西の月
2009年、ボクにはたくさんの夢があった。
毎晩夜空を眺めては、幾千もの星屑に感謝をしたものだった。
毎日生かされている。
毎日生かされている。ボクは何度もそう繰り返し微笑んだ。
その夜空と眠るために、星に近い高台に寝床を作ろうと思った。
ジブンだけのこの場所は、街中の火も水も風も感じる心の砦だった。
ボクにしか見えない夢。
ボクしか感じない想い。
それらが全て詰まった高台の寝床。
_____
_____
2012年、
目が覚めた。
星に一番近い寝床でボクは、澄んだ夜風を息苦しく感じていた。
岩の上の砦がゆっくりと崩れ始めたのだ。
語り合った星たちは見えなくなり、追いかけていた夢も姿を消した。
その時気づいた。
西の月。
それは、ボクには月にしか見えない、西に沈んでゆく陽の光だった。
何もかもを悟ったボクは、
寝床から起き上がり、残雪に覆われた手稲山に隠れゆく陽を、静かに見送った。
_____
2005年から実際に起こった経験を書き起こしました。
土地購入から設計/着手まで、たくさんのハードルを越えてきたわたしにとって、与えられるものと与えられてはいけないものを理解するために、高い授業料を支払ったと思います。
その代価として学んだ事は、悲しみの中には、ジブンにとって本当の喜びが存在しているということです。相矛盾する2つの感情はいつも対(つい)になっていて、どちらかに彷徨う時はどちらかが引き寄せバランスを保つという事を知りました。
真似事でも良いので最後まで貫く姿勢は、今後も大切にしたいと思います。
私が提供できる全てを道具として「人・環境」をサポートしています。 Twitter: https://twitter.com/bakuosawa