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10. アボリジナルの言語におけるディジュリドゥの名称

オーストラリアのアボリジナルは多言語集団

アボリジナルの人々は自分たちの言語でディジュリドゥをどう呼んでいるんでしょう?まずアボリジナルの人々の使う言語は単一ではないことを理解した上で、彼らはある領域ごとに住み独自の言語を持つ多言語集団であることを知っておきたい。

[Map showing the distribution of Aboriginal tribes of Australia]Norman. B. Tindaleが1920年代から長年に渡る研究結果「Aboriginal Tribes of Australia(1974年)」に付録された地図。 State Library of Queensland

現在の言語マップとは異なる部分もありますが、特に内陸中央あたりの砂漠エリアの言語集団の領域が大きく、沿岸部の言語集団ごとの領域が狭く数が多いのがわかります。

[アーネム・ランド上空]トップエンドの北沿岸部にはたくさんのアボリジナル・ホームランドやいくつかのコミュニティがあります。海からの魚介類とユーカリの森からのブッシュ・フードという環境の豊かさが、狩猟採集生活を支えているのかもしれません。


アボリジナルは多言語でディジュリドゥの名称も多様

現在消滅の危機にある言語もありますが、Tindaleの地図を見るとオーストラリアには多様な言語集団が存在していることがわかります。ディジュリドゥが演奏されるオーストラリア北部トップエンドの中でも各言語グループごとにディジュリドゥの名称は違っている(共有されている場合もある)ことを考えれば、アボリジナルがディジュリドゥを指す名称にも多様性があることがわかります。

たとえば、Goulburn島のMawngの人々はAlawirr、東アーネム・ランドのNumbulwarのNunggubuyuの人々はLhambilglbilg、Wadeyeのキーが低いディジュリドゥはMarluk、Groote EylandtではYiraga、など地域や言語グループによって異なる名称の異なる特性の楽器が存在しています。

[Goulburn IslandsのAlawirr] 90年代後半にセレモニーのためにRaminginingを訪れていたGoulburn島の人々が使っていたテープで巻かれたユーズドのAlawirr。ドローンが「G#」でかなりハイピッチでハイプレッシャーです。楽器のサイズは小さめ。G#-/A-A#・114.4cm/2.2kg・3.1-3.2cm/7.8-9.3cm
[NumbulwarのLhambilgbilg]70年代のLhambilgbilg。北東アーネム・ランドのオールドファッションなイダキと酷似したサイズやキーで、当時のNumbulwarのディジュリドゥ演奏は北東アーネム・ランドのイダキ演奏とかなり似ていたことを思わせる。C#/F#・133.5cm/3.8kg・3.2-3.6cm/7cm
[WugularrのMago]Wugularrコミュニティが輩出したディジュリドゥ・マスターDavid Blanasiの70年代のMago。薄作りで太い本体に空洞を小さくするためにジョイントマウスピースが付けられています。E+/A-・118cm/1.8kg・3.1-3.5cm/9.4cm
[Northeast ArnhemlandのYidaki/Mandapul]Marikuku#2 Wirrpanda作のYidaki。長年このエリアのヨォルングの人たちはYidakiという言葉を使ってきましたが、似た名前の人が亡くなったことで代わりにMandapulという言葉が使われていました。最近はYidakiという言葉も戻ってきているようです。トゥーツをバランスよく鳴らすことからAlawirrやMagoよりもサイズが長くなっています。F/F# 146cm 4.2kg 3-3.2cm 8.4-8.8cm


[地域ごとのディジュリドゥの名称]

近い距離にあるエリア同士ではMagoとMako、AlawirrとAldawirr、YidakiとYiragaなど似た響きになっている点が興味深いですが、その関係性をひもとくには専門的な民俗学的、言語学的知識が必要なのかもしれません。

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