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消失願望とパラドックス(Kの場合)

あと何を無くせばあなたに出会えますか。
どうでもいいことを喋りすぎたこの口ですか。
真実を見ようとしないこの目ですか。
誰かの泣き声を聞かない振りをしたこの耳ですか。
愛してくれた人の温もりを感じられなかったこの肌ですか。
風の運ぶ匂いも感じられないこの鈍感な鼻ですか。
それとも、無力なくせに止めることの出来なかったこの心臓ですか。
この右手が連ねる何かはこのペンのインクとこの紙面を消費するだけの価値を有していますか。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
全て私のせいです。
ごめんなさい。

でも、願ってしまうのです。
次こそはと願ってしまうのです。
次こそはあなたに出会えるかも知れないと、そう願ってしまうのです。

でも、もし仮に、無くすべきはこの望みだとするならば、
今すぐ私を無かったことにして下さい。

見ていただけたことが、何よりも嬉しいです!