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ワクチン゠アパルトヘイトの嘘を暴く

原文:https://pluralistic.net/2021/05/21/wait-your-turn/#vaccine-apartheid(2021年5月21日)
著者:コリイ゠ドクトロウ

バイデン政権はWTOが提案したワクチンの知的財産権放棄を(慎重な言い回しで)支持した。この問題の正当性を声高に支持したわけではないかもしれないが、それでも、何十年にもわたる大手製薬会社への従属状態を完全に覆したのである。製薬産業は全面戦争を仕掛けている。

貧困国による独自のワクチン製造への反対論には、人種差別的見下し(「貧しい褐色人種は原始的過ぎてハイテクのワクチンを作れない」)・議論の誤った方向付け(「特許の問題ではない」)・二枚舌(「原料が足りない」)が混ざり合っている。

ソナリ゠コルハトカルは「カウンターパンチ」に寄稿し、こうした主張を一つ一つこき下ろしている。貧困国はワクチンを作れないという主張を取り上げてみても、インドが世界のワクチン供給の中心にいることを考えれば、笑止千万だ。
https://www.counterpunch.org/2021/05/20/why-big-pharmas-arguments-against-patent-waivers-dont-add-up/

問題は、インドがワクチン製造方法を知らないということにではなく、インドで荒々しい変異ウイルスが大流行したために、インドが一時的に輸出を止め、サハラ砂漠以南のアフリカの大部分へワクチンが供給されなくなったことにある。
https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2021/05/biden-has-power-vaccinate-world/618802/

貧困国には危険な診療行為が特に多く、国民がワクチンを打つのをためらってしまう、という考えがあるが、これは全くバカげている。米国なんて、政府の取り巻きが、何百万ものワクチン接種を台無しにしながら、何百万ドルも荒稼ぎしていたじゃないか。
https://arstechnica.com/science/2021/05/emergent-got-27m-a-month-to-prep-vaccine-plant-then-ruined-15m-jj-doses/

グローバルサウス諸国は自国でワクチンを製造できる。しかし、それにはWTOの許可が必要である。モデルナが特許を強く主張しないと約束しただけではダメだ。WTOが特許権を代行し、貧困国に恐怖の雨を降り注ぐことができるからだ。

製薬会社には超有名人の擁護者がいる。ビル゠ゲイツはその最たる人物だ。彼は明らかに、個人的にも財団を通じても、原則的に「知的財産権」を擁護し、自分のイデオロギー計略を推進する鍵と見なしている。

私はゲイツのイデオロギーを「ジャコバン」誌のインタビューでルーク゠サヴェージと共に掘り下げて議論し、イデオロギー構成概念としての「知的財産権」の中核的考え--法律は消費者・競争相手・批評家を統制する権能を企業に与えるべきだ--を探求した。
https://jacobinmag.com/2021/05/cory-doctorow-interview-bill-gates-intellectual-property

知的財産権は、あらゆる右翼イデオロギーの先兵である。コーリー゠ロビンは「反動的精神」の中でこのことを明確に示した。「生まれつき支配する人・される人がおり、運命を阻止しようとすると私達全員が不幸になるという信念」である。
https://coreyrobin.com/the-reactionary-mind/

だからこそ、ゲイツはオクスフォード大学の公費によるワクチン無償化計画に自ら介入し、アストラゼネカとの独占ライセンス契約を強要した。
https://khn.org/news/rather-than-give-away-its-covid-vaccine-oxford-makes-a-deal-with-drugmaker/

アストラゼネカはグローバルサウスに原価でワクチンを売ると確約した--金持ち諸国の接種が終わったら。これはゲイツのCOVAXイニシアティヴの前提でもある。COVAXは、貧困国が慈善家・企業・富裕国からの寄付を申請できるようにしている。

ゲイツは次のように述べる。「米国と英国など一部の富裕国は、この夏にも高いワクチン接種レベルに達します。その結果、ワクチン接種は自由化され、2021年後半から2022年にかけて全世界にワクチンが供給されるでしょう。」
https://news.sky.com/story/covid-19-bill-gates-hopeful-world-completely-back-to-normal-by-end-of-2022-and-vaccine-sharing-to-ramp-up-12285840

