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【詩】出席 -花言葉創作-

ねえ先輩
ぼく、あなたのしぐさが好きだった
ほっそりとした白い指で、横髪を耳に掛けるところが綺麗でさ
昼飯一緒に食いに行くと まるでお手本みたいな箸づかいで
つついてるのが安っぽい焼魚定食でも あなたはいっとう上品だった 
ぼくがちょっとでも見惚れてると すぐに目ざとく気がついて
「ばかね」って照れ隠しに ちょっと怒ったふりして笑うとこも好きだった

そう、好きだった
好きだったんだよなあ、ほんとうに
知らなかったんだろうな 知っていて黙ってくれてたのかもしれないな
それは優しさだったのかな それとも許しだったのかな
優しさも許しも似たようなものだと はき違えてる奴らはごまんといるが
ところがどっこい こと好いた惚れたに関しちゃあ大違い
優しさってのは 胸の中ににしまいこまれるということで
許しってのは 見えない振りをされるということだ わかるだろ

せめて優しさだったんだと信じていたいな
どのみちもうすぐ失うんだ
このはがきをポストに捨てた瞬間から
失うことはわかっているんだ
あと数分信じていたい わずか数分騙されていたい
近い将来 あなたが手の届かない誰かになってしまうという事実より
あなたに黙って許されていたんだと知るほうが
ぼくはいっとうつらい

ねえ先輩
しあわせになってよ なってくれなきゃ泣いちまうから
ぼくがべそかいて男泣きを始めたら 優しいあなたにはつらいだろ
だから絶対にしあわせになってよ 誓いの言葉はいらないよ
それをきく役目はぼくじゃない ぼくは馬鹿だけど物分かりはいいんだ
そういう後輩だったから
あなたが心からかわいがってくれたんだとわかってる

ねえ先輩
ぼくがどんなに泣いたって 振り返らなくてかまわないよ
ただいつもみたいに 「ばかね」って笑い飛ばしてくれればいいよ
3か月後の日曜日
あのほっそりとした白い指で 知らねえ男の腕を取り
ドレスを纏ってほほ笑むあなたに見せるためだけに
このはがきをポストに捨てた帰り道
とっときのスーツをクリーニングに出しにいくぼくのこと





こちらの日記でふれていた、花言葉創作シリーズの第1弾でした

白のつるバラ 「尊敬」
ダスティピンクのカーネーション 「美しいしぐさ」「気品」
ヘレニウム 「寛容な心」「恋の望み」
ソリダスター 「わたしに振り向いて」「なみだ」

結婚式をやらない人たちが増えているから、うまく伝わったかはわからないけれども、あの招待はがきが決定打になる恋の終わりって結構あるんじゃないかな~~と思って書きました

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