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職員室の心理的安全性

はじめにー心理的安全性の定義ー

 数年前から「心理的安全性」という言葉が注目されてきたように思います。書店にいくと、今でも「心理的安全性」という言葉がつく本が平積みされています。心理的安全性とは、下記のように定義されています。

チームの中で,対人関係上のリスクを伴う行動をとったとしても安全であるという信念が共有された状態

エドモンドソン (2021)『 恐れのない組織:「心理的安全性」が学習・ イノベーション・成長をもたらす』 英治出版

心理的安全性のある職員室

 これを職員室にあてはめてみると、職員室内で自分の意見や気持ちを遠慮することなく伝え合うことができる雰囲気があって、先生方に素直に助けを求める,自身の失敗を認める、疑問を表明するといった行動に対し,他の先生から拒絶や制裁を受けることはないと信じられる場合に、その職員室には心理的安全性があると言えます。
 さて、皆さんの職員室はいかがでしょうか。自信をもって、「私の学校の職員室には心理的安全性がある!」と言える方はどの程度いらっしゃるでしょうか? 以前の私の職場は、校長先生が心理的安全性を大事にした学校経営を行うと明言されていました。心理的安全性という言葉が職員の共通目標のようになっていました。かなり心理的安全性が担保された職員室だったように思います。
 一方で、他の学校の先生の話を聞く限り、心理的安全性がある職員室というのは思っているよりも少ないといった印象を受けます。

我が家の本棚にも心理的安全性に関する本が何冊かあります。

心理的安全性を感じられるための4つの因子 

 心理的安全性を感じられるためには、4つの因子が関連してきます。

日本の組織では、①話やすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎の4つの因子があるとき、心理的安全性が感じられる

石井遼介(2020)『心理的安全性のつくりかた』日本能率マネジメントセンター

 校長や副校長、教頭といったいわゆる管理職の先生方の言動が大切とよく言われます。現在、多くの自治体の管理職研修において心理的安全性に関連するような職場づくりの研修(学校マネジメント研修)が行われています。意識的、無意識的に関わらず、管理職の先生は心理的安全性を担保するような行いをしているはずです。
 現実的には、職員室の心理的安全性を作り出すキーパーソンとしてミドルリーダーと呼ばれる層の先生方が重要な役割を担います。学校の場合、学年主任や分掌主任の方をイメージしていただければ良いでしょうか。これらの先生が、①〜④を意識した行いができるかどうかで、職員室の心理的安全性が担保されるかどうかに大きな影響が出ます。

「新奇歓迎」が難しい 

 ①〜③についてはイメージしやすく、また行動にも移しやすいと思います。個人的には④の新奇歓迎が難しいのではないかと考えています。
 新しく赴任した先生方の意見を聞く土壌はできているでしょうか?最初は新しい職場に慣れてもらうために、多くの先生が新しく来た先生と細かくコミュニケーションをとっていくと思います。そのコミュニケーションの目的が「うちの職場のやり方を覚えてもらう」ということだけに終始しているのなら黄色信号です。「何か違和感があるところはありませんか?ちなみに私は、赴任してきた当初○○の行事の必要性に疑問がありました」「大学で学んだことをどうやったら発揮できそうですか?遠慮しないで教えてください」などと積極的に新しく赴任してきた先生の意見を聞いた上で、その意見を可能な限り生かすようにします。
 これは、「私を大切にしてくれている。自分の意見を聞いてくれる」と少しでも新しくきた先生に感じてもらいたいという意図もあります。
 新しく赴任した先生の意見や考えというのは、凝り固まった組織文化に風穴を開ける可能性があります。それを、以前からその職場にいる人の「数の力」で押さえ込んだり、声をあげさせないようにしたりするのは一番の悪手です。
 人間は知らず知らずのうちに変化を恐れるようになります。また、最初疑問に思っていたことでも「ま、こんなもんか」と慣れてしまいます。そのままでは当然組織として硬直化してしまいます。
 職員室だけではなく、学校をより良くしたいと思うなら本気で「新奇歓迎」を大切にしましょう。
 メンタルヘルス関連の本や論文を見ても、新採用者、異動者にかかるストレスはかなり高いことが示されています。バーンアウトする率は異動者が高いことが示されています。この点も「新奇歓迎」という部分を大切にすれば、もしかしたら解決に向かうかも知れません。

おわりに

 数年前、自分が一つのチームをまとめる立場だった時、「新奇歓迎」ができなかったことがあります。今冷静に振り返ると、あの時の自分の言動は、あの先生の心理的安全性を確実に下げていたと思います。それ以降、多くの反省を重ねる中で、改めて心理的安全性の大切さがわかってきました。

先日このようなニュースを見ました。改めて自分達ができることは何かを考えさせられました。学びを実践に繋げなくてはと。

今日は久しぶりの快晴!学習会が予定されていましたが、所用で参加できず・・・残念🌸
皆様良い1日をお過ごしくださいね!

※心理的安全性を土台とした若手教員の成長支援に関する実践論文を昨年書きました。学事出版さんの雑誌「月刊生徒指導4月号」に取り上げていただいております。興味のある方はぜひご覧ください。

 



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