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【院長ブログ】第66回新生児成育学会~ヘルメット治療のこれから~

2022年11月24日~26日の3日間にわたり、横浜市のパシフィコ横浜にて、第66回日本新生児成育医学会学術集会が開催されました。
今回は、当院の患者背景やヘルメット矯正療法における重症度と開始月齢による治療効果について、患者様のデータを共有しながら発表しました。

*日本新生児成育医学会とは
新生児医療の向上、発展をはかるとともに新生児学の研究を促し、新生児医療の充実を通じて、子どもの健康、人権および福祉の向上、さらにこれらを社会へ普及啓発することを目的とする学会です。
【一般社団法人 日本新生児成育医学会】
https://jsnhd.or.jp/
 
演題発表後の質疑応答では、ありがたいことに全国各地から来られた先生方よりさまざまなご質問をいただき、大変充実した時間となりました。寄せられたご質問の中に、皆さんにも関心を持っていただけるような内容がありましたので、ここからはその一部をご紹介したいと思います。
 
①専門クリニックを受診するかどうかについて、どのように判断すればよいですか?
頭蓋変形だけでなく左右の耳介の位置もずれている場合は、頭にゆがみの程度は軽度ではなく、中程度~重度以上であると考えられますので、専門クリニックを受診していただきたいと思います。また、診療室でも使えるクラニオメーターというノギスの様な簡単な計測器を使って頭のゆがみを測定し、判断するという方法もあります。計測器がなくても、ヘルメット作製会社のジャパンメデイカルカンパニー社が提供していて無料でダウンロードできる「赤ちゃん頭のかたち測定」というアプリを使っていただくと、どなたでも簡単に頭のゆがみを数値として見える化できますので、受診するかどうかのひとつの目安としていただけると思います。
当院は紹介状がなくても受診できますので、患者様とそのご家族が少しでも不安を感じるようであれば、ぜひ気軽にご相談ください。
 
②自然に頭のゆがみがなくなる場合もありますか?
赤ちゃんが成長するにつれ、頭のゆがみは自然になくなるのではないかと考える方は多くいらっしゃいます。軽度のゆがみの場合は自然に改善していくケースもあるかもしれませんが、重度の場合ではゆがみが残ってしまいます。「自然に治るから大丈夫だろう」とそのままにして、ゆがみが治りにくい月齢になってしまうということを防ぐためにも、早めにご相談いただければと思います。
 
③赤ちゃんの頭部の3Dスキャン検査はどのようなものですか?
ヘルメット治療の適応を判断するためには、頭蓋変形の診断や重症度の診断が必要になります。当院では視診・触診だけでなく、頭の形状を計測・解析して客観的な解析数値も参考にしており、正確な計測には頭蓋顔面全体の3Dスキャン検査が必要になります。
当院の最新3Dスキャナーは、頭の左右・前後・上方の5方向から10台のカメラで頭部全体を撮影します。撮影時間はたったの0.3秒で、一般的なカメラでの撮影のように一瞬で撮影が終わりますので、静止が難しい乳児でも問題なく撮影が可能です。
 
ヘルメット治療のこれから 
多くの先生方からご質問いただき、医療の現場でも頭のゆがみやヘルメット治療への関心が高まっていると実感しました。その一方で、改めて浮き彫りになった課題もあります。
まず、現時点では、「頭のゆがみ」について、スクリーニングの標準手順が確立されていません。適切な治療開始時期は原則として6~8か月以内という、有効な治療時期が限られる治療ですので、今後は適切な時期に治療介入できるよう、1か月検診に、「頭のゆがみ」についてのチェック項目を追加するのが望ましいと考えています。
また、ヘルメット治療は保険適用ではないため高額であることも、治療普及への妨げとなっているといえるでしょう。保険が適用されれば、より多くの患者様に治療を届けることができますので、こちらも実現に向けてはたらきかけていきたいところです。
いずれの課題も、まずは医療者が正しい知識を持つことが解決への大きな一歩となりますので、引き続き、専門クリニックとして、赤ちゃんの頭のゆがみに対する正しい医学的な知識を啓蒙していきたいと思っています。

東京クリニック 医院長 田中一郎