アリのよろい 「Monster ティックル」
「Monsterティックル」
一番最初にぼくがつくったモンスターは「ティックル」
このこの材料は、、、
どこだったかなぁ
そうそう
あの日、流星群をみにいった帰り道だ
流星群があんまりきれいだったから
心がウキウキしちゃってさ
足をのばして 土星の近くまでフラフラ散歩していたんだ
のどがかわいちゃったからそろそろ地球にもどろうかと思ったときに
ふっと思い出したんだ
すこしまえに地球のえらい先生が
「土星の近くに水のあるところがある」
って言ってたってこと
ぼくの鼻はすばらしく性能がいいからね
犬の10バイくらいかな
だから水のにおいもすぐにわかるんだ
あったよ あったよ
においはとってもよかったし
ぼくののどもとってもカラカラだった
だけど
ぼくはとっても注意深いからさ
飲む前に観察するところから始めたのさ
じーっとみていたら
ぴかりん ぴかりんって
光のつぶつぶがみえてきて
その光は 黄赤緑青紫って言葉では
いいきれないくらい宇宙的な色をしているんだ
ふーって息を吹きかけてみたら
いいにおいがふわっとたちのぼって
宇宙的な色の光るつぶつぶがいっせいに動きだして
それはそれはキレイなんだ
いいにおいがして
キレイなものは
オイシイにきまっているし
からだにもいいにきまっている
これはぼくの考えだけどね
いまのところはずれたことは一度もないんだぜ
ペロリ
なめたとたんに
かわいたベロに光のつぶつぶがしみ込んできた
甘くてちょっとなつかしい
そうだなぁ
女神さまといっしょに水浴びをしているような感じかな
わかりずらいかい?
じゃあ
おかあさんといっしょにあっつい夏の日
小さなプールに足をつっこんで
みるくアイスをなめた感じっていったらわかるだろう
とにかく気がついたらぼくは
息をするのもわすれてゴクリゴクリと
その光のつぶつぶのはいった水をのんだんだ
その水があんまりオイシイからさ
チョッキのポケットにいれて持ち帰ったんだ
もちろん水もれ防止のポケットさ
ダイナミックでキレイな流星群や
オイシイ水の場所をみつけたうれしさで
最高にワクワクしていたぼくに
さらにイケてるアイデアが浮かんだんだ
この水と
あといくつかの材料をあつめて
モンスターをつくるってことさ
地球にもどる前に月によって
月のほこりをひとつかみいただいてきた
それからチョッキのフードの中にはいっていた
流星群からとびちってきた星のこながひとつかみ
朝ごはんでたべたゆでたまごのカラをいっこ分
まだかたいバナナ一本
うれてあまくてやわらかいバナナ一本
おっと
わすれちゃいけないぼくのかみの毛10本
これをおおきなボールのなかにいれて
ぐるぐるかきまぜて
光のつぶつぶのはいった水をとりあえず8てきたらして
さらにぐるぐるかきまぜていると
ぷつん ぱつん
とはじけるおとがして
材料がふくらんできたよ
いっしょにいいにおいも
これはもちろんバナナのかおりだね
ふくらんだ材料がだんだんかたちになってきた
みじかくてふとっちょのバナナのようなかたち
よくみると上のほうにみみのようなものがふたつ伸びてきて
まんなかあたりから手のひらのようなものがはえてきた
どうやらゆびは3本のようだ
ということは このあたりがかおかな?
とみつめていると
でてきたでてきた
ふたつのくぼみからほうせきのようなひとみ
そのひとみがキラリとひかると同時に
ひとみのちょっとしたがパカっと開いて
「ティック ティック ティック」
という楽しい笑い声が部屋中にひびいたんだ
その瞬間 ぼくはおもわずさけんでいたよ
「やあ兄弟! きみは今日からティックルだよ」
「ティック ティック ティック
うれしいなぁ おいらをつくってくれてありがとう
おいらはティックルっていうんだね
きみは?」
「うん ぼくはピサ
きみははじめてのモンスター
どうやら成功したみたいだ
きみはキレイなバナナ色をしているし
とってもいいにおいがする
キレイな色でいいにおいのするものはすばらしいにきまってる」
「ピサ とにかくほんとうにありがとう
おいらはとってもいい気分だよ
さぁ ぼくはきみのためになにができるのかな?」
「ぼくのためになにができるかって?
そんなこと
なんにもしなくていいにきまっているじゃないか
ぼくはぼくのことはぜーんぶじぶんでできるんだ
ティックル
きみはきみがたのしくなることだけをすればいい」
「ピサ でもきみはおいらをうみだしてくれた
そのお礼はさせてもらいたいよ」
「そうかい じゃぁ、、、
最近ぼくにしつこくお説教をするにんげんがいるんだけど
そのにんげんのところへいって ちょっといたずらしてきてくれないかな」
「にんげんってなんだい?
お説教ってなんだい?
いたずらってなんだい?」
ティックルはうまれたばかりで知らないことが多すぎました
ピサはちょっとめんどうくさいなっておもったけど
自分から言いだしたことだから
がんばってピサに説明しました
「ティックル
にんげんってね この地球にすんでいて
ぼくに姿かたちはにているけれど
ぼくみたいに太陽系をじゆうに散歩できなくて
ぼくみたいにモンスターをつくりだすことはできなくて
ぼくみたいにいろんな機能が高性能じゃないんだ
だけど
まじめで優しくて 思いやりもあって
仕事も遊びも一生懸命
楽しむことが大好きで
一緒にいるととってもすてきなきもちになるんだ」
「ピサ それはピサのことじゃないか
だっておいらはいまとってもすてきなきもちだよ」
「ティックル
きみはそういう嬉しいことばをたくさん知っているんだね
どうしてだろう
やっぱりあの光のつぶつぶがはいった水のせいかな、、、
そうなんだ
にんげんってすばらしいんだ
でもね
ほんのわずかなんだけど
そのすばらしいにんげんの中にも
ちょっとこまったにんげんもいるんだ
ひととくらべることや
おちこむことや
うらやましがることや
ひとにダメ出しすることや
ひとの足をひっぱることや、、、
とにかく一瞬でもたのしんだら死ぬって
おもっているようなにんげんがいるんだ
かってに自分でつまらなくしているだけならいいんだけど
そういうにんげんたちは
ときどき
ぼくが楽しむこともゆるせなくて
ジャマしてくることがあるからさ
それをされるとほんとうにめんどうくさいんだ!」
「ピサ
そのにんげんのところへ行って
おいらはなにをすればいいんだい?」
「ちょっといたずらしてくれるだけでいいんだ
いたずらっていうのはね
そのにんげんがみたことのないものをみせたり
そのにんげんがかんじたこともない気持ちにさせたりすることだよ
つまり、びっくりさせちゃえ!ってことさ」
「ふーん そうですか
ではとにかくそのにんげんのところへ案内してもらいましょうか」
「ティックル
その必要はないんだ
ほら 聞こえないかい?
あの規則正しく歩いてくる足音が」
コツ コツ コツ コツ
その足音が止まると コンコンとドアをノックする音がして
「ピサ
おひるごはんをもってきたわよ
きょうはあなたの好きなシーフードドリアよ
ドアをあけてちょうだい」
ピサは目を大きくひらいて
手を大きく広げて天井をあおぎ
ティックルにむかっていいました
「ほーれおいでなさった
ティックル
きみに ベキベキおばさんを紹介するよ!」
と大またに歩いてドアへ向かいました
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