見出し画像

書評 パシヨン 読書好きならとにかく・・・ 

五十路のおじさん、ばっどです。

パシヨン
川越 宗一

地方紙の連載小説の単行本化作品。
恥ずかしながら新聞で読むまで、直木賞受賞作家ということを存じ上げなかったが、肩書はともかく、連載で話は全部わかっているのに、お金を出して本を買ってしまった、個人的にはそーゆーレベルの作品です。

ざっくり説明すると小西行長の孫で後にイエズス会司祭となる小西マンショと、小禄の身代から立身出世し、幕府総目付までになる井上政重の二人を軸にした物語。
江戸初期、キリスト教信仰の禁令、弾圧が強まる時代を二人がどう生きたのか大きな流れです。

マンショも政重も、立場や時代に縛られ、悩みながら人生を歩みます。
信仰を考える中で自分がどうしたいかを掘り下げるマンショと、徳川治世かくあるべしという理念に殉じようとする政重。
対称的ですが、考え抜いてのことということは描かれており、初読であれば読んでいてああ次はどうなんねん、という期待感が尽きません。

マンショと彼を育てることになった小西家の遺臣、源介の関係性に心を惹かれます。
遺臣なので家来だけど、父。
主家再興を賭けた殿様育成。修身的なことをたたき込もうとするので、マンショにとってはなかなか厳しい。
が、彼の感じたことはそれだけではなかったというのがイイところ。
そこにナントカはあるんか、というヤツですな。

作中のヤマ場の一場面で、マンショが源介にものすごく言い方を端折った指示をするシーンがあります。
源介はマンショの決心を一瞬で理解し、それに「承知」とだけ応えます。
そこに込められた、親子的な関係も主従関係も全てを超えた信頼。コレはシビれます。

連載を読んでから熱源やら、大地に燦たりやら、既刊を読みつくしてしまいました。
とにかく読んで損なしというか、読まないと損かもしれません。
そして、今のところは作家さんとして箱推しです。まぁファンは多く今更とは思いますが…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?