名前について(名前を変える方法)

ベーグル法律事務所の弁護士の林正和です。

苗字シリーズがひと段落しましたが、せっかくなので苗字だけでなく名前についてもお話したいと思います。

名前は、結婚しても離婚しても変わりません。なので、名前を変更することは馴染みないと思います。
もっとも、法律は名前を変えられる方法を用意しています。
その方法とは、前回と同様、≪家庭裁判所の許可≫です。

過去の裁判所の判断から、どんな場合に名前の変更が認められているのか見てみましょう。(名前は、適宜、変更しております。)

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【ケース1】夫が勝手に名前を付けたケース
とあるご夫婦は、生まれた子供に「翠」と名付けようと決めていました。
ところが、父親がいざ役所に行くと担当者から「翠」という漢字が使用できないと言われて出生届を提出出来ませんでした。
そこで、父親は、「みどり」と平仮名の名前として出生届を出しました。

しかし、母親は、「みどり」という名前に納得できず、夫婦でも争いが生じました。そこで、裁判所に対して、父親と母親が改めて相談して決めた名前への変更を求め、裁判所も認めました。

【ケース2】近所に同姓同名の人がいたケース
あるところに「幸恵」さんという人がいました。そして、近所に同世代で同姓同名の「幸恵」さんがおり、2人とも同じ幼稚園に通い、小学校も同じ所に通う予定でした。

このままでは、進学しても同姓同名により不便不都合があるとして、「幸恵」さんから「幸枝」へと変更を求め、裁判所も認めました。

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ご紹介したケースは、いずれも子供の名前を変更するものです。
幼い子供の場合、まだ名前も一般社会に広く浸透していないので、大人と比べると変更が認められやすいのだと思います。

さて、「翠」さんのケースでも問題になりましたが、名前は誰が、どうやって決めるのでしょうか。
実は、これに関して興味深い裁判所の判断があります。
大学などで民法を学んだ人がいれば、一度は聞いたことあるかもしれません。「悪魔ちゃん」事件です。

あるご夫婦が、子供の名前を「悪魔」として出生届を提出し、役所が受理しました。しかし、役所は、「悪魔」という名前は認められないとして、一旦受理した名前を勝手に削除してしまいました。
そこで、ご夫婦は、削除したことを取消してほしいと、裁判所に訴えました。

裁判所は、
・名前を付けることは、子供のために行うことである
・子供のためになるとは明らかに思えないような名付けは違法
・「悪魔」というのは、両親として非常に深い思い入れがあったとしても、
 常識から考えて、明らかに不穏当で違法
ということを述べました。(もっとも、結論は、手続的な問題等からご夫婦の請求を認めています。)
つまり、名前は親が子供の為に付けるものなので、子供の為にならない名前はダメだということです。

さて、最後に、戸籍や住民票といった公的書類には、漢字のみ表記されています。なので、公的な「読み方」というのはないのです。(実際、戸籍や住民票を見ただけでは読み方が分からないことがあるので、読み方を聞いてメモをとったりしています。)
しかし、国は、送り仮名を制度化しようと検討しています。

自由な読み方が制限される可能性もありますが、難読な名前をスムーズに読んでもらえることにつながるかもしれません。

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