メンタル不調のパンデミックへの処方箋
今週末、神戸にて開催された第26回 日本ペインリハビリテーション学会学術大会に参加させていただきました!
大会長の松原貴子先生はじめ、運営の皆様、座長、講師の先生方、ご挨拶させていただいた皆様、ありがとうございました!
知的好奇心が爆発した2日間でしたが、社会的な課題であるメンタルヘルス対策、慢性疼痛対策としてはもちろん、誰もが働く上で感じるストレスや仕事の悩みにも活かせるなと思い、久しぶりにnoteを書きました😂
ぜひ下記に当てはまる方は、少しお時間をいただき、読んでいただけると嬉しいです🙌
なんで痛みの学会なのに、メンタルヘルス文脈で書いてるの?🤔と思うかもですが、カラダとココロは切り離せない関係なので、まぁ気にせず、読んでみてください😇
人の「カラダを守るシステム」と「ココロを守るシステム」
新型コロナウイルスの世界的流行により、「免疫」という言葉に触れる機会が多くなっているのではないでしょうか。「免疫」という言葉を調べてみると、下記のように説明されています。
かなり簡単に表現してしまうと、病原体やウイルスなどから「守ってくれる仕組み・機構」ということですね。この免疫の考えをもとに、カラダとココロについて考えてみると、慢性疼痛対策やメンタルヘルス対策、そして、仕事に関わるストレス・不安等の解消につながるかも知れません🥺
人の「カラダを守るシステム」
上記の表を見ていただくと非常にわかりやすいと思うのですが、
外的な刺激により、免疫反応が働きすぎると「アレルギー」となり、
反対に免疫反応が働かないと「感染症」になります。
内的な刺激に対して、免疫機能が働きすぎると「自己免疫疾患」、
反対に免疫反応が働かないと「ガン(悪性腫瘍)」になるわけです。
このカラダの考え方を、ココロに適用してみると、ココロの不調における対策についても、戦略的に考えることができるようになってきます✨
人の「ココロを守るシステム」
ココロに置き換えてみると、上記のような表にすることができます。
外的な刺激により、免疫反応が働きすぎると「不安や過剰反応」が出現し、
反対に免疫反応が働かないと「落ち込む」ような状態になってしまいます。
一方で、内的な刺激に対して、免疫機能が働きすぎると「完璧主義」になってしまったり、反対に免疫反応が働かないと「自責の念」が強くなってきます。
言い換えてしまうと、不安症は「ココロのアレルギー」、うつ病は「ココロの感染症」とも言い換えることができます。
普段の仕事において、誰もが「思うように仕事の結果が出ない…どうしよう…」「うまくいくか分からない」「不安な気持ちを持ちながら仕事をしている」などの経験をしたことがあるのではないでしょうか。そして、ときにはうつっぽくなってしまうこともあると思います。
不安症とうつ病を、それぞれ、ココロのアレルギー・ココロの感染症と捉えると、誰もがなるリスクがあることがわかります。さらに、自分がうつ病になっても、「自分だけが特殊な状況に陥っているわけではない」ということも分かるのではないでしょうか。職場のココロの相談窓口は、周囲に使っていることを知られたくないなどという理由で、使われない傾向がありますが、誰もがかかる可能性がある「ココロの風邪」なので、もっと気軽に多くの人が使って良いと思います🙆♂️
新型コロナウイルスも、当初は感染者や感染してそうな人には近づかない、というような社会的なスティグマが強かったですが、今では「いつ、どこで自分がかかってもおかしくない」という感覚を持っている方がほとんどかと思います☀️
うつ病も同じなのです。そして、カラダの免疫を高めるのと同様に、ココロの免疫機能も高めてあげる必要があるのです💪
ネガティブな感情はココロの異常を教えてくれるアラーム
では、それぞれに対する対策は何が効果的なのでしょうか。新型コロナウイルスの対策として、手洗い/うがいやマスクをしたり、免疫機能が高まるような生活習慣をする方が多くなっていると思いますが、ココロの免疫も整えてあげると、良いかもしれません。
第一歩として大切なのは、異常を教えてくれるカラダ/ココロのアラームに気づくことです。
そもそも、カラダの痛みは、カラダの異常を教えてくれるアラームです。痛みを感じないと、傷ついて血が出ていても、大怪我をしていても気づくことができないかもしれません。これは生命の危機ですよね😭
