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欧州トレイルGR20を歩いてみた【準備計画編】

【準備計画編】

海外トレイル歩き、アラサー山女一人歩きレポ。ナポレオンの生地、地中海にあるコルシカ島のGR20を歩いた際に調べたことのまとめ。個人的体験談はこちらから。


概要

GRルートとは

GRルート(GR Route)は、フランスを中心にヨーロッパ各地に広がる長距離ハイキング・トレッキング・ウォーキング用の経路ネットワークを指します。GRは「Grande Randonnée」(大きな散歩)の略語で、フランスで始まり、他のヨーロッパ国にも広がり、いまでは数百本以上のルートが整備されているそう。

 フランスのGRルートだけでもこんなにあります(画像

有名どころだと、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼者のルート(GR65)やアルプスを横断するGR5があるでしょうか。

GR20とは

GRルートの中でも特に有名なのがGR20。地中海に浮かぶ離島、コルシカ島を横断するルートで、難易度が高いことで有名です。総距離は約180kmで、16のステージから構成されており、平均10日から2週間かけて歩くのが一般的。

コルシカ島は地中海に浮かぶフランス領の離島。ナポレオンの生地。(Google Map)

 ルートはこんなかんじ。アップダウンが激しく、浮石の多いがれ場、岩場、鎖場が多いイメージ。北部のCalenzanaから始まり、南部のConcaまでトレイルが伸びています。

画像:Komoot

なぜGR20? 

GR20は学生時代(10年前)からずっと歩きたいなあ、でもヨーロッパ遠いなあ、なんて思いながら意識はしていました。でも、実は今回コルシカ島にはもともとクライミング目的で来ていたため、まさか歩くことになるとは思っていませんでした。たまたま時間ができたため、滞在期間を1週間のばし、北部だけを1週間かけて歩くことにした ー 経緯はそんな感じです。

準備

歩くことを急遽決めたため、準備はほぼ皆無。でも、一応ハイキングできそうなギアは持っていました。また、島内の主要都市ではアウトドアショップもあるので、そこでハイキングストックは購入(デカトロンで一番安いものを2000円ほどで購入。)

持ち物

おきにいりOspreyの30Lザック

ザック(30L)
1.5Lプラティパス(折りたたみできるボトル)
1.5Lペットボトル
Tシャツ×1
半ズボン×1
長袖×1
長ズボン×1
靴下×2
ウール下着上下(防寒兼パジャマ)
寝袋(3シーズン用)
サーマレスト(自分の身長サイズに切ったもの)
ヘッドライト
*ハイキングストック(現地購入、まじ必須!)
トレイルランニングシューズ(ローカット)
下着×2
フリース
ダウンジャケット(薄めのもの)
レインジャケット(上のみ)
スプーン・ナイフ・フォークの一体化したもの
アルミコップ
オートミール(一袋、朝ご飯とおやつ用)
テーピング、薬など
トイレットペーパー(必須!)
現金(必須!)
日焼け止め(必須!)
帽子
サンダル
タオル
Kindle
充電用バッテリー
貴重品(携帯、パスポート)

*ハイキングストックは機内持ち込みできません。飛行機でくる際は注意です

筆者の記憶より

こんなもんだったかな。正直、わたしの行った8月は、行動中はほとんどTシャツ半ズボンで、夜にフリースを羽織るかな、くらいの気温でした。長袖長ズボンは使用しなかったものの、悪天候の場合は夏でもあったほうがいいかなと。

3シーズンの寝袋も暑すぎました(でも夏用もってないので仕方ない)テン場についてから洗って干せばほぼ数時間で乾きました。今回は奮発してメリノウールのTシャツを着ていきましたが、2週間毎日来て無臭で感動しました。

テントを持っていくか否かはだいぶ迷いましたが、最終的にはやめました。詳しくは下記参考に。

途中、滝や川や湖と水遊びできる場所がたくさんあるので、水着を持っていくのもアリかもしれません。わたしは、面倒だったので下着か裸で泳ぎました。抵抗なければ裸をおすすめします(軽量化)

クッカー類も正直必要ないです。食器類含め、テン場に備わっています。

持ち物:感想と注意

おすすめの持ち物はこちらのサイト(英語)を参考に。
個人的な感想としては、持ち物は減らせるだけ減らすことをおすすめします。また、ペットボトルのかわりにウォーターブラダー(チューブから飲めるやつ)を持っていけばよかったなと。いちいちザックを下ろして水分補給するのが辛かったです。

