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★予選大会・2020年ほぼ上半期のベストアルバム、ベストEP(その1)

今年も気がつけば5月、というよりも、5月もそろそろ終わろうとしていますね・・毎月のように傑作ばかり出てくる2020年、個人的にはお財布がどうかなってしまいそうですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

今月もいい音源ばかり出てくるなあ・・」が無限に更新されていく中で、このままぼんやりと過ごしていては本当に「今年って何が出ていたっけ?」とすっとぼけてしまいそうなので、ざっくりと1〜5月リリースのアルバム、EPの中から個人的に良いなと思ったものを発表します。

順番はランキングではありません。それと、記事の文字数が長くなってしまうので見やすさを考慮して記事をいくつかに分割することにしました。

なお、今回のセレクトに関しては、一応過去に記事で書いたものは敢えて外していますが、それらを全て含めたプレイリストも作成しましたので、よろしければ〜

★2020年上半期のゆるいまとめ・その1

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1.Desire Marea/ Desire

これはなんというか・・傑作なのではないでしょうか。

南アフリカで生まれたジャンル「Kwaito」とは、アフリカの音楽をサンプリングし、重めのベース、ハウスよりも遅いテンポを採用したヒップホップっぽいハウスの派生ジャンルで、Kwaitoを深化させた「Gqom」は重めのベースはそのままに、より反復性を高めたグライムっぽい音楽、という前提知識がまず必要なのですが、

その南アフリカの前衛的ユニットたるFAKAの片割れDesire Mareaのソロ作品は、KwaitoやGqomの持つ独特のローカルさから一歩離れ、パーカッションの感じにアフロ感があるものの、ところどころにクロスオーヴァー・ジャズ、アンビエントなど一見して音楽的なカテゴリを断定するのは難しいというか、全体的にエクスペリメンタル色の強いモダンなアプローチになっています。

2.Yung Lean/ Starz

1996年生まれとまだお若いながら、ヒップホップの派生ジャンル「クラウド・ラップ(Cloud Rap)」の旗手として活躍する、スウェーデン出身のラッパーことYung Leanが、YEAR0001のレーベルメイトでありSad BoysのメンバーであるYung Shermanをプロデューサーに迎えてのリリース。

クラウド・ラップは独特の霞んだような、くぐもったような音と、レイドバックしたローファイな感じのプロダクションが特徴で、遅めのBPM、グリッチ・ノイズなどを交えたこの独特な歪みを持ったチルウェーヴをトラックに使っているようなイメージでしょうか。とても素晴らしいです。

3.Gigi Masin/ Calypso

イタリアはヴェネチア出身のアーティスト、Gigi Masinの新作。

アルバムタイトルの「カリプソ」はカリブの音楽のことではなく、ギリシア神話のカリュプソー、また実在するカヴドス島がモチーフになっているとのこと。ゆったりとしたメロディの揺らぎが大きな海の水面の揺れを彷彿とさせる心地よいアンビエント。これはもう傑作としか・・。(語彙力ゼロ)

4.The Wants/ Container

NYはブルックリン出身のトリオのデビュー・アルバム。ブルックリンといえばアニマル・コレクティヴやMGMT辺りのネオ・サイケフォロワーのイメージが強いですが、こちらはジョイ・ディヴィジョン辺りのポスト・パンクっぽさのある音。

ややトリッキーですがエクスペリメンタルという程でもなく、歪みの感じに何となくインダストリアル感もあったりして、個人的に今後が楽しみなバンドです。

5.Real Estate/ The Main Thing

これはなんというか、特に言うことがないというか・・。その、とっても、良いです・・。毎回思うんですけど、Real EstateとDucktailはどうしていつもこんなに素晴らしいギターストリングスとサウンドレイヤーの名曲ばかり出してくるのでしょうか・・。

6.Lyra Pramuk/ Fountain

ベルリン拠点のアーティストのデビュー・アルバム。人間の声のみで構成されたサウンドスケープと聞くとビョークの『メダラ』をすぐに思い出しましたが、ボトムでヒューマンビートボックスを鳴らしポップ・ソング的な明快さでまとめあげたビョークに対し、こちらは空間に溶け込むようなアンビエント、ドローン。

複数人による多重録音のように聴こえるものの音声は全て彼女の声で構成されているとのこと・・一見して何がどうなっているのかよくわからない感じがするのですが、ピッチフォークのレビューを見る限り、自分の声を使ってもっと実験的な音楽を作れないかということに興味がありこのような音になっているようです。面白いですね〜!

