米国駐在中の家族旅行で起きた、子供のVISAで大トラブル 〜春休みのカナダ旅行で学んだ教訓〜
子供がカナダから米国に入国できない!
米国に赴任してから初めての米国外への家族で週末旅行を計画していた。パスポートとクレジットカードとカナダの観光ビザ(eTA)に、カメラがあれば旅行には何の問題もないはずだった。
週末のカナダ旅行を満喫し、いざ帰国しようとしたその時、思わぬトラブルが発生した。米国への帰国便のチェックインの際、航空会社のアプリではビザ情報が確認できず、チケットの発券ができないのだ。そこで私はハタと気づいた。子供たちのビザは、新しいパスポートではなく、古いパスポートに貼られているのではないかと。
米国滞在中に子供のパスポートを更新していた
ことの顛末は昨年末にさかのぼる。子供たちの5年パスポートの有効期限が迫っていたため、昨年末に在米日本領事館で新たなパスポートを発行してもらっていた。しかし米国滞在ビザの発給を受けたのは2年前。5年間有効な米国滞在ビザは、残り2年強の有効期限しかないパスポートに貼られていたのだ。在米日本領事館にて新たなパスポートを取得した時、『旧パスポートのビザがまだ有効ですから両方保管しておくように』と言われた覚えがかすかに。。。
そんなことをすっかり忘れて、子供たちのパスポートは新パスポートだけを携行して米国から出国してしまっていた。
焦った私は、インターネットで解決策を探すも、同様の経験談は見つからない。GoogleでもGPTでも、課金したてのClaudeでさえも。こんなとこにいるはずもないのに、必死に検索を続けた。
ただ、「現地の米国領事館や大使館からの指示に従い、必要に応じて新たなビザの申請や、再入国を許可するための書類の準備が必要になるかもしれません」といった、抽象的なアドバイスしか得られなかった。
幸いにも、以前にビザ面のコピーをクラウドに保存していたことを思い出した私は、急いでホテルでプリントアウトしてもらい、文字通り空港へ飛んで行った。
旧パスポートがないと航空券が発券できない!
デルタ航空のチェックインカウンターでは、スタッフがやはり印刷したコピーのビザでの対応に頭を悩ませる。妻が機転を利かせてスーパーバイザー的な上役のスタッフを見つけて相談するも、イースター休暇で多忙を極める中、なかなか進展しない。この時点ですでに3人のデルタ航空の職員が「困った、旧パスポートのビザのページがスキャンできないと発券できない」とあきらめモードだ。
そんな中、ふと現れた一人の男性スタッフが、「手入力でビザ情報を登録すれば、チケットの発券が可能かもしれない」と提案してくれた。そして、何とかチケットを手に入れた私たち家族一同だったが、安堵するのはまだ早かった。
旧パスポートがないと入国審査通れない!
セキュリティチェックを終えて、入国審査の列に並ぶ。入国審査で、ビザの原本がないことがバレれば、子供たちは入国できないかもしれないと思うと不安だった。私は、怖そうな男性審査官のブースに近づくにつれ、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。震える手で、パスポートとチケットを一緒に差し出そうとすると、審査官が命令した。
「パスポートをチケットをまとめて持つな。パスポートのみを渡せ」
その口調は、まるで犯罪者を取り調べるかのように冷酷だった。私は慌ててチケットをポケットにしまい、再びパスポートを差し出した。
「パスポートのVISAページを開いて渡せ」
今度の口調は、さらに威圧的だった。完全に挙動不審と化した私は、あわあわしながらパスポートのビザページを開き、再び審査官に手渡した。
審査官は鋭い目つきで私を見据えながら、大人のパスポートをスキャンし、顔写真を撮影した。数秒後、審査官が「通過」と告げると、私は小さな安堵のため息をついた。
しかし、安心したのもつかの間、審査官が子供たちのパスポートを手に取った瞬間、私の心は再び焦燥に包まれた。子供たちのパスポートにはビザが貼られていないのだから。
審査官が子供たちのパスポートを開いた瞬間、私は息を呑んだ。審査官の表情が一変し、眉間にしわを寄せた。私は、子供たちが入国できない可能性が高いことを直感した。
「ビザがないじゃないか」
審査官の低く怒りを含んだ声が、ブース内に響き渡った。私は必死で状況を説明し、ビザのコピーを見せようとしたが、審査官は耳を貸そうとしない。
「話にならない。原本以外は認められない。子供たち2人は入国させられない」
その言葉は、私の頭上に冷酷な宣告のように降り注いだ。希望が打ち砕かれ、絶望感に圧倒される中、私は自分の不注意を呪った。家族旅行が台無しになった。
審査官との沈黙が続く中、私は必死で打開策を探ろうとしたが、何も思いつかない。子供たちの不安げな表情が脳裏をよぎり、自責の念にさいなまれた。
「どうするつもりだ?」
審査官の冷たい声が、再び私の意識を現実に引き戻した。覚悟を決め、震える声で答えた。
「米国内の自宅に私が戻り、明日カナダに戻ってきます。子供とワイフはここにおいていきます」
他に選択肢はないのだ。
私は、審査官の返答を待ちながら、心の中で奇跡を祈った。このままでは、家族は離ればなれになってしまう。何かできることはないのだろうか。私の心は、絶望と希望の間で揺れ動いていた。
「別室へ連れていくからついてきなさい」
その瞬間、合点した。この審査官はマトリックスのエージェント・スミスにそっくりだ。終わった。。。
そして、別室へ連行された
意気消沈した家族一同は、エージェント・スミスに別室へ連れていかれ、別の審査官に引き渡された。
別室であらためて必死になって事情を説明した結果、私たちは奇跡的な結末を迎えることができた。
「今回限りの特別措置として、I-193を発給する」
という審査官の言葉に、私は放心状態になりながらも、自らの不注意を深く反省した。
海外旅行ではパスポートとクレジットカードとカメラさえあればなんとかなると思っていたが、米国駐在の場合、ビザが非常に重要なのだ。
子供のパスポート更新時には米国滞在ビザは新しいパスポートには移されない。ゆえに新旧パスポート二冊の携行が必須である。私は、二度とこのようなアクシデントに遭わないよう、家族のパスポートとビザの管理に細心の注意を払うことを心に誓ったのだった。