二日目に捻挫をしたため、テーピングを多めに持って来ればよかったと後悔。多くの人が、トレランシューズもしくは若干足首サポートとのある軽登山靴を履いていました。わたしは捻挫ぐせが激しいので、ハイカットめのトレランシューズ、または予防用のテーピングをきちんとして歩けばよかったなと後悔。ただし、岩場鎖場がかなり多く、ほぼクライミングかよ!って場面も多いので、脚底感覚があまりない重登山靴はお勧めしません。足首強いよ!ってひとはトレランシューズで十分。

ビロンビロンのテーピング(足首と膝のテーピングは練習してからいきましょう)

テントを持っていくか否か

貸し出し用テントが一列に並ぶ(Refuge de l'Ortu di u Piobbuにて)
 ドミトリーのベッド(寝袋は持参します)

わたしの周囲はほとんどがテント持参でした。天気がいい週だったので、フライなしでインナーテントだけ持ってきている人もいたり。GR20上では、一応山小屋周辺でしかテントを張ることが許されていません。(ワイルドキャンピングは禁止されています。)しかし、実際はやっている人もいました(違法ですが見つからずに跡残さなければOK?)

テント持参だと、工程の日程調整がききます。しかし、軽量化重視したいのであれば、山小屋でテントを借りる、もしくはドミトリーのベッドで寝ることも可能です(寝袋は持参する必要あり)

事前予約が必要とホームページには書いてありますが、ピークシーズンにもかかわらず当日受付も可能でした。事前予約すると値段は半額になるというメリットがある一方、悪天候など日程調整が効かないのがネックです。ホームページによると、メールや電話で予約変更が可能とありますが、トレイル上で電波が通じるところは限られているため、予約変更は現実的ではありません。

軽量テントを持っているOR体力にある程度自信のある方はテント持参をおすすめします。そうでない場合は、最初の数日は余裕を持ったプランでテントもしくはドミトリーのベッドの予約をするのも良いかもしれません。わたしは、予約しなければいけないと思い込んでいたため事前予約をしましたが、体力的に山小屋に辿り着けず、数日分の宿泊費が無駄になってしまいました。天候が良ければ、虫や動物も少ないのでシュラポン(テントなしでシュラフのみで寝る)も可能かと。一度シュラポンしました。

宿泊施設(Refuge、Bergerieの違い、事前予約について)

宿泊施設には何種類かあります。Refugeとはコルシカ島地域自然公園が管理している山小屋です。山小屋予約はホームページからできます。

Refugeの宿泊費、2023年現在

事前予約の方が半額くらい安いです。テン場によっては、ドミトリーのオプションがなく、貸し出しテントの数も限られているためピークシーズンは予約した方がいいかもしれません。やはりベストはテント持参でしょう。

Refugeとは別に、Bergerieという私営の山小屋もあります。私営だけあって、Refugeとの差別化をはかるためか、食事が美味しかったりスタッフが優しかったりと、Refugeよりちょっと特別感があります。選べる場合はBergerieに泊まる!という歩行者も多かったです。

テント持参の場合はRefugeの方が安いと思いますが、テントを借りる場合はRefugeと値段はあまり変わらない場合も。

Bergerieの夜ごはん。白豆とソーセージのシチュー。激うま

水場・食糧

水場はたくさんあります。わたしが歩いたセクションでは、毎回Max1.5リットル持ち歩けば安心、という感じでした。ウォーターフィルターも必要ないです。飲める水は「Source」と書かれ、飲めない水は「non potable」とかかれています。

食糧に関しては、山小屋が運営しているシーズン中は山小屋でほぼ調達できてしまいます。メニューはこんなかんじ。

朝食:8ユーロ(1000円ちょっと)
お弁当:8ユーロ(1000円ちょっと)
夕食:20ユーロ(3000円)

ほとんどが予約制で、山小屋到着時に予約します。わたしは夕食はほぼ毎日予約しました。ちょっと高いですが、3コースメニューでガッツリ食べれると同時に友達づくりに最高です。寂しがりやのわたしにはここ重要。朝食は持参したオートミールを食べ、昼食は行動食のスナックのみで過ごしました。

