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花火戦争

 中学生まではよく外で遊んだ。海、山、川。野球やサッカー、子供も多かったのだろう。20人くらいで遊んだりしていた。いまでもよく覚えているのは、花火で戦争をしたこと・・。    
 10人で1チーム。2チームで対戦する。夜な夜な近所の空き地に集まった兵隊達は、それぞれに花火を持ち寄っていた。段ボールや板で壁を作り、自分達の陣地を守る。相手陣地まで花火を使いながら攻めていく。ある兵隊はロケット花火に爆竹を装着させる独自の兵器を開発してきた。1カ所に点火すると、ロケット花火と爆竹両方に点火される。そして、爆竹を載せたロケット花火が相手陣地で爆裂する。当時としては画期的な兵器であった。   
 ついに、午後8時に花火戦争が勃発した。雨のように降り注ぐロケット花火、暗闇にうごめく兵隊達。「いてっ!」と誰の声だかわからない小さな叫び声。そしてこの戦争は意外な結末を迎える。私は手に火の玉が10連発出る筒をもって特
攻した。相手陣地からはロケット花火が何発も地を這って追尾してくる。そして、相手の放ったロケット花火は意外な方向に逸れてしまった。その先にはたまたまヤンキーの兄ちゃんの車があった。ポンという力のない音が車に命中したことを
周囲に知らせた。一見、見事に・・・。そして、シャレにならなかった。

「おどれら殺したろうか!ボケが!」

(訳すと、おまえたち殺しちゃうよ。ばかだなぁ!)

 ヤンキーが追いかけてくる。 急きょ停戦協定(協定を結ぶまでに1秒かからなかった)を結んだ我々は、一目散に町中に散らばった。しかし、一人捕まった奴がいた。

 足が遅いFくん・・・。 

 F君は「僕がロケット花火をやったのではない」と必死で弁明をしたそうだ。F君の言い訳は一定の効果があったようで、無事彼は帰還した。
F「みんなつめたいなぁ!死ぬかと思ったで!」
 みんなはF君が捕まるのを気にしながらも、自分の身を守ることを優先した。そして、みんなでF君に謝った。
F君は許してくれた。これはかなり前のふるさとでの出来事。いまではいい想い出である。

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