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読書メモ:#2 アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

キャッシュレス先進国である中国の事例を主に、ユーザーの行動データを元に新たなサービスやビジネスのあり方をわかりやすく紹介してくれている本。オンラインとオフラインをどのようにこれから繋げていくのか、というヒントがたくさん書いてあり、日本企業が今後どのようにサービスやプロダクトをデザインするべきなのかイメージできる本。

気になったこと ※メモ

事例

・DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むにつれて、顧客の行動が「点」ではなく「線」で追うことができるようになっている。
・特に中国やエストニアではキャッシュレスや信用スコアなどを国を上げて推進しており、世界のデジタル先進国として注目されている。


アフターデジタルとは

・アフターデジタル = モバイルやIOT、センサーが偏在し、現実世界でもオフラインがなくなるような状況になると、「リアル世界がデジタル世界に包括される」という図式に再編された状態。
・ビフォアデジタル = リアルはリアル、たまにデジタル。一部重なり合う部分に関してはたまに双方が連携される。
・[ビフォアデジタル]リアルでいつも会えるお客様が、たまにデジタルにも遊びにきてくれる。※日本企業が陥りやすい考え方
・[アフターデジタル]デジタルで絶えず接点があり、たまにデジタルを活用したリアルにも来てくれる。
・アフターデジタル時代における成功企業が持っている概念OMO(online-Merge-Offline)。オフラインとオンラインが融合し、一体のものとして捉えた上で、これをオンラインのおける戦い方や競争原理として捉える戦い方。オンラインとオフラインはボーダレスになり、どこでもオンライン化した状態になるため、デジタル起点での考え方が必要。



顧客視点(カスタマーセントリック)

・顧客は「オンライン」「オフライン」を意識していない。その時最も便利な方法で買いたいだけなので、様々な選択肢を提供する事が重要。
・O2Oとは、「チャネルをつなげて送客する」という企業視点の考え方。一方、OMOは「顧客から見たら融合している方が便利」という顧客視点の考え方。
・顧客属性の情報だけ持っていても価値はない。顧客の行動の持つ意味合いを読み取り、最適なタイミングで最適な情報を提供ができて初めて情報の意味がある。そのためには、属性データだけではなく、行動データを含め購買週間を全面的に収集できるかどうかが今後のビジネスの鍵となる。


日本企業の特徴

・オフラインにあるものを無理やりオンライン化しようとする傾向が高い。
 例)オフラインのチラシを無理やりオンラインにする、オフライン店舗の接客を無理やりオンラインで再現しようとするなど。
・メーカーとしての自負や品質の高さから、オフラインアセットを重視するあまり、デジタルを「付加価値」として活用するケースが多い。
・むしろデジタルは、これからのビジネスにおいての基盤であり、「起点」にするべき。


「モノからコト」ではなく、「モノから寄り添い」

・キャッシュレスが進むことで、従業員の負荷(現金でのやりとり)が減り、一方で消費者もやりとりの煩わしさやお金を支払うという感覚が減ることで、支払い以外のコミュニケーションが増える。
・支払いという嫌な体験がなくなることで、購買に対して(場所に対しても)意識が変化し、ものを買いに行くというよりもコミュニケーションを取りに行くという感覚に変化している。
・リアル店舗での顧客との接点の価値が変化し、より人間的な温かいサービスを受けることができる様になる。(そういったショップが生き残る可能性が高い)
・アフターデジタルによって顧客の体験を一回のみの単一体験で終わらせず、ずっと継続し、高速で改善する事ができる時代。
・「顧客に接する部署」だけでなく、1回限りの接点を超えて連携して顧客体験を生み出していく事が重要。「モノからコト」ではなく、「モノから寄り添い」といった意識にするべき


日本式ビジネスの変革

1) 高頻度接点による行動データとエクスペリエンス品質のループを回す
以下3点を駆使して、良いエクスペリエンスが提供し、行動データがたまる仕組みをつくる。
・ハイタッチ:一人ひとりの顧客に対応できるときは、特定の人に対応できるからこその感動や、信頼を得られるような徹底した対応を提供する。
・ロータッチ:WSやイベントなどの「場」では、リアルだからこその心地よさや得難い密度の情報を提供する
・テックタッチ:オンラインサービスやサロンでは、プロセスが短くて便利で、更に高頻度で使うと得をするというインセンティブを提供する。