おやつも2〜5ユーロくらいでチョコ、ピーナッツ、ドライフルーツ、ビスケットみたいなものが買えます。そのほかにも、チーズや乾燥ソーセージ(フランスながら)も購入可能。

大事なのは、キャッシュ(現金)を持っていくこと!すべてキャッシュです。現金をきらし、下山を余儀なくされている歩行者にも出会ったので、多めに持っていきましょう。わたしは1週間の工程で一応300ユーロほど持参しました。(北部と南部の中間地点Vizavonnaで現金下ろすことも可能)

山小屋のメニュー
予約制のディナーはだいたい6時か7時で、テーブルプランが張り出されるところも。
 ディナーはだいたいコルシカ島の野菜スープ、なにかしらのパスタ、そしてデザートにケーキまたはチーズ。おかわりできます。

山小屋の朝食はこんな感じ:

コーヒーもしくは紅茶、ビスケット、ジュース、パン

わたしの朝食はこいつ:

Muesli(画像


コルシカ島名物くりのケーキと馬鹿でかいサラミ
コルシカ島のヤギチーズ入りパンケーキ(甘くない)

体力レベル

まず、前提としてわたしの体力レベルをお伝えしておきます。わたしは、オフィスワークで脚力はだいぶ衰えたアラサー女です。週2、3でランニング、クライミングに行くくらい。怪我多めで関節弱め。今年もヘルニア、足底筋膜炎、右膝の故障と体のコンディションにはあまり自信なし。

それでも、有名なトレイルなため、元気な20代、経験ある30代、トレイル初心者の高齢者まで歩く人はさまざま。家族連れもいましたが、わたしが歩いた8月中旬は20代後半から30代のカップルから50代のハイキング仲間が多かったかなと。多くは欧州各国、もしくはフランス本土からの人が多かったです。

言語

トレイル上の山小屋スタッフは英語ペラペラです。また、多くの歩行者と話すのも英語で問題ないでしょう。一方で、毎晩テン場で仲良くなっていくと、どうしてもフランス語話者と英語話者とグループにわかれていきます。フランス語できるとより友達づくりもしやすく、楽しいかなと。

どのシーズンに行くべき?

ハイシーズン(6月〜9月)

初夏から初秋6月から9月が推奨シーズンで、7〜8月がピークで最も混み合うそう。この時期は、日も長く山小屋も営業しており、天気も比較的安定して歩きやすい代わりに、若干混雑する可能性も。

  • 大きなメリットとしては、トレイル以外でも海や川など他のアクティビティが楽しめること。万が一、怪我をして下山することになっても、ビーチでのんびりしたり、カヌーで川下りなど夏を満喫できます。

  • 一人で歩く身としては、トレイル上でひとりにならないのは心強かったです。実際に、熱中症の歩行者が出た際には、他の歩行者が水を分けあったり助けを呼びに行ったりと、サポートし合う姿を目撃してだいぶ安心しました。

  • 山小屋で食傷補給ができるため、食糧をほとんど持たなくてよくだいぶ軽量化できます。

オフシーズン(10月〜3月)

10月〜3月は山小屋は無人にはなるが、出入り宿泊は可能。残雪、防寒、食糧の持ち運びを考慮すると装備も増えます。人混みを避けたい場合はシーズンを外すのもありかもしれません。また、チャレンジングなトレイル歩きを求めている方にはおすすめかも。

ルート

トレイルのアクセス方法は、どのようにトレイルを歩くかによって様々です。

北→南 VS 南→北

ほとんどの人はトレイルを北から南へ歩きます。また、トレイルはざっくり北部と南部にわかれていて、北部の方が岩場が多く難しいとされている一方、人気なのも北部です。北部だけ(CalenzanaからVizzavonna)歩くという人も多いです。

わたしは、北から南へ北部だけ歩きました。トレイルは16のステージに分かれており、北部は大体の人が1日1ステージ歩く人が多い気がします。とくに最初の数日は足慣らしもかねて、余裕をもった工程で行く人が多くみられました。後半になると、1日2ステージ歩く人も。

また、必ずしもCalenzanaから歩く必要はありません。しかし、王道ルートのCalenzanaから歩く場合は、Calvi

バリエーションルート

ほぼマイステージ、下山できるルートがあります。途中怪我や体力的にきつくなり、下山している人もいました。そういった意味では安心です。また、時間に制約がある場合は、好きなセクションだけを選んで歩くことも簡単にできます。

