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瞼の裏に住んでいた少年
見ることが出来なかった。
それは、物理的にではない。
この目は確かに目の前に映る机と、風に靡くカーテンと、酸味がかったコーヒーと、長らく水をあげ忘れていた観葉植物と、酔っ払った勢いで勝った見たこともないキャラクターの人形と、昨夜食べ残したポテトチップスの残骸と、陽の光に照らされた白い壁を見ている。
でもそれはただ網膜に映っているに過ぎず、見ているのではない。
何一つ、見ることが出来ないのである。
本物の姿を見ることが出来ないのである。
その場合の本当が何を意味するのかはわからないが、なにはともあれ、見ることを諦めなければならない。
静かに目を瞑る。
瞼の裏に何かが映った。
一体僕は何を望み、何を見たことにしているのだろう。
見ていただけたことが、何よりも嬉しいです!