耳の聞こえない人とカラオケに行った話
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こにちはぬん。ベビだす。
昨日は体調不良のため薬を飲んでベッドでゴロゴロしながら音楽などを聴いていました。その時に、
「そういえばかなり昔に、耳が聞こえない人とカラオケ行ったなあ」
と思い出したので今回はその話です。
■友人「恋人出来たの!耳が聞こえないんだけど」
かなり昔の話で、10年以上前になります。
ある日、友人から連絡が入ったんです。恋人が出来たと嬉しそうに。
(その友人とは残念なことに引っ越しを繰り返すうちに交流が途絶えてしまいました)
友人が、恋人を紹介したいので一緒に遊ばないかと誘ってくれたんですね。
こういうの、嬉しいじゃないですか。
自分の友人が、その大事な人をわざわざ自分に会わせてくれるって、嬉しいですよね。
こちらまで嬉しくなって、もちろん!楽しみ!会いたい!とすぐ返事しました。すぐに友人から返信が。
「耳が聞こえない人なんだけど、唇とかある程度読めるから(^▽^)/」
おそらく友人は前もって伝えておかないと、当日にこちらがそれを知る事はびっくりすると思ったのでしょう。
たしかに、連絡を聞いたときは正直、多少の驚きはありました。
けれどそれよりも、友人が嬉しそうに報告する新恋人との対面にワクワクする気持ちの方が大きかったんですよね。
わたしは手話のたった一つも調べず、覚えたりせず、いつもの感じで約束の日に友人宅へ会いに行きました。
■「聞こえない恋人」に「付き添わない」友人
友人宅にいくと、友人とその新恋人が笑顔で迎えてくれました。
ここで嬉しかったのは、友人が、
【耳の聞こえない恋人とわたしに絶えず付き添うわけではなく、「ご自由に会話してください」とばかりに二人きりにしてくれたこと】でした。
友人は恋人とわたしが上手くやり取りできるかなど気にせず、お茶を淹れに行って席を外したり、ちょっとパソコンのメール見てくる、ちょっとそこのコンビニにお菓子買いに行ってくると席を外したり、いい具合に放置してくれたんです。
シチュエーションやその人の性格にもよるとは思いますが、「コミュニケーション大丈夫だろうか?」と常にやり取りに付き添われるよりも自然にコミュニケーション出来ました。
むしろ友人がいない間に好きな漫画が被っていたことを発見し(しかもほとんどの人が知らないマイナーなやつww)、それがきっかけに盛り上がりましたw
「この漫画知ってる人に初めて会ったああ!!www」
「自分も!!ほとんどの人、この漫画知らないwww」
「このシーンが好きなんよww」
「そう、この動きねww これこれww」
「そう、動きがいいwww」
と、楽しかった記憶があります。
友人の恋人は、完璧ではなくともほぼ聞き取れるくらいの会話を口頭でしており、お互いに聞き取りにくい(or 唇を読みにくい)時は、
「なんて?」とその辺の紙に書いていました。
その答えがあまりに単純だと、それがむしろ
「何でこんな簡単なことがわからなかったんだww」とツボにハマって、二人で馬鹿ウケしたりしていました。
おかしくて紙に書く手も震えるので、「落ち着けww」と紙に書いてそれを見てまた二人で爆笑したり(笑)
わたしが割と人懐っこい性格なので、大丈夫だろうと二人きりで任せてくれた点もあったのかなと思います。
友人がいない間にすっかり親しくなって、次回は共通の友達も交えて遊びに行こうよ!ということで楽しい初対面が終わりました。
■「聞こえない人をカラオケに誘うわけにもいかないし・・・」
そして、無事に初対面が成功し、次回はお互いの共通の友人をもう少し集めてみんなで遊ぼうという話になりました。
各自の予定の都合もついたところで、共通の友人からわたしに連絡がありました。
「どこに遊びに行くのがいいと思う?聞こえない人をカラオケに誘うわけにもいかないし・・・」
わたしはハッとしました。
そうか、聞こえないということは出かけて楽しむものも違うのだな。
聞こえなくとも会話はできますが、音楽となると別のような気がしました。
カラオケという場では友人の恋人は「聞く」しかできないし、その「聞く」ができない。
外で遊ぶとなると、結構考えないといけない点があるのかもしれないと初めて実感した瞬間でした。
結局当日は、ショッピングなどぶらぶらしようという計画になりました。
■「生まれて初めて、カラオケに誘ってもらえた。嬉しかった」
そして共通の友人も含めて、みんなで遊ぶ約束の日になりました。
予定通り街をぶらぶらして、たまにお茶を飲んだり、夕飯近くなるとご飯を食べました。
そして、当然のように「そこでネタが尽きた」のです。
友人もその恋人も、わたしたちも、とても楽しくて「ここでお開きにはしたくないなあ」とみんなが思っているのが丸わかりなムードです。
しかし、いかんせんネタがない。
友人の恋人がわたしに、
「琥珀ベイビーは夜遊びに行くときはどんなところに行くの?」
と振ってくれました。
わたしはカラオケが好きだったので、夕方以降に友人と遊ぶときなどはカラオケが多く、その場にいた他の友人も同じです。
その時、共通の友人が「耳が聞こえない人をカラオケに誘うわけにもいかないし・・・」と事前に言っていたことが頭をよぎりましたが、わたしは言ってしまったのです。
「夜はカラオケとか行く事が多いよ!今から行く!?(^▽^)」と。
共通の友人は一瞬「えっ」という顔になりましたが、友人の恋人はこれを聞いて急にテンションが爆上がり。
「行こう!行きたい!どんな歌を歌うのかな~楽しみ!」
念のためこそっと、友人に「いいかな?」と聞くと、「もちろん!」とニコニコしてくれていたので、ならばいざ!カラオケじゃあー!!
耳が聞こえないその方は1曲も歌いませんでしたが、みんなが選曲したカラオケの画面で歌詞を見て、またみんなの口の動きや伝わる振動から曲の雰囲気を感じて、
「いい曲だね~~(*‘ω‘ *)」
「この歌、イイ!凄く好き!!」
など輪に入って楽しんでくれていました。
勿論、こちらに気を遣わせないようにそうしてくれた部分もあったとは思います。
そしてカラオケも終わり、ではお開きにして解散しましょうというとき、友人の恋人がわたしをツンツンとつつき、声をかけてきました。
振り返ると満面の笑みです。
そしてわたしに、こう言いました。
「カラオケに誘ってくれて嬉しかった。
耳が聞こえないから、カラオケに誘ってもらうことが無かった。
家族としか行ったことがなかった。
生まれて初めて、家族以外の人とカラオケに来ることが出来た。
本当に楽しかった。有難う」
突然の感謝の言葉に、こちらがビックリしました。
驚きつつも、「うん!わたしも楽しかったよ!また来ようね!(^▽^)」と返して、お互いの心に何かホクホクしたものを見つつ、家路に着きました。
そんなことをふと思い出したので、書いてみました。
色んな状況とか、それにかかわる人の性格なども大いにあると思います。
ですので、聞こえない人の全てがそう望むわけではないでしょう。(当然、書くまでもありませんが)
けれどあの時の友人の恋人は、確かに喜んで、感動してくれた。
「カラオケに誘われた」ということに、感動してくれた。
カラオケ店から出たあとの、友人の恋人の嬉しそうな満面の笑顔と、あの時貰った言葉を思い出すと、今でもたまに胸が熱くなるベビでした。
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