「自分以外全員他人」を読みました。
西村亨さんの「自分以外全員他人」を読みました。
表紙から漂うただならぬ雰囲気そのままの、なんともいえない読後感のある変わった小説でした。
第39回太宰治賞を受賞した作品です。
主人公は最近よく聞くHSPなのでしょうか?傷つきやすく、いつも死にたいと思っているマッサージ店に勤める男性です。
どこにでもいそうな主人公の日常や、思っていることを丁寧に描いています。
それだけなのに、なぜか読むのを止められない。一気読みしてしまいました。
なぜでしょう。
主人公は自己愛が強く、いつも「〇〇すべき」「〇〇しなければならない」という感情にとらわれています。
自分に厳しいから他人にも厳しい。
他人のマナー違反を見ると許せない性格です。
だからいつもイライラしていて生きにくい。
そんな主人公ですが、職場の同僚が「自転車に乗るようになってから鬱がよくなった」というのを聞き、主人公も自転車を買います。
そして通勤に使うだけでなく、休日に公園などにサイクリングへ出かけ、外でご飯を食べたりして、つかの間の幸福感を味わいます。
それでなんとかかんとか生きている感じ。
それでも通勤途中でマナーの悪い人々や、お店で横柄な態度をとるお客などに出会うと、その態度が許せなくて、鬱っぽくなってしまいます。
こういうことって誰しも少しはあると思うのです。
私も思い当たる節はあります。
ですが、普通の人はその瞬間怒っても、そのうち忘れてしまいます。
主人公はその怒りを溜めて積もらせて、毒を体に滞留しておくタイプ。
それがエスカレートすると、死にたい、とか、他人に暴力をふるってしまったりするわけです。
主人公も「いつか他人を許せずに傷つけてしまうのではないか、ならばいっそ、自分が死んだ方がマシ」と思ってしまうのです。
そういう人は少なからずいます。
でも、この小説がすごいのは、そんな一見、人から好感を持たれないような特別感のない人を描いているだけなのに、読者をぐいぐい引き込んでしまうところ。
理由はわかりません。
文章の表現によるものなのかなぜなのか、とにかく面白くて主人公の行動・考えが興味深くて読み進めてしまうのです。
本当に不思議な小説でした!
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