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きょうの短編

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なんでもねえ短編でございます。
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2019年4月の記事一覧

かすみの花というものは

 かすみの花というものは空気中に咲くものだ。ぎゅっと身をつづめて夜の寒さに耐え、朝、日が照ってあたたかくなるころ一斉に、ほどけるように咲き出すもの。昼間にはすでにしぼみかけていて、夕暮れにはねむたげな貌で長い夜をしのぐ準備をしている。かすみの花というものは元来非常にはかないものだ。かすみの花をとどめおくことは、神さまにだって絶対できない。かすみの花はあなたの年老いた祖父のもとへ、あなたの友人のもと

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迷子の男

 男は迷っていた。目の前にはふたつの道がある。そのどちらに進むべきかをどうにも決めかねていた。しかし男は見ていた。男の兄が、さきほど右の道を通って進んでいったのだ。だから実際、男には悩む理由がなかった。男は兄を尊敬していたから、男は兄の通った道をそのまま進めばよかった。男は右の道を選んで進んだ。男はしばらく歩いてから、はて、と首をかしげた。右の道をひた進む足取りにはなんの迷いもないのに、男は卒然、

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