ゲイツとCOVAX推進者が求めているのはこうだ:貧者は自助努力をしようとしてはならない。「順番を待た」ねばならない。生まれつき支配する人・される人がいる。この自然秩序を覆すのは良くない。

貪欲・レイシズム・イデオロギー、動機がどれであろうと、こんな愚行を世界は受け入れられない。125の最貧国(人口250億)に蔓延し続ければ、数百万ではないにせよ、数十万人が死ぬだろう。2021年の新型コロナウイルスによる死者数は2020年よりも多くなりそうだ。

支配される側ではなく支配する側にいるとしても、これは狂気の沙汰だ。誰かがウイルスに感染する度、ウイルスは数百万、数十億回もの複製を繰り返す。個々の複製には僅かな変異の可能性がある。

個々のウイルス変異によって、ウイルスがさらに強毒に、もっと致命的に、よりワクチン耐性を持つ可能性が僅かながらある。ワクチン接種が不充分な地球では誰も安全ではない。プールの片隅だけを「小便禁止」にすることなどできない。

COVAX支持者は金持ち世界がワクチン接種を終えたら、残りの世界にワクチン接種をできるようになると主張する。この事実こそ、世界には万人にワクチン投与をするだけの原料がないという主張が信頼できないと明らかにしている。

WTOが言う権利放棄ではなくCOVAXを受け入れる場合、条件付きになりかねない--公有インフラの私有化や、その他様々な主張への服従するよう求めてくる。WTOの権利放棄を受け入れる場合、貧困国が自国の運命の主導権を握るだろう。

ゲイツ陣営は自分の人生に責任を持つことが大好きだ--天性の支配者に限るのだが。ゲイツとハワード゠ディーンのような食屍鬼(グール)が、自分達の特権を強力に保護すれば救命ワクチンの生産に必要な「インセンティヴ」になると述べているのを聞くだけで良く分かる。
https://pluralistic.net/2021/04/08/howard-dino/#the-scream

忘れてはならない。mRNAワクチンの存在は、数百億ドルもの公的投資のおかげであり、独占的製薬企業が現れたのは、マリアナ゠マッツカートが言う「起業家としての国家」が全てのリスクを肩代わりした後だった。
https://pluralistic.net/2021/05/15/how-to-rob-a-bank/#roll-the-dice

この点を見事に指摘したのが、米国下院議員ケイティ゠ポーターである。彼女は、米国議会の便乗値上げに関する公聴会でトレードマークのホワイトボードを使い、製薬会社アッヴィのCEOを詰問した。

(訳註:日本語版はこちら

ポーターは、研究開発・マーケティング・報酬・自社株買いなどの金融工学に会社がどれだけの資金を使ったのか訊いた。彼女は既に答えを知っており、色画用紙を様々な大きさの円形に切り、相対的支出を示す用意をしていた。

ポーターがアッヴィCEOを詰問している短い動画クリップは、居心地悪そうな顔のCEOからホワイトボードを勝ち誇ったように見せるポーターまで写し出す。ホワイトボードには小さな円が幾つかあるが、「自社株買いと配当金」と書かれた巨大な青い円のためにさらに小さく見える。

全ては勝ち誇ったクライマックスへと組み立てられている。ポーターは「自社株買いと配当金」を示す巨大な青い円を正義のホワイトボードに貼り付ける。円は非常に大きく、他の円を全て圧倒する。

ワクチンメーカーは、何十億もの公的資金を吸収し、毎年のブースター接種で1回175ドルを請求するというバラ色の未来を株主に期待してほしいと話す。こうした約束を基にメーカーのCEOは何千万ドルものボーナスを手にした。

つまり、本当の問題はこの点なのだ。生まれつきの支配者に万人が必要な医薬品の開発計画を策定させるインセンティヴとしての「知的財産権」など関係ない。こうした医薬品を作るのは、公的資金・競争・実際の仕事をする科学者であって、医薬品を私物化する経営者ではない。

貧困国が自国の疫学的運命をコントロールする代償は、独占的コントロールの剥奪である。

逆に、ワクチン製造をグローバルサウスの手に委ねるとすれば、その利点は・・・

  • 何百万人もの生命を救える。

  • ワクチン耐性があり、もっと致死性の高い変異株を予防する。

  • 多国籍企業とエリート慈善家に命乞いをせず、民衆が自分達の運命を自分達でコントロールできるようになる。

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