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ナリタシノ
2019年3月28日 19:31
西のかなたから疵のある羽根の鳥が飛んできた。鳥はうまく飛べないので、ときおり右に左に蛇行しながら、苦し気に息を吐いていた。鳥は飛ぶように駆けたかったが、なにしろ羽根が疵ついていたので、人間がかたわの脚を庇うようなやりかたで羽ばたくしかなかった。鳥は振り返らずに飛んでいた。鳥はまもなく闇色の太陽がおのれの羽根を焼くことを知っていたから、ひどく急いていた。闇色の太陽は重く腫れぼったい手を伸ばし、疵羽
2019年3月28日 20:07
「この島はじき沈むだろう」 その島の岬に立って日毎にぼやいていた青年は、島が沈むちょうどその日の朝早くにまたいつものように岬に出かけ、沈みゆく島の舳先から遠くの空をじっと眺めていたので青年はその島に住んでいる者たちの誰よりも早く沈んでいったがその島の人間は誰もそのことに気が、つかない。