2) ターゲットだけでなく、最適なタイミングで最適なコンテンツを最適なコミュニケーション携帯で提供する 
・行動データによって、ターゲットにとどまらずユーザーが望むタイミングを知ったり予測したりする事が可能になり、どのようなコンテンツ(商品)が最適なのかを過去の状況から把握でき、その人の正確や特性に適したコミュニケーション方法で提供できるようになる。
・行動データに基づいた「顧客理解」と「即時性」が重要
・単一接点型(製品利用時のみの接点)から、常時寄り添い型(体験全体での接点)が重要になる。


産業構造の変化

・メーカー主導でのものずくりがトップであり、それを流通や小売店を通していかに売るかという構造から、「データのやりとり」が新たなインフラとなり、最もお金を生み出しやすい「購買データ」をより多く持ち、それを顧客IDとつなげられているプラットフォーマーがトップに君臨する図式に変化する。 決済を握ったプラットフォーマー、(業界ごとに)体験型で価値提供をしているサービサー、メーカの順でヒエラルキーが成り立つ
※GAFAがトップになりそうだが、決済を握っていない



組織構造、ビジョンの変化

1) 組織構造
・商品や販売チャネルごとの組織構造から、顧客体験(=ジャーニー)に沿った組織構造にするべき。特定の段階、状況に置かれた顧客を相手にするといった観点で整理するべき。
2) ビジョン
・いい体験を提供し続け、ずっと寄り添っていかなければいけない。そのため、「最終的に顧客にどのような体験を提供し、そのような状態になっているのか」というゴールを共有する必要がある。それを会社全体で共有できる言葉にする。
3) 事業戦略
・状況思考での戦略規定。ジョブ理論。

・「人・属性」ターゲティングから、状況に基づいたターゲティングに。
・特定の状況は違う属性であっても共通して発生し、逆に一人の人間は複数の状況を抱えている。人や属性でターゲティングしてしまうと、これらを正しく捉えられなくなる。


バリューチェーンからバリュージャーニーへ

・商品を企画して生産してチャネル型で売るといった商品中心型のビジネスモデルから、どうやってずっと顧客に寄り添うか。製品もその接点の一つとして捉えるモデルへ。
・追うべきKPIも前年度の売上からNPSへ。



バリュージャニーをどうつくるか

・「UXグロースハック」「UXイノベーション」の2つの活動が重要。
・UXグロースハック:現状サービスの接点から行動データを取得し、とにかく行動データを使ってエクスペリエンスを良いものにし、エクスペリエンスが良いから行動データが集まるといったループを高速で作る。
・UXイノベーション:デジタルを活用した新しい接点を作ってジャーニーを伸ばして行く。接点から行動データを取り、分析してさらにジャーニーを伸ばしていく。 例)アマゾン
・UXグロースハックで得たデータを元にUXイノベーションを考える
・今日本企業が進めている活動は最適化であり、「より自分にあったものが提供されている」だけで、そもそものサービスの価値や体験価値は改善されていないため、ビジネスが変化しない。
・「デジタルを活用した接点を作る」ことは結果であって、UXイノベーションの本質は、人々がずっとその新たな接点を使ってくれるのかどうかにある。つまり「顧客の置かれた状況の発見と、それをより幸せにするようなコア体験をいかに作れるか」にある。
・「体験の連続性」:コア体験を元にいかにジャーニーを伸ばす事ができるか
・「行動観察」:ユーザーの行動を観察して発見点を得る。同時に人の発言を信用してはならない(本当のニーズは言語化されていない)。街に出て観察する事が重要。
・「デザインシンキング」:プロトタイプの作成。リアルなモノがあった方が、より具体的なFBを得る事ができる。


最後にひとこと

今までの仕事上、ジャニーを描く事が多くあったが、点だけで捉えていた。
特に以下について自分自身が生業としている部分でもあるので、このまままではいけないとより自分ごと化して危機感を感じる事ができた。

今日本企業が進めている活動は最適化であり、「より自分にあったものが提供されている」だけで、そもそものサービスの価値や体験価値は改善されていないため、ビジネスが変化しない。





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