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【ザ・バロック】古楽器の豊穣とバロックの香り-リュート、リコーダー、ガンバ

 近世バロックから近代古典派へと音楽スタイルが整理(市場整備)されていくなかで、楽器編成の合理化(規格統一)は急速に進み、ヴァイオリンを中心とした弦楽の均質的なサウンドがその後のクラシック音楽のベースとなっていった。

(参考)

 結果として、リュートリコーダーヴィオラ・ダ・ガンバといったバロック特有の楽器は(一時的に)表舞台から姿を消すことになる。

 それらの楽器のレパートリーの大半は、やはりバロック時代のものであり、一聴するだけでバロックの濃厚な香りを楽しむことができる。

ヴァイオリン、リュート、チェンバロ

 爆音化に成功した唯一の撥弦楽器は、おそらくギターだろう。
 対するリュートは楽器の構造上、どうしても爆音化ができなかった。
 音域を拡大することはできても、音量で負けてしまう。
 そのかわり、リュートの音色は非常に魅力的である。

リュート

 繊細なぬくもり。
 カラッと乾いたギターとは異なる、しっとりとした憂いのある肌触り。
 LEDライトにはない、ろうそくの温かみのような、その陰影の魅力的な音色こそリュート。

 ◆ ◆ ◆

 さて、リコーダーのレパートリーはほぼバロックと言っても差し支えないだろう。
 あのヘンデルは、リコーダーに素晴らしいアリアを与えてみせた。

リコーダー、チェンバロ

 いわずもがな、あのリコーダー、である。
 ここまで到達して初めて、楽器の真価がわかるというものだろう。
 
 言いようのない安らぎ、至極の清涼。
 確かに、音量には限界がある。
 だからこそのバロックの魅力。

 しかし、この時代を最も象徴する楽器といえば、ほかでもない、ヴィオラ・ダ・ガンバである。

ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロ

 ヴィオラ・ダ・ガンバは、源平合戦でいうところの平氏である。(なお、対するはもちろんヴァイオリン属。)
 まさに、一世を風靡した楽器であり、イギリスやフランス、とりわけフランスの宮廷で愛された、ブルボン御用達の楽器でもある。
 
 ヴァイオリン属には決して出せない、鄙びた音色、ある種の枯れ、かすれとでも言える音色に、あのバッハもヨハネ受難曲においてヴィオラ・ダ・ガンバをスポット参戦させた。(第30曲アルトアリアにてソロ楽器として登場)

◆ ◆ ◆

 バロック特有の楽器はいずれも、2000人収容の大ホールには似合わない。
 集客を要した、すなわち爆音の楽器を要求したのはまぎれもなく、近代資本主義の市民社会(ブルジョワジー)時代の音楽であった。

(補論)
 楽器の栄枯盛衰には、音量以外にも調律、チューニングの問題が根深く存在していた。
 結局のところ、ヴァイオリン属のチューニングと相性が悪い楽器は、新時代に順応できなかったのである。