7.The Dream Syndicate/ The Universe Inside

ペイズリー・アンダーグラウンドの80年代に結成され一度は解散したものの2012年に再結成したUS拠点のバンド、Dream Syndicateの新譜。ネオ・サイケと合わせてドリームポップやシューゲイザー辺りの80〜90年代フォロワーの多い現代の音楽シーンにおいて、その源流たるDream Syndicateが今、こんな風に鳴っているというのは面白いなあと思います。

8.Kilamanzego/ These Roots Are on Fire

フィラデルフィア拠点のプロデューサー。インタヴューを見る限りでは幼少期から様々な音楽に触れてきているようで、楽曲の参照点は多そう?フューチャーベースにトラップが混ざったような音楽性ですが、バックグラウンドが面白い方のようなので、今後の展開が楽しみです。

9.M.RUX/ Vermonische Melodien

ドイツ・ベルリン拠点のアーティストで、ブラジルのパーティー、Voodoohopの中心人物の一人。今作はビンテージのアナログ機材を駆使して作られている・・「In The Hold」EPの頃はもう少しわかりやすいワールド感というか、民族音楽っぽさがあった気がするのですが、今作は何となくですがサイケ、ダウンテンポ、アンビエント、ドローンなどの片鱗を感じるというか、より楽曲のアプローチが深化していて、一見してどこで鳴っているのかよくわからない不思議な魅力があります。

あとがき)

前回の投稿からかなり時間が空いてしまいましたが、このところ自分自身の作品の制作に注力していて、文章を書く体力を残すことができずにいたためでして・・。フォローいただいた方、いいねを押していただいた方、ありがとうございました。

Twitterは比較的頻繁に更新していますので、よろしければそちらもチェックいただければと〜。

補足)

今回の上半期ベスト(予選編)を選ぶにあたって、過去に記事化している作品については敢えて一度除外していたりします。除外されているものについては下記参照ください。

①1月リリースのEP、アルバムの個人的ベスト18

②シングル含む月別リリースの中で個人的によかったもの

◎おまけ:音楽のジャンル解説(というか個人的なメモ)

マイクロジャンルありすぎ問題ってあると思うんですけど、個人的な見解としては、大雑把な括りでは取りこぼしてしまう文脈があると思うので、そういうものを掬い上げるためにも、マイクロジャンルは積極的に採用していきたいな、と考えています。

でもやっぱりよくわからないし、ブログ発祥のかなりローカルなものもあったりするようなので、個人的メモも含めて幾つかリストアップしてみました。

①Kwaito:1990sにヨハネスブルグ、南アフリカで起こったジャンル。一見するとエクスペリメンタル寄りのヒップホップぽいのですが、どちらかというと源流はハウスとのこと。Kwaitoとは南アフリカのスラングでHotもしくはAngerの意味のようです。

②Gqom:南アフリカで2010年代初頭に出てきた新しいジャンル。南アフリカのベースミュージック的ポジションで、ミニマルで反復するリズムパターンが何ともドープ。Kwaitoの派生ジャンルのようなもので、新世代のハウス的ポジション。懐かしのグライムっぽさがあります。

③Cloud Rap:ヒップホップのマイクロジャンルで、ものすごく簡単にいうと、チルウェーヴにラップが乗っかっているような音楽のイメージでしょうか?

このLil Bのバックで鳴っているClams Casinoの「I'm God」辺りがその典型とも言えますが、遅めのBPM、やや霞んだようなフォグなサウンドスケープに、グリッチノイズなどたまに歪みがあったり、ベッドルーム・ミュージックっぽいレイドバックしたトラックが特徴。

まあ結局のところヒップホップでもハウスでも何でも良いかもしれないんですが、当てはめてみると何だかしっくりくる気もするので、やはりある程度細分化されたマイクロジャンルという考え方も悪くないのではないかな、と思ったり。


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