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「億男」の書評 (1/2)

ある日、借金3000万円ある図書館司書の男が、3億円を手に入れる。そして、親友とその友人に会っていく中で、「お金と幸せについて」を考えていく小説。

①動機

生きていく中で、「お金に人生を振り回されたくない」と思い、メルカリで300円で購入した。

②刺さった言葉

お金で幸せを買うことはできないかもしれない。だが、少なくとも、自由を手に入れることができる。好きなことをする自由。嫌なことをしなくて済む自由。 p.33
けれど三億円のお金を手にした今、一男は気付いた。自分は自由を得たのだと。一番安い牛乳ではなく一番美味しい牛乳を買い、一番安いパンではなく一番食べたいパンを買うという自由を。 p.33
九十九は、あれからずっと金持ちたちと同じように考え、行動し、莫大な資産を手に入れたのだろう。そしていつしか、お金のことだけは何もかも分かるようになった。果たして彼は”落語家”と同じように”金持ち”になったのだ。
だがそれは同時に、九十九が決定的に変わってしまったことを意味していた。九十九の姿も声も、何もかも同じはずなのに、まるで違う人間になってしまったのだ。 p.52
自分を特別だと思うなかれ、一億円以上の宝くじの当選者は、年間五百人もいるんだ。ということは、この十年だけで五千人以上ということだ。君みたいな人はたくさんいるんだ。 p.58
「一男くん。君は、少し調べるだけで分かるあたりまえのルールを知ろうともしなかった。お金の世界では、このルールを理解しているものが富み、知らない人間が貧しくなっていく。ポーカーやチェスと変わらない。そこには、誰にでも平等なルールがあるだけなんだよ。
ただ、そのルールを理解し、勝てるまで学び、考えて行動する。それだけが勝敗を分けているんだ。

ポーカーでもチェスでも勝てるものは然るべくして勝ち、負ける者は然るべきしくして負ける。それと同じことなんだよ。」 p.59
「ねえアンタ、なんで今どきこのビルなのよ?」やってきたおかまタレントが九十九に訊ねる。「なんかさ、もう流行らない感じじゃない、このビル」
「分かりやすいんだよ」九十九はシャンパンコーラを飲みながら明瞭に話し出す。「分かりやすいっていうのは大事なことなんだ。誰でも知っているから説明しなくても済むだろ。実際、君たちは誰も迷わなかった。だからこのビル。シャンパンはとにかく、この黒い星のもの。車は馬のエンブレムの赤いやつ。分かりやすいのが一番さ」

大学時代。九十九が落語について語るとき、彼はいつも「分かりやすいものと、良いものとは必ずしも一致しない」と繰り返していた。それはきっと、今も九十九の中で信念としてあるはずだ。ただ今の九十九は「考えたくない」と言っているのだと、一男は思った。 p.63
タワービルの高層階で、高い寿司を食べ、酒を飲み、美女に囲まれ、福沢諭吉の絨毯の上で大騒ぎしているうちに、一男は自分がお金そのもののような気がしてきた。急にパン工場のベルトコンベアの前に立っている自分の姿が重なった。パン生地と格闘しているうちに、自分とパンの境界線が分からなくなってきた。そして今、自分がお金なのか、お金が自分なのか、分からなくなってきた。 p.64

↑自分の身につけている物、行っている行動が自分の一部になっているんだと思う。

「私は、お金のことを愛しすぎていた。だから嫌って生きてきた。けれども嫌えば嫌うほど、お金から逃れることができなくなっていったんです」 p.85

↑愛しすぎると、嫌な部分も見えてくるのかな。だけど、愛しいから離れられないのかもしれない。一種の依存症のようなものなのかもしれない。

「・・・僕は、まず弟の借金を返さなくれはならないです。そしてその借金のせいで壊れてしまった僕の家族、僕の妻と娘を取り戻さなくてはいけない」
「お金があれば、家族を買い戻せると」
「その可能性はあると思います」
「私はそうは思いません」
「どうしてですか?」
「あなたが欲しいものは、お金で買えないからこそ手に入れたいものだから」 p.97

↑お金だけで簡単に手に入るものって、なぜだか白けてしまうことがある。大学生のなりたてにお金をためて買ったスニーカーも、いつの間にか「いつもの」スニーカーになってしまうことがあると思った。

お金で、愛は買えない。
誰もがそう信じている。
そう信じようとしている。
だが、果たしてそうなのだろうか。
きっとお金で、愛は買える。人の心も買える。
だからこそ僕らは、お金では買えない、愛や心を探している。
 p.102
かつてアメリカの大富豪、ジョン・ロックフェラーは「十セントを大切にしない心が、君をボーイのままにしているんだよ」と”はした金”の大切さを説いた p.112
「ちょうどボクも、そろそろ金のゲームはおしまいにしようと思っていたとこなんや。最近ようやくボクも気付いたんよ。世の中、金じゃ買えへんこともぎょうさんあるってことを。いわゆるプライスレスっちゅうやつやな。
忘れられへん思い出とか、大切な友情とか、かけがえのない家族の愛情とかそういうやつや。そういう金で買えへん幸せっちゅうもんをいくつ持っているかっていうのが、人生の豊かさを決める。そういうことやな」 p.114


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