コルシカ島といえば、GR20のイメージが強いですが、ほかにも多くのルートがあります。なので、GR20にこだわらず、選ぶのありだなあと。

Corsica for Hikersのサイトより

アクセス

 コルシカ島へのアクセス(飛行機、フェリー)

コルシカ島自体には、飛行機またはフェリーでアクセスすることができます。アジャクシオ、バスティア、カルヴィ、フィガリなど、異なる都市に空港がありますが、王道のCalenzanaから南方向へ歩く場合は、カルヴィに飛行機またはフェリーで向かうことをおすすめします。

島内の移動(電車、バス、相乗りTaxi、レンタカー)

一応電車やバスもありますが、本数が少ないです。Calviの空港からトレイルの出発点Calenzanaには1日2本のバスがでていますが、ピークシーズンではハイカーの人も多いため、Navetteという相乗りタクシーを割り勘するのも選択肢です。

トレイル歩きだけでなく、ビーチやキャニオンなどいろいろ巡りたい人はレンタカー必須です。電気自動車が主流みたいで、充電所もたくさんあります。レンタル代もそんなに高くありません。国際免許があると便利です。(右通行です)

わたしはトータルで2週間コルシカ島に滞在し、最初の1週間岩登りをメインにしていた時はレンタカーを借りましたが、後半は車がありませんでした。そんな時は。。。

ヒッチハイク

コルシカ島ではわりと主流です。ヒッチハイカーも拾いましたし、わたしもヒッチハイクしました。わりと簡単にできます。おすすめです。

歩行者、どんな人に出会った?誰におすすめ?

国籍、年齢層

自分が20代後半なのもあって、同じく20代後半から30代中盤、とくにカップルが多いなと感じました。スイスに住むイタリア人カップルと何回かすれ違ううちに、とても良い友達になったり。スウェーデンからきていた40代男性3人組。友達2、3、4人組も多かったかなと。

同じく一人で歩いている人もいましたが、ソロハイカー同志でグループを作って一緒に歩いている人もいたり。

家族でハイキングしている人もいたり、実家に子供あずけて2週間夫婦で歩いている人も。総じて言えることは、日本よりも年齢層は幅広く、若い世代にも人気があります。

ほとんどが欧州周辺各国、またはフランス本土から来ているひとが多かったかな。

トレイル歩き初心者にもおすすめ?

難易度が高いトレイルとして有名ですが、身体の関節へのダメージは大きいものの、山歩きという意味では初心者にフレンドリーなルートかなと個人的には思いました。また、ルート上には赤と白のマーキングが10m間隔くらいでされており、遭難するのはほぼ不可能だと思います。エスケープルートもたくさんあり、水や食糧の確保もシーズン中は特にしやすいので、とても歩きやすいトレイルではあると思います。とくに、初めて海外、初めて一人、なんて人にもおすすめかも。

体験談

6日間の行程はKomootという日本でいうYAMAPみたいなサイトにまとめました。

また、もっと個人的な感想文的なのは別途まとめました↓

おすすめリソース

電波が悪いため、紙の地図または携帯でオフラインマップをダウンロードすることをおすすめします。

アプリ

  • Komoot(日本のヤマップみたいなアプリ)わたしはほとんどこれに頼りました。数限定で無料でオフラインのマップをダウンロードできます。

  • Maps.me:Komootを使う前は海外登山はほぼこれを使っていました。無料で無限にオフラインをダウンロードできます。

  • Googleマップ(衛星マップが便利です)指定範囲をダウンロードできます。

  • GR20 app:有料アプリです。水場、テン場、リアルタイムの天気予報も見れます。個人的にはあまり使いませんでしたが、使ってる人もいました。

  • Trekking the GR20 Corsica by Paddy Dillon (kindle):  英語ですが、ルートの詳細説明が書かれています。これを携帯のKindleアプリに入れて、毎晩次の日の行程をチェックしてました。宿泊施設のオプション、電話番号、バリエーションルートなども書かれていて、とても参考になりました!

ウェブサイト

  • Corsica for Hikers: このサイトは見た目は微妙ですが、役にたちました。

最後に

内容はかぶりますが、英語のブログにもまとめました。参考になると幸いです。

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