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【院長ブログ】第40回日本頭蓋顎顔面外科学会での学会発表~赤ちゃんの頭のかたちの診療の受け皿として~

2022年11月17日・18日、名古屋市のウインクあいち(愛知県産業労働センター)にて、第40回日本頭蓋顎顔面外科学会が開催されました。
今回は、「頭蓋形状矯正ヘルメット治療の専門クリニックの患者背景」について、2021年3月から2022年3月の1年間に当院を初診した1735名の患者様のデータを解析し、データを共有しながら発表を行いました。
 
*日本頭蓋顎顔面外科学会とは
顔面とその近接する頭部や頸部などの領域における幅広い疾患に対する集学的な外科治療の進歩、発展に努めていくことを目的として創設され、40年近い歳月をかけて発展を遂げてきた伝統ある学会です。私は本学会の専門医資格を持ち、また評議員として長年に渡り活動してきました。
【一般社団法人 日本頭蓋顎顔面外科学会】
https://www.jscmfs.org/
 
ここからは、今回の発表の一部を共有しながら、当院の患者背景・特徴について皆さんにご紹介したいと思います。
 
首都圏だけでなく全国から来院
東京駅から徒歩5分という立地の当院は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県など首都圏からの患者様が多く来院されました。しかし、日本では、赤ちゃんの頭のゆがみ・ヘルメット治療について専門的な診療を行っている医療機関が少ないということもあり、日本全国から、青森県や大分県といった遠方からも来院される患者様もおられました。
 
早期受診を促すために
当院の特徴のひとつに、紹介状が不要ということが挙げられ、実際に多くの患者様が紹介状なしに来院されました。頭蓋形状矯正ヘルメット療法では、治療効果は頭蓋成長量に大きく影響を受け、そのため有効な治療の開始時期には制限があり、また早い開始により治療効果も大きくなるため、まずは早期受診が大切です。紹介状が無くても、いつでも気軽に受診できるということは、頭の形が気になる赤ちゃんの早期受診を促すと考えられます。
また、赤ちゃんの頭のゆがみの原因のひとつである頭蓋骨縫合早期癒合症は、1万人に3-4人の頻度と非常にまれですが、早期受診によりこの疾患の早期発見にも繋がります。当院では、大学病院やこども病院とも連携しており、頭蓋骨縫合早期癒合症など病的変形が多少でも疑われれば、専門施設での精査をご紹介しております。頭のゆがみに少しでも気になる場合には、お気軽にご相談いただければと思います。
 
ヘルメット治療の開始時期
初診時の月齢については、当院では4、5か月の患者様がもっとも多く、この月齢では受診した患者様の3分の2程度の方がヘルメット治療に進まれました。次に多いのは、6か月、3か月、7か月、8か月の順で、ヘルメット治療の開始適齢時期である生後3~8か月の患者様が殆どであり、これらのうち半分以上の患者様が治療に進みました。
ヘルメット治療は開始時期が早いほど治療の効果が出やすいですが、「自然に治ると言われて待っていたのに、結局治らなかった」と9か月以降に来院され、ゆがみの重症度や頭蓋成長程度より、治療に進む患者様もある程度おられました。
ヘルメット治療は、日本ではまだあまり馴染みがありませんが、今後は少しでも多くの方に「赤ちゃんの頭のゆがみ」について知っていただき、適切な時期に治療介入できるケースが増えることを望んでいます。
 
赤ちゃんの頭のかたちの診療の受け皿として
日本ではヘルメット治療について、まだまだこれからという段階ではありますが、当院では日々の診療のみならず、臨床・基礎研究にも注力し、赤ちゃんの頭のかたちの診療の受け皿として、「いつでもだれでも」相談できるクリニックを目指しています。
ご家族一緒に安心して通院していただくために、土日・祝日も一日中診療を行い、多くの診療枠を確保しており、授乳室やおむつ替え室を設置したり、保育士を配備して、赤ちゃんが受診しやすい環境を作っています。もし、赤ちゃんの頭のかたちについて、些細なことでも気になっていらっしゃるのであれば、気軽に受診いただければと思います。

東京クリニック 院長 田中一郎