見出し画像

夫らしく生ききった日々 ~診断~②

私たちの人生が一変したのは、ある土曜日のことだった。

クリニックでの診察を受けた翌日、私と夫は血液内科のある、大きい病院へ向かった。
車がないため自転車で最寄り駅まで行き、そこでシャトルバスに乗り換え病院へ向かう。夫は「何も問題ないよ」と言いながら、いつも通りに自転車を漕いでいて、それを見て少し安心したのを覚えている。

病院に到着し、採血とマルク(骨髄検査)を終えた後、診察室に入った。
ここで、私たちは、これから治療を担当していただくS先生に出会う。
S先生は初老の男性で、淡々と、少しボソボソと話す先生という印象だった。

S先生から淡々とした口調で告げられた言葉は、
『急性骨髄性白血病です。白血球数が2万5千に上がっています。入院して治療を始めましょう』
そして、ビダーザという薬がある事を教えてくれた。ただ、その単独での寛解率は10%と低いと説明された。
夫とは年の差婚で、彼は高齢者のため治療の選択肢が限られていた。

私は、(それなら家に連れて帰ろう、家で最期を過ごしてもらおう)
と思った。

しかし、直後にS先生から4月から保険適応となったベネクレクスタという薬を併用することで、寛解率が50%に上がることを説明された。

それを聞いた夫が真剣な顔で
「受けます。入院します。頑張って生きます!」
と言っていた。

夫が私の顔を見ずにまっすぐに返答している姿を見て、彼の決意の固さに胸が締め付けられ、涙がこぼれそうになった。

診察後、治療ができること、生きられる可能性が半分もあることにホッとして、喜び合った。

その日は土曜日で、治療は週明けから始まるため、一旦家に帰って入院準備をすることになった。
コロナ禍で面会が制限されており、入院後はクリーンルームに入るため、私たちは一切会うことができない状態となる。

そして、もう2度と生きて会えない可能性も高い。
これが最後の一緒に過ごす時間かもしれないと思うと、どうしようもなく涙が溢れてくる。

私たちが一緒にいられる時間は、あと1日。
限られた時間の中で…さぁ、どうしようか。

あなたなら、この最後の一日をどう過ごしますか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?