感情の使い方【アンガーマネジメント】
アンガーマネジメントという言葉がある。
これは、社会の中で怒りを表に出してはいけないという教えだ。
確かに、怒りが引き起こす衝動的な行動は周囲に不快感を与え、時には取り返しのつかない事態を招くこともある。
例えば、職場でのささいなトラブルで感情が爆発し同僚や上司との関係が壊れてしまうことは誰にでも起こり得ることだ。
こうした事態を避けるために、感情をコントロールする技術としてアンガーマネジメントが注目されている。
だが、怒りそのものが悪いわけではない。
怒りや嫉妬などのマイナスの感情は、実は非常に大切なものであり、それ自体が強力なエネルギーを持っている。
例えば、歴史を振り返ると怒りや不満が大きな変革の引き金になった事例は数多く存在する。
フランス革命やアメリカの独立戦争も、抑圧された人々の怒りが爆発した結果だと言えるだろう。
負の感情は時に現状維持バイアスに囚われた人間を、変革し新しい自分を築くほどの強いエネルギーを持っているのだ。
これらの感情がなければ、大きな変革や進化は生まれない。
たとえば、企業のリーダーシップにおいても、現状に満足せず、常に改善を追求する姿勢が求められる。
この姿勢の背後には、現状に対する不満や怒りが潜んでいることが多い。ここでは、怒りなどのマイナスの感情をどう使うかについて語ってみようと思う。
まず、わかりやすくするために感情を「マイナスの感情」と「プラスの感情」に便宜的に分けて考えてみる。
これは、日常生活で私たちが感情をどのように扱っているかを理解するのに役立つ視点だ。
マイナスの感情――例えば怒りや嫉妬――は、
激しく燃え上がり、すぐに消えてしまう特性を持つ。 だが、その短い時間に発せられるエネルギーは強烈だ。
例えば、スポーツ選手が試合中に理不尽な判定に対して激しい怒りを感じ、そのエネルギーをパフォーマンスに変えて逆転勝利を収める、というようなシーンを想像してみてほしい。
まるで怒りの爆発的な力でより良いパフォーマンスを発揮するいい例だ。
一方で、プラスの感情――例えば愛や幸福――は、静かに燃え続ける。
持続的で安定したエネルギーを供給し、人間関係を維持し、社会を安定させる力を持っている。
これを考えると、家族や友人との長期的な関係を支えるのは、この静かなエネルギーだと言えるだろう。
家族のために毎日仕事に励む父親や、長い間友人関係を維持する人々は、まさにこのプラスの感情によって支えられている。
私はこれらの感情を「汚いガソリン」と「綺麗なガソリン」に例える。
汚いガソリンは激しく燃え、短期間に強力なエネルギーを放つ。
しかし、それはすぐに消え去る。
先に挙げたスポーツ選手の例のように、短期的な爆発力が求められる場面では非常に有効であると言えるだろう。
綺麗なガソリンは、静かに、しかし長く燃え続ける。
安定したエネルギーを供給し続けることで、持続可能な生活や関係を築くのに役立つ。
これは、長期間にわたるプロジェクトの達成や、人間関係の維持に欠かせない要素である。
感情の持つエネルギーについて理解を深めるために、私はこのように分けて考えている。
汚いガソリンは、瞬間的な変革のために必要なエネルギーであり、
綺麗なガソリンは、その変革がもたらした新しい秩序を維持するために必要なエネルギーだと言える。
感情は人間が持つこれらの原初のエネルギーだ。
上手く活用することができれば、己の人生を変革する力になるだろう。
現代社会では、理論や理屈を重んじることが求められている。
だが、感情の使い方を学ぶことも同じくらい重要だ。
感情を無視するのではなく、それを理解し上手に扱うことが真の成功への鍵となるのではないか。
ビジネスの現場でも、家庭生活でも、感情という人間に備わった原初の力を正しく扱うことで人生をより充実したものにできるだろう。
ひとつの考え方として頭の片隅にでも残ってくれると嬉しい。
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