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プロの意見は聞いて欲しい(怒)

先生、いわゆる教師ではない人を先生と呼ぶ場合がある。政治家や弁護士、作家さんやお医者さんって人達を〜先生って呼ぶのがそれだ。世の中先生って呼ばれないプロも沢山いる。でもやっぱり先生って呼ばれるプロと他のプロには隔たりを感じてしまうのだ。

■先生の言うことは聞く

その先生って人達に言われたことには皆、基本的には従うし余程のことが無ければわざわざ反論することも無いだろう。いつからそうなったのだろう?

お医者さんは先生な気がするんだけどそれ以外はただ生業としてやってるだけじゃないのか?お医者さんも生業としてだろうけど職場柄人助けや健康になるために教えを乞う面もあって先生でも違和感はあまりない。無視しようものなら場合によっては命に関わるんだから無視できないし。

その道のプロからその知見を得たいって下手に出る気持ちが先生と呼ばせているんだろうか?それとも権威にひれ伏しているんだろうか?

世の中、先生とは呼ばれないプロの方が遥かに多い。そういうプロの言葉が軽視されていやしないかと思うのだ。

■プロの定義はないが

僕の職業に国家試験のような資格は存在しない。資格を取ろうと思っても実務に役に立つような資格もない。

僕はゲーム業界でアートディレクターという肩書きで仕事をしているが、美大の学位がある以上は何もない。言ったもん勝ちと言えなくもないが実績や会社でのポジション的にも勝手に名乗るってことは、さすがにできない。

だから一応、周囲がアートのディレクションを任せて良いとしてくれてるはずだ。自分もそれに応えようと仕事している。

■プロの話しを聞いてくれないと…

●クライアントさんへの処方箋

こちらの記事のように、開発のプロとして仕事を依頼される。ヒヤリングを重ねて、診断、診察して処方箋としてビジュアルのコンセプトや開発の段取りを説明。それに沿って開発を進めるのが我々の仕事だ。

ヒヤリングしてるから全く見当違いな提案はしない。だから合意にまでは間違い無く持って行くし、ずっと平行線でまとまらないってことは未だかつてない。

このプランで開発して行くので、ご協力宜しくお願いしますね。という感じで開発スタート。

ただ、この処方箋の重要さを理解しないで合意してしまうクライントさんもいる。今回は、そこがこじれてしまったお話し。

■処方箋を完全無視され…

なぜか合意したはずのプランを無視する方々もおられ…
アートの監修は僕なのに全く違うラインから監修スルーの絵がやって来ることがある。

とあるスマホソーシャルゲームの開発で起きたこと。

歴史の長いタイトルで、久しぶりの新作だった。その新作を我々が担当することになり、僕はゲームのアート全体の監修を担当させて頂いた。

●新作とリメイク版が並走していた

同時に、別の開発会社で過去作のリマスター版も先行スタートしていて並走する形に。何となくリマスター版の開発会社は我々を良く思っていないのが見て取れた。なんか凄い上から目線…
クライアントのプロデューサーは、この両社の開発を見ている状態。変な三角関係になってしまった…

同時に進む2タイトルってなると素材を使いまわせないものか?っていう発想も出て来て、先行しているリマスターの素材流用案が浮上。自分としても開発費を抑える意味で否定はしなかった。

条件として、自分が出した処方箋の範囲でならOKとした。
そこはプロとして良い物を提供するためのボーダーライン。処方箋にはあらかじめ絵素材の構図、構造、セーフエリアなど絵のタイプ毎にレギュレーションを記載してある。ただそれを守ればいいだけの単純な話しだ。
これで処方箋にもこの条件にも合意したことになる。


●だがしかし…

送られて来た絵は、僕の指定なんか無視の自由奔放な絵ではありませんか!(怒)

当然、我々が開発するゲームには使用できない。なぜなら処方箋を守っていないから。
治療中に市販のよくわからない薬飲まれたら治療にならないのと同じこと。僕の立場上、そこをスルーしてしまっては元も子もない。

なんでこうなったのか?

●その理由

どうやら

1.リメイク版の開発会社のアートディレクター
2.企画プロデューサー
3.僕ら開発会社
謎の序列

という絵のジャッジに謎の序列ができてしまっていた。

プロデューサーはそのタイトルに関して経験が浅く、リメイク版の開発会社の言いなりで素材を回して来たようだ。どことなくプロデューサーさんも腰が低い。リメイク開発側も我々もプロなので、プロデューサーさんも翻弄されていると見える。

もう面倒なので、問題の絵を送って来た本人と話しをすることになった。どういう意図でそのレギュレーション無視の絵ができたのか?
わざわざ出向いて直接聞いてみた。

「あえて、このパースをゴニョゴニョ…」

「あえて」って言葉が出た瞬間悟った。これは嫌がらせだなと。完全にナメてやがる…プロデューサーも僕らも。
レギュレーションがあるのに”あえて”って…そんなん、こっちはルール崩壊しちゃって仕事にならないよ。

「あえて」の後は呆れかえって何を話していたかも覚えていない。
口には出さないが、同じ仕事をする人間としてコイツはクソだなと思った。

”いいものを作る”ことより誰も得をしない自分可愛さの意地を優先するのね。そんなに新作作りたかったんなら僕らに依頼が来る前に話しつけときゃいいじゃん。今さら知らんよ。
反論も一切せず「そうですか」とだけ言って帰ったような…それすらも覚えていない。


■結局、処方箋に回帰

その後、何度やり取りしても僕のレギュレーションは無視され続けた。したがってOKを出すことも無かった。他にも流用素材の提供が沢山あったものの…それらも1枚たりとも使うことは無かったと思う。

プロデューサーも状況が分からず

「なんでいいっつもダメ出しばっかりで使ってくれないんだよ!」

と僕にキレ出す始末。

僕は、意地になって使わないのではなく”処方箋”を守ってくれてないからですよ。それに沿った開発を進めるで同意しましたよね?と丁寧に説明した。あと、

「改めてご説明しますよ。冷静になって下さい。僕らのゲームは”縦画面”ですよね?でも、あちらのリメイク版は”横画面”です。必然的に、素材そのまま使えるわけがないんです。」

決定打となったのは、この言葉だったようでプロデューサーも”ハッ”となった。
素材流用の条件でこれも伝えてたじゃん…今さら”ハッ”って…
どうやらやっと伝わったようで。

その後、別のイラストレーターさんにレギュレーション通り描いて頂けるようになって無事開発は進んだ。
だいぶ無駄な時間が過ぎてしまったが、何とか処方箋に回帰…


■後日談

その後、我々のタイトルは無事リリース。
予想以上の大ヒットで3年以上経った今でも運営は続いている。ストアの売り上げランキングでも何度か1位を取っている。

先行していたリメイク版は苦戦したようで…我々よりも1年以上遅れてリリースされた。それについてはノーコメント…


プロの話しには耳を傾けて欲しいな…って思う。
先生って呼ばれるような仕事ではないけど、聞いて損はしないから。

お願いしますよ…ってお話しでした。


~おわり~

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