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欧州トレイルGR20を歩いてみた【1】

この夏、地中海にあるコルシカ島を横断する有名なトレイルGR20を一人で歩いてきた(北半分だけ)これはその感想文(1)。

準備・計画や詳しいロジスティックスは別途に書きました↓


【1日目】Calenzana — Refuge de l'Ortu di u Piobbu

1日目

この日、コルシカ島の北東Bastia近辺で友人と別れ、わたしはひとりで電車の駅に向かった。友人はスペインへ、わたしはあと1週間コルシカ島に残ってGR20を歩くことにしたのはつい数日前。さっそく、ガイドブック(3000円)を携帯のKindle内で購入し、トレイルについて調べる。1週間だと、北部もしくは南部の両方は歩けそうにない。選ばなければ。北部は若干行程も長く、難易度も高いので有名だが、景色も良いときく。

悩んでいると、フランス人カップルが電車の駅に大きなバックパックを背負ってやってきた。話しかけるとGR20を歩くとのこと。

「これからCalenzanaにむかのよ。あなたは?」

気づいたら、わたしもCalenzanaに向かいますってことになっていた。チケットは13ユーロ。そのまま、わたしは北端のスタート地Calenzanaに向かう電車に乗った。Bastiaの空港近くの電車の駅からCalviまでは約2時間半。島内の山域を通り抜けると、窓の外は青いビーチが広がっていた。電車の中で、一応行程の大雑把な計画をたて、山小屋もオンラインで予約した。ガイドブックに予約必須と書かれていたが、天気予報も良かったため最悪シュラフのみで夜を過ごそう、なんて考えていた。一応、知り合いに計画とトレイルを歩く旨を伝える。

計画V1.0

Calviは空港もある港町。日差しが強く、とにかく暑い。ついたのはすでにお昼すぎ。ここからCalenzanaまではバスで30分ほどだが、バスは1日に2本しかでていない模様。ラッキーなことに1時15分のバスまで45分ほどの時間の余裕があった。バスのチケットを9ユーロほどで買い、近くのスーパーで買い出しへ。大きなオートミールの袋(朝ごはん用)とシリアルバーを何本か購入した。Boulangerieでピザパンを購入して昼食もすます。現金もATMで300ユーロほど引き落とした。

バスを待っていると、トレイルを歩き切り、帰り途中のドイツ人男性が話しかけてきた。

「そんな靴で大丈夫?」

まさかトレイルを歩くことになろうと思っていなかった私は、自分の穴の空いているトレランシューズを見下ろしながら不安になった。となりのノルウェー人男性も、6ステージ目で膝関節を痛めリタイヤした模様。不安がさらに増す。

CalviからCalenzanaに向かうバスの中

Calenzanaまではバスであっという間。そこで、フランス人カップルとは別れを告げた。ふたりは次の日の朝から行動開始とのこと。

わたしは、1週間弱しかないため焦っていた。今日歩き始めなければ。

自然公園のホームページには昼過ぎからの行動開始はやめましょう、なんて書いてあったがそれを無視してわたしはトレイルヘッドへと一人歩くことにした。

馬鹿だった。

Calenzanaの町のなか。赤と白の目印がGR20のマーカー

歩き出したのは午後2時過ぎ。ガイドブックには宿まで6時間半行程と書いてあったから、日の入りの8時半にはギリ間に合うだろう、最悪ヘッドランプ行動しよう、そんな風に思っていた。

登りは緩やかで、目印もわかりやすく、歩きやすい道。しかし、日差しが強い。強すぎる。日陰が全くない。そして、人気なトレイルのピークシーズンにも関わらず人の気が全くない。30分歩いたところで暑さにまいりそうになった。引き返そうとも考えた。気持ち悪くなったら引き返そう、無理はするのはやめよう、そんなふうに自分に言い聞かせながら、前に進んだ。

1時間も歩かないうちに水場があったので、頭から水をかぶり、タオルを濡らして首元に当てた。日焼けどめが落ちようが、もうどうでも良かった。

あああ、なんて馬鹿なことしてるのだろう。

遠くに海が見える

数時間進むと、少し木陰が見えてきたと思ったら岩場と鎖場がすでに始まった。こういうときに、一人で歩くのは心寂しいものがある。岩場のときに、「ストック持ってて」とか頼めない。ストックをいちいちしまわなくてはいけない。

それまでの1週間、友人と常に一緒だったせいか一人が寂しくも感じた。慣れるのには時間がかかるのかしら。

そこからは、長く感じた。前日あまり睡眠も取れていなかったのもあり、疲労の蓄積も感じた(睡眠って大切だね)

午後7時半をまわって、ようやく最初のテント場が見えてきた。人の声がする。ワクワクしてきた。安心すると同時に、これからの1週間が不安になった。

テント場に近づくと、小屋のガーディアンが出てきて手を降っている。

「おおーい、遅かったね。大丈夫か?」

わたしは、まさか午後の2時に歩き出した馬鹿であることを認めることもできず、ごまごまと適当なことをいい、宿泊費を払った。最初の二日は予約していなかったが、ラッキーなことに貸し出し用テントが空いていた。

