っていること

一面に真っ黒な土
もうそこは入ってはいけない場所

水を入れるぞぉー

れんげ畑は水田になる
稲が育つのだ
あっという間に早苗の列

梅雨の間はあまがえるの合唱
こどもたちはかえるをつかむ
道に出て遠くへ行くと
ひからびてしまうよ と
田んぼにもどす

おおーい そっち行くなぁ

田んぼのかえるはなぜ出るのだろう
遠くの世界を見たいのだろうか

水田は青々とした稲の海に変わる
じりじり暑い夏の日差し
台風から稲穂を守り
やがて実りの秋がくる

刈り取り

脱穀

金色の稲穂が 米になる
こどもたちを育てる米になる

何度も季節を繰り返し
ある春のれんげの中
もう 行くなとは言われない
用水路をひょいと越えて
こどもは大人の世界を開く

おおーい そっち行くなぁ

呼びかけるのは若者
呼びかけられるのはこどもたち

村を離れた若者にも
春には胸にれんげが咲く
秋には田んぼに稲が実る

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