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ハゲの短編小説 「人事発表」

僕はとあるIT関連企業の社員28歳。情報リサーチ課に所属している。
不甲斐ないが、かっこよくもないし、頭も少しハゲている。
それに比べて、僕より5歳上の情報マネジメント課の高尾課長は、
高学歴、高身長、たぶん高収入。しかも、優しい。髪もフサフサ。
情報マネジメント課は、エリート集団の固まりだ。僕なんてとてもとても。
僕の部署の情報リサーチ課長はと言えば、安井課長。高尾課長に負けじ、
高学歴、高身長、多分高収入。とても優しい。でも、、、頭がハゲている。
僕は上に立つ人はどこか抜けてないといけないと思っている。ぴったりだ。
今日は、人事の発表の日である。情報部の部長の定年に合わせて、部長昇格の人事発表がある。二人の課長が、どちらが部長になっても、異論はない。
でも、安井課長になって欲しい。それは言わなくても分かって欲しい。
土間部長が来た。ついに発表だ。
「次期、情報部の部長は・・・」





「情報マネジメント課の高尾課長」





あっ、やっぱり。やっぱりそうか。
高尾課長は、皆の前に立ち、挨拶をし、深くお辞儀した。
皆は、盛大な拍手でそれに答えた。
僕も、少し残念だったけど、拍手で答えた。
ちらっと、安井課長を見てみると、とても、嬉しそうな顔をしていた。
僕は、少しほっとした。でも、内心は、悔しいはず。
だって、同期で、成績も忖度ない。ただ、頭がハゲているだけで外された。
僕はそうみている。




「続いて」
あれ、また土間部長が話始めた。

「もう一つ、人事発表をしなければならない」
「皆さんは、寂しく思うかもしれませんが・・・」



えっ、何?



「安井課長が・・・」




「情報リサーチ課の安井課長がこの度・・・」



辞める???



「ニューヨーク情報本部の本部長に大抜擢されました」




ええええー。
凄すぎる。




安井課長は、前にでて、皆の前で挨拶をした。
その顔は、とても自信に満ちていた。
頭のハゲなんて、どうって事ないって顔が物語っていた。

安井課長と一緒に働けた事が、僕は、とても誇らしかった。
この発表は、感動しかない。

安井課長は、皆に、勇気と希望を持って頑張って欲しいといい終わり、
深々と礼をした。
その時、僕は確かに見た。
安井課長の頭に、「感謝」の文字を。
それは、光がそうさせたのか、残った髪がそうさせたのか、
定かではない、でも確かに見た。
僕は、感動を覚え、お礼を持って返さなければと、深々とお辞儀をした。


『安井課長、頑張って下さい。僕も頑張ります。』
泣きそうになった。


でも、はっと我に帰ると皆、拍手を持って、お礼に変えている。
しまった。
深々とお辞儀をしているのは、安井課長と、ハゲの僕。
もう後戻りは出来ない。

でも僕は、後悔しない。
そんな、誇らしい、素晴らしい一日であった。









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