ハンカチ

 ハンカチを持っている人が少ないなと、トイレに行くたび思う。学生時代は、「手はワイルドに拭くもんだ」とハンカチを持っていないことを肯定しようとしていた。そんな私がハンカチを持つようになったのは、「マイ・インターン」という映画を見てからだ。

ロバート・デ・ニーロが演じたベンという男が、ハンカチを持っていない若者に対して、

「ハンカチは貸すためにある。女性が泣いたときのために、紳士のたしなみだよ」と言っており、惚れた。

それから、女性に貸せるようにとハンカチを持っている。紳士の仲間入りである。

ある日、横浜で飲んだ帰り、膀胱に話しかけられたので、駅構内のトイレに駆け込んだ。周りはスーツを着たサラリーマン(酔っている)と同じ年くらいの若造。

偶然にも5人が同じタイミングで小便が終わり、手洗い場が混むなと思ったが、手を洗ったのは私と1人のサラリーマンだけであった。

嘘だろ!手がお◯んちん!

その時の統計で、この国の男性の半分は局部を触った手で色んなところにベタベタと触るということになった。これは恐怖しかない。(紳士、女性の皆さんすみません)

手を洗ったサラリーマンは、濡れた手をパッパと払っただけで、ハンカチを持っていなかった。この国に紳士はいないのか!と悲しかった。

「ハンカチをもたせねば」と友人に「マイ・インターン」を勧めた。「あの映画よかったね〜」と言ってくるが、ハンカチを持つようにはならなかった。若い人ほど持っていない。なんなら、手を洗わない人も多い。

彼氏がトイレに行って、「お待たせ」と笑顔で彼女と手を繋ぐ。典型的なパターンだが、今の統計だと、その彼氏は手を洗っている確率は50%である。

紳士の仲間入りをした私はトイレですました顔で手を拭いている。隣には、手をズボンで拭く若造がいる。こういう時にこそ「これだから若造が」という言葉が言えるものだ。

ハンカチを持ち始めて数年が経つが、女性に貸したことは一度もない。

というより、手を拭いたハンカチを涙を流している人に貸してもいいのか?という疑問を持っている。


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