一方で、ココロの異常を教えてくれるアラームは「ネガティブな感情😩」です。自分はネガティブ思考で嫌だ…と思うときもあるかもしれませんが、実は、ネガティブな感情は「カラダの痛み」と同じで、ココロの異常を教えてくれるアラームなので、それを押し殺さないで、きちんと気づいてあげることが大切です。むしろ、カラダと同じで、ネガティブな感情を感じないことの方が危険なのです。ネガティブな感情が出てきたときは、自分のココロを守ろうという、正常な免疫機能が働いている証拠でもあります。
それでは、ココロのアレルギーや感染症に対して、医療専門職ができることは何があるのでしょうか。
ソフトスキルを使って、ハードスキルを有効にする
ここから医療専門職的な目線が加わりますが、ココロのアレルギーには、エクスポージャー療法と言われるような不安の原因になる刺激に段階的に触れてもらうことで、不安を消していく方法を用いることがあります。一方で、ココロの感染症に対しては、認知再構成法などのスキルを使って、認知行動療法的アプローチをしていくこともあるかと思います。
しかし、医療専門職は「認知行動療法のこの方法を使ってアプローチしてみよう!」などと、技術・スキルばかりに目が行ってしまうなどの状態に陥りがちです。専門家目線ではなく、実際のココロの不調を抱えている従業員の立場になり、彼らが感じている苦痛・苦悩・疾患行動について、考えてみると、どんなアプローチをすればいいのか、どんな能力を医療専門職としてつけていかなければいけないのかも分かってきます🙂
一般的に「苦痛」に対しては、医療専門職が教育カリキュラムで習うような専門的なスキル(運動療法・認知行動療法など)といったハードスキルと言われるスキルが必要です。一方で、「苦悩」や「疾患行動」に対しては、ハードスキルではどう頑張っても対応できません。
ソフトスキルとしての「コミュニケーションスキル」「共同意思決定スキル(Shared Decision Making)」などのスキルが必要になってくるのです。
日本の医療専門職の教育課程では、ハードスキルに関する教育はあるものの、ソフトスキルに関する教育は皆無と言っても過言ではないかと思います。実際の経験からも、いろいろなハードスキルはこれまで勉強してきたので、目の前の患者さんにすぐ貢献できると思っていても、ココロのバリア/壁を超えられないと、そもそも望むような介入効果も得ることは難しいと思います😱
もし、ソフトスキルがないと、ココロの不調を抱えている従業員のココロの壁/バリアを乗り越えることができません。そして、もし、認知行動療法の専門的な知識を学んで、実践できるハードスキルを持っていたとしても、ソフトスキルがなければ、せっかくのハードスキルも、宝の持ち腐れになってしまいます😨
つまり、「ソフトスキルを使って、ハードスキルを有効にする。」という考え方が必要になってくるのです。
ソフトスキルは、天性のものではなく、(日本で教育されることはほぼありませんが)スキルとして学ぶことができるものです。
特にコミュニケーションの場で大切なのは、「言葉を出す順番」です。医療専門職は、どうしても正しい医学的な知識があるので、エビデンスのある情報をすぐに提供したいと思って、相手が話している途中で、「あっ、実はそれは違ってですね〜」という感じで言ってしまうことがあると思います。しかし、重要なのは、正しい答えが分かっていても、相手の言い分や考え、訴え、気持ちを先に聞いて、共感的な対話をすること。正しい答えを渡すのは後回しにすることです📝(このスキルは当社が運営するポケットセラピストの専門家として経験を重ねることで着実につけることができます🙌)
最後にはなりますが、堀越先生のご講演では、医療専門職として、ハードスキル・ソフトスキルともに重要だが、「共感性」「温かさ」という共通要因を持っていることが最も重要であるとされていました。当社が運営するポケットセラピストのコンセプトである「一人一人の人生や不安に徹底的に寄り添う」「テクノロジーを通して人としての温かみを届ける」「安心感に包まれた人生を提供する」といったコンセプトと完全に一致するなと感動しながら帰路についています🥺
また、理学療法士のような専門職が、認知行動療法を全てマスターするのではなく、認知行動療法のスキルのエッセンスを理学療法士のような各専門職が活かすことが重要だとおっしゃっており、我々がもっていた考えを補強いただいたような気持ちになり、非常に学びの多い時間となりました🙌
ポケットセラピストでは、職域でカラダやココロの不調を抱える勤労者のサポートをしており、理学療法士・作業療法士・公認心理師・臨床心理士などの専門職を募集していますので、ぜひ、この機会に専門家登録をよろしくお願い申し上げます🙇♂️
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