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花束を、言葉に変えて

1週間と少し前。
いつもなら、鳴ったアラームを止めるついでに、スマホを眺めながら5分はうだうだとするのに、その日は少し事情が違った。
大好きな大好きなバンド、BUMP OF CHICKENのソングライターであり、ヴォーカルギター藤原さんご結婚のお知らせだった。
あまりの驚きに一発で目が覚めたものの、あまりの驚きゆえに頭は回らず、あわあわと隙間隙間で友人達とそのことについてやりとりをし、それでもなんとか自分と子の身支度をし、送り出し、いつも通りの電車に乗る。あれだ、その日一日の私の脳内を表すならば、「あわわわわわ」である。もうとにかくびっくりして、思考なのか感情なのか処理が追いつかなくて、どうしようどうしたらいいかないやとりあえず仕事しろよっていう。あわわわわ。

藤原さんは、憧れの人だ。
うん、"憧れの人"という言い方が一番しっくりくる。もしかして一定年代以上じゃないと伝わらない言い回しなんじゃないかと思って、今別方向から地味なダメージを受けたけれども、まあ気にしないことにしよう。
野暮だろうなと思いながら一応もう少し詳し目に落とし込んでおくならば、「関わりはないけど同じ学校のめっちゃかっこいい先輩」とか、なんかそんな感じ。

どこに憧れてるのかっていったら、そりゃもう沢山ある。
曲ととことん向き合うところとか、それを真摯に丁寧に、聴く人ひとりひとりに届けようとするところとか、少し不器用に聞こえるような、でもひとの想いと体温が、めいっぱい詰まったようなお話とか、お茶目なところとか。
特に、私自身こうして文字でものを表現しようとする身として、彼の目にはどんなふうに世界が映っていて、それをあらわす手段をどんな風に取り入れてきたのか、それを知りたいと思うほどの言葉選びとか。
このnoteを書いている今も、言葉は知らないと使えないと感じる。どこでどんな言葉を使うのか、センスによるものもあるかもしれないけれど、それでもどうしたって、知らなければ使いようがない。人一倍の時間をかけてきたのか、それとも、多くのことを吸収できる素質をお持ちなのか。どちらにしても、それが簡単に手に入るものでないこととか、ご本人はひたすら謙虚なこととか。
それでいて更には、とてもきれいな人だ。少なくとも、私の感覚ではそう思う。書き出していて思う。なんだこの過積載は。

とにもかくにも、遠くから見ているだけの憧れであれ、私は恋をした。
もう言い切ってしまおう。これは恋だ。
自分が見ているそのひとの姿が、どれほど断片的なものであろうとも、とてもとても素敵な人だ。大体において、対象が身近な人であれ次元の違う人であれ、恋なんてそんなもんだ。一目惚れなんて、それこそぱっと見てずがんと撃ち抜かれるんだし。

よーく思い出してみると、相手がどんな人でも、「恋をしたひとが、恋をしているうちに結婚した」というのは初めてかもしれない。恋人がいたことはあったと思う。
だからものすごくびっくりしたし、混乱したし、2、3日はなんとなく上の空になるくらいに空っぽな気持ちになった。そして、そうなった自分にも驚いて、ああそうか、恋をしているのだなぁとじんわりと思い知った。

ご結婚の報告は、彼らのレギュラーラジオ"PONTSUKA!"で行われていた。
インターネットのアーカイブ放送を聴いて、これまたびっくりしてしまった。その知らせはまるで畏まらずに、いつもの通りに柔らかい声音で届いたから。
意図するところはわからない。いまを生きる人について、あのときの行動はああだこうだと勝手を言うのはあまり好ましくないだろうけれど、私はその声色と言葉から、藤原さんにとっての結婚は、過去からその先へ続いていく毎日の中の、特別だけれど大げさではない、でも大事な、たくさんの出来事のひとつなのだろうなと、そう受け取った。そうしたら、ただあわわわわーっとしていた気持ちが、収まるところに収まった気がした。
友人がヒントをくれていた。変わってしまうのが怖かったのかもしれない。我ながら身勝手だなぁと思う。でもしょうがないのだ、恋なんてそんなもんだ。そういうことにしてほしい。

noteでも度々書いている通り、BUMP OF CHICKENの、藤原さんの書く音楽には、たくさんのものを気づかせてもらっている。
毎日のちょっとした元気も、押し込んでいた涙の正体も、世界は広くて色鮮やかで、色んなひと色んな物事があって、その気になれば手を伸ばして、もしかしたら触れられるかもしれないことも。
そんなこんなで恋をした。藤原さんに限らず、きっとBUMP OF CHICKENの4人みんなに恋をしている。だってかっこいいもん。恋をするには十分すぎる。
そうして彼らに恋をしたまま、わたしの日常は戻りつつある。これはあくまで私の場合だ。早い遅いにいいも悪いもない。
でも、せっかくまろやかになったことだ。形にしたい、届くなら届けたいと思うのだから、花びらの代わりにここに預けてみようと思う。

花のように、いい香りも華やかさもないけれど、たくさんの大好きとありがとうと祝福を。

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