尻に火をつけたがる人が嫌い

久しぶりに仕事関係の話しを書こうと思う。

僕は

「もっと働け!」
「もっとやる気を見せろ!」

とアオりたがる人が嫌いである。

この人の尻に火がつき1人でアチッ!となって、今度はみんなの尻にも火をつけて回るのである。
もうコワい…

こういうヒステリックな悪い体育会系のノリ、まだ30代後半から40代の一部の人に根強く残っているかもしれない。
かくいう自分もその世代にあたる。

ちょい上の40代後半から50代以上は意外と穏やか。
決して静観ってわけではなく、言葉や態度でアオったりはせず物静かに行動で示す人が多いように思う。

今日はそんな職場で感じた違和感の話しをしようと思います。

■結局、「尻」じゃなく「心を燃やせ」だ

誰に言われなくても遅かれ早かれ、尻には勝手に火がつく。ただし、尻に火がついた時はもう遅い。

この段階ではもう物事を収束させる方向にしか意識は向いていない。
これは、いわゆる「火事場の馬鹿力」だ。長続きはしない。

もの作りで大事なのは、見出し絵の煉獄さんの言葉を借りるとまさに「心を燃やせ」だ。
人の心を燃やすってとても難しくて、しかも誰かが容易に着火できるものじゃない。

・「火事場の馬鹿力」と「心を燃やせ」の違い

●火事場の馬鹿力

  • 周囲は火事場、それを鎮火するための限定的な力

  • 短期決戦

  • 直近最悪の未来を回避するための対処


●心を燃やす

  • 常日頃、高い成果を持続可能な力

  • 長期的に持続、成長できる

  • 未来の希望に向かって行くための継続的行動


・前向きな行動かどうかが分かれ目

それぞれの対比ポイントを太字で示した。

「火事場の馬鹿力」は火事場でしか発動しない限定的な力で、馬鹿力なので継続が難しい。

「心を燃やす」のに火事場は必要ない。心だから。
火事場ほどの力は必要ないし、そもそも力の質が違う。
これは常日頃、使える力だし持続可能で成長も見込める。

それぞれ見ている未来も異なる。
前者は「最悪よりマシな未来」、後者は「未来の希望」を見ている。
スタートラインからして違うのだ。

■開発の終わりが見えてくると変な火がつきやすい

ゲーム開発の終盤。

残り期間と残り作業が絞り込まれて見え易くなってくる。

まだこんなにタスクが…クオリティも心配…終わるんかな…って不安が誰かの尻に火をつける。

この誰かが会社の偉い人だとタチが悪い。

火がつくと今度は、
「周り、全然燃えてないけど大丈夫?」
って謎の心配をし出す。

人の心配する前にお前大丈夫?というのが自分の感覚で、上のレイヤーともなればなおさら落ち着いてくれって思う。

・尻につけた火はすぐに消える

立場上もっと働け、残業しろとは言えないから

「今が頑張りどころだから」
「正月も休んでられないな〜」


なんて言い出す。

そういう人に限って悪く転んだ未来を想像させて尻に火をつけたがる。
言葉を選ばずに言うとコレはもう脅しだ。
脅された瞬間はビビるし、みんな尻に火が付いて一時的に頑張ってるように見えるかもしれない。

・つけられた火は消したくもなる

つけて回ってる火元の火は勝手に燃え続けるが、つけられた火は長続きしない。
一時的に尻についた火は勢い良く燃えたように見えても同時にすぐ消したくなる気持ちも働く。
だから長くは続かないし、またつけなきゃいけない。
でもやっぱり消したくなる。を繰り返す。
そりゃ尻だしイヤなもんだ。

・居ごこちも悪く疲弊して行く

この手続きで火をつけたり消したりを繰り返すと疲弊して行く。
何とか難局を乗り越えたとしても尻がヒリヒリして、もうそこに座りたくはない。

火を持った人が同じ職場にいて、定期的に尻に着火されたんじゃたまらん。
じきに退職ってなるのがオチだろう。

火をつけた方は、それまでのヤツだったんだと人をふるいにでもかけてやった気持ちなのかもしれない。

でもそれはきっと違う。

■火は他人がつけるものじゃない

気持ちの火は他人の火種でつけるもんじゃない。
たぶん火種もその人固有のものじゃないと消えやすいんだと思う。

尻に火をつけたがる人の手に持った火種も実は当人の火種。火が起きた時を忘れてしまってるだけで、それもかつて自分で起こした火だったはず。

・僕らの先輩

世代的に尻叩かれたり叱咤激励、時には怒鳴られたりもしかしたら手が飛んで来たこともあったかもしれない。
自分もアニメ業界で過酷な経験はしたし、ほんとに火のついたタバコを投げ付けられたこともあったな…

僕世代の先輩方は多少手荒な指導もしたし、確かに尻に油をたっぷり塗ってから火もつけられたかもしれない。
でもそれだけじゃなかった。

手荒な中にもちゃんと気持ちを鼓舞してくれる優しさもあった。
尻も炎上してはいたが心の火種を作る手助けをしてくれたように思う。

・先輩の背中

先輩だって寝れない帰れないって悲惨な状態にも関わらず飲み連れてってくれたりB級映画のDVDを朝まで観たり。
そんな無意味そうな時間も含めて火種の材料になってくれてる気がする。
何より仕事に対する厳しさの面では、身をもって手本を示してくれた。

いい面も悪い面も含めて背中を見せてくれたし、そういう先輩は今も自分の前を走ってたりする。

そういう姿を見せられると自分も負けてられないと思う。

・対等に見るからこそ厳しい

後輩に圧をかけて使い倒すのでは無く、早く同僚として対等に向き合いたいからこそ色々面倒見てくれてたように思う。

そんな先輩を残して薄情にも自分が退職する時(ほんとに申し訳無かったけど)も泣きながら送り出してくれたし。
いろんな思いもあったろうが、同僚として見てくれたのかな?とも思った。

だからこそ、20年近く経った今も付き合いが続いている。

■心を燃やせ(煉獄さんを見習ってほしい…)

今回は尻、尻うるさいが、尻じゃなくて大事なのは心を燃やせなのだ。
上からやれって言われると萎縮するし圧もかかる。
それで火がついたって圧をかけ続けないとまた消えてしまう。

火がつくタイミングもつき方も人による。
一斉に今から燃やして下さいったってできる質のものじゃないと思うのだ。
そういうのが職人魂とかもの作りの根幹にあるものなはず。

少なくとも「いい未来」が見えてないといい火も起きないだろう。
上の人間は「いい未来」を見せて、まず自分の心を燃やしてその背中を見せる。煉獄さんみたいに。
そういうカッコいい先輩であって欲しい。

だから人の尻に火をつける人は嫌いだ。



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