土との再会

パンデミック序盤に引っ越したのを機にガーデニングを始めた。新居は南東にバルコニー、北西に中庭のある気持ちのいいアルトバウだ。

お気に入りの三浦くん(佐賀、武雄の山中で活動する陶芸家)の野焼きの鉢やWilly Guhlの大きなプランターに木々や花を植え、実りや季節ごとに移ろう表情、プランターの苔や経年変化を楽しむ日々。

そんなある日、友人のしづ子さん(aoiro/ベルリンで活動するエアフレグランスデザイナー)一家が畑を借りたと聞いて私は興味深々。
そんな私の様子を察してか、彼らがバケーションで留守の間畑の世話をしないかと声を掛けてくれたのだ。

7月、一番夏らしい時期に畑に通う事になった。雨があまり降らず太陽が燦々としていたこともあり、2、3日おきには様子を見に行っていた。

畑は森の中の開けた原っぱにあり、周りは野花が風にゆられていて爽やかだ。

畑に行く度に変わる景色。
青かったトマトは赤く色づき、小さなズッキーニはオバケサイズに成長している。
なかったはずの雑草が膝まで伸びる。そんな著しい成長を行く度に目の当たりにした。

たっぷり水をあげて、伸びすぎた草を刈る。
愛情を注いだ分だけスクスクと育ってくれている。最初はそんな気がしたのだけど、実はそうではない。

人なんかは到底及ばない、土や太陽、風や虫、微生物や菌などの力が相まっていて、私が手を動かしたことなんて、微力の“び”に当たるかも危ういのだ。

食卓でそれらを頂いた時、体中を命が巡った。

あゝ、また食べたいな。

私の祖母は農家ではないもののずっと畑をやっていた。
小さい頃、祖母の育てた小ぶりなとうもろこしが大好きだった。茹で上がるのを待つ間に、台所で立ちのぼる甘い湯気と祖母の背中を懐かしく思い、この再会を祝福したのだった。

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