貸し出しテントの列

友達には安否連絡をするなんて伝えていたけど、もちろん電波は通じず。眠気がいっきに襲ってきた。

テントから見える夕日

聞こえるのはほぼフランス語で、たまにイタリア語や英語が聞こえるくらいだった。

【2日目】Refuge de l'Ortu di u Piobbu — Refuge de Carozzu

2日目

2日目の朝、4時に目覚めた。ゆっくり起きて朝日を待ちながらストレッチ。

起きて水場に行くと、

「おお、昨日Calenzanaからのバスに乗ってた子だよね?いつ歩いてきたの?」

と話しかけられた。

Source=飲める水

「俺たちもあのバス乗ってたんだよ、覚えてる?いやあ、暑かったよね。夜歩いてきたの?俺たちは午後歩いたけど死ぬかと思ったよ、二度とごめんだね。だから今日は早く起きたよ笑」

馬鹿はわたしだけでなかった。
みんな無事で良かった。

そんなたわいもない会話をしながら進む。眠い。

6時半に行動開始。

テントでは意外とぐっすり眠れたが、体がまだ寝ぼけている。歩き出して30分ほどで、穴に足を突っ込み、変な音がした。

あああ。やってしまった。

昔から捻挫癖のあるわたしは、捻挫してももはやあせらないが、今回ばかりは冷や汗をかいた。結構痛い。しばらく様子見よう。まだ二日目なのになぜ。ルート変更するか。馬鹿かああああ。

トレイルを避け、しばらく放心状態だった。結構痛いのだ。せっかく念願のコルシカ島に来たのに、ここまでか?ああ(涙)

とりあえず、持ってきたキネシオテープでテーピングをすることに。久しく捻挫していなかったため、テーピングの仕方が思い出せない。こうだったっけ。なんという準備不足。

情けない気持ちに溢れながら、とりあえず固定して、足グビに体重を乗せてみる。いけるかな。いけそうやな。

痛めどめを飲み、とりあえず前に進むことに。痛みはあるが、気をつけて歩けば問題なさそう。

岩岩かん、伝わるかな

たったの8km弱なのに、足首もあって下るのに永遠と時間がかかった。

途中、スイスに住むイタリア人カップルとスウェーデン人3人組と何回かすれ違って仲良くなった。イタリア人カップルのLとEは同世代のエンジニアと栄養士。イタリアアクセントが最高に愉快で痛みも吹っ飛んだ。

スウェーデン人3人組もとても愉快な仲間。前年は、筏を一から作って、それに乗って川下りしたらしい。スウェーデンでは伝統的な風習で、今ではエコツーリズムとして人気なんだとか。毎年、何かしらのアドベンチャーをする歳も違う仲間、素敵。3人ともキャラが違いすぎて吹き出しそうになる。

なんだかんだ話をしていると、あっという間に二日目の目的地であるRefuge de Carozzuに到着した。

シャワーは冷たい水しか出なかったが、冷たくて逆に気持ちが良かった。濡れたタオルもすぐ乾くほど、日差しが強い。ここで、ドライアプリコットなどの行程中のおやつを購入。夕飯もせっかくなので予約した。一人20ユーロで一応3コースメニューらしい(さすがフランス)

借りたテント

小屋のテラスで休んでいると、青年が黙々と一人トランプをしている。

「このゲームは終わりがないんだよ」

どうやら、今朝Calenzanaから歩き出して、わたしが二日かけて歩いた行程を半日で歩いたのだとか。ロンドンに住むN、君は化け物か。

「普段からトレイル走ったりするの、好きなんだ。それに、このあとサルディニアに行かなきゃいけないから、土曜までにVizzavonnaに着かなきゃいけないんだよ。」

なんていいながら、Patienceという一人トランプゲームを永遠にやっているNであった。暇だったので、話は恋バナへ、なんてね。もう二度と出会わないと思うと、超絶プライベートな話もスラスラできちゃったりするものだから、不思議である。

歩き終わったハイカー、小屋のテラスで休む

夕飯を待っていると、

ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおお

そして、ものすごい風が吹いたかと思うとヘリコプターが現れた。救急ヘリだ。だれかが怪我をしたらしい。

※歩く前に、登山保険加入と救急の番号(112)は忘れずに!わたしはドイツアルペン協会に加入しております。

野菜スープ、パスタ、くりのケーキの3コースメニュー、おかわりあり。

食べすぎた。夕食はちょっぴり高いけど、友達づくりには最高だ。この日は20代のオランダ人2人組2組と、おしゃべりした。わたしもカップルで来たーーーーい!彼氏と山行きたいー!と若干かなり羨ましくなる。

夕食後はスウェーデン人とトランプ遊び。Shit-manというゲームを教えてもらった。大富豪に似てる。

そのあとは、

爆睡。

捻挫以外は良い日であった。

【続く】↓

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