兄は筋肉で出来ている

こんにちわ。
LOVE PSYCHEDELICOを聴いていたらふと思い出したので兄のことを書こうかな。

兄はわたしの4歳年上で、背が180センチくらいある。出会う系のハッシュタグを付けるとすれば、#細マッチョ #スポーツ万能 #おしゃれ好き #美味しいもの好き、といったところでしょうか。
いわゆる鬼体育会系です。

わたしは昔から運動や筋肉はダルいものだと認知している。つまりそれらに一切興味がないのでどれくらい凄いのかは知らないけど、スキーの免許とか、スキューバの免許とか持ってるらしい。
空手黒帯。嫁は元国体選手。
わたしはと言えば、50メートルを本気出して11秒で走るし、運動なんか小学校の頃に一瞬習ったダンスのみ。ここだけ聞くとカッコ良さげだけど、実際はピッチピチのスパッツでV6のテイクミーハイヤーを数回踊った記憶しかない。全く活きてない経験。ほんでテイクミーハイヤー。まだ歩かれへん赤ちゃんでもギリ出来るんちゃうかてくらい簡単な足のリズムの。月謝はいくらやったんでしょうね。月払いで足のリズムだけ学ぶのもピチピチのスパッツも全部ダサすぎる。お母さんごめんなさい。こんな気持ちになるなら思い出したくなかったな。

兄が動脈ならわたしは静脈。兄が焼肉ならわたしは冷や奴。兄は運動がすきでわたしは音楽がすき。兄は社交的でわたしは内向的。兄は納豆がすきでセロリが嫌い。わたしはセロリがすきで納豆が嫌い。

NANA風に言うなら、

ねぇお兄ちゃん
お兄ちゃんが
真夏のグラウンドの眩しさを思い出す頃
わたしは
ライブハウスのステージライトを思い出すの
わたしたちは
いつからこんなに

反比例するみたいに
どんどん遠くなって
もう
聞こえないよ

みたいな感じです。
とにかくそんな正反対の兄弟です。

兄の脳みそは筋肉で出来ている。大人になってから竹馬の友を「たけうまのとも!」と大きな声で元気に読んだことや、20kmの距離にある高校を毎日チャリで通ったことが何よりの証拠である。足筋半端ないって。そんなん出来ひんやん普通。友達と遊んでたら下校途中の兄とすれ違い、回転数が早すぎるあまり、チャリでETみたいに飛べるんちゃうか、と思ったことがある。友達も、あれあんたのお兄ちゃん?…早すぎてちょっと分からんかったけど…そう……やんな?って感じでちょっとヒいてた。

わたしは正直昔からあまり兄に興味がないけど、兄はわたしにめちゃくちゃ興味があるらしく、幼稚園の文集には「いもうと」というタイトルでわたしのことを書いていたし、友達にはこの世で一番バグってて面白い異性としてわたしのことを話したりする。
彼が24歳くらいの頃、帰宅後自分の部屋に入る前にまずわたしの部屋に入ってきた、かと思えば、エアーギターの世界大会かと思うくらいの熱量で、弾けもしないわたしのギターをジャンジャカと鳴らし、ご機嫌で部屋に戻っていくのが日課になっていた。筋肉にギターを冒涜されてる感じでほんとに嫌だった。中学生とかだったら非行に走っていた恐れさえある。

そういえば冒頭でLOVE PSYCHEDELICOと書いたけど、何故かというと、わたしが家族が誰も帰ってこない時間にLOVE PSYCHEDELICOのLAST SMILEを爆音で流して武道館ワンマンくらいのノリで熱唱していた時に、当時兄が付き合ってた彼女がひとりで鍵を開け部屋に入ってきて、「なにしてたん…?」と怯えた表情で聞いてきた事件があったからである。
若い男性諸君、実家の合鍵を彼女に渡すのは絶対に辞めてください。若い女性諸君、もし彼氏から実家の合鍵を渡されるようなことがあっても、一人で実家に入るのは辞めましょう。
悲劇しか生みません。

喧嘩した記憶も結構あって、中学高学年くらいになると、わたしも立派な女子なので、兄を見るなり「うざい」兄が話しかけるなり「うざい」と食い気味に乱れ打ちしまくる度にボコボコにしばかれていた。あのまま大人になっていたら知らないひとにしばかれていたかもしれない。うざいって人に言ったら殴られることを教えてくれて有難いな。ある時は小麦粉を焼いたやつに砂糖かけて食べてたらそれ何?と聞かれ、お金が無いくせにデザートを楽しみたい浅ましさがバレるのが恥ずかしく、教えなかったらはよ言えや!!!!と皿を投げられたり。お皿割れてた。お皿かなり寂しそうな顔してた。ほんとに色々ありんした。

とは言えわたしはプロの妹なので、兄からすると、わたしのことが可愛すぎるゆえの愛情表現なのか、子供の頃にシバきまくったことへの反省の意思表示なのか、は分からないけど、今はかなり優しい。
お金がほちいのねんと桃鉄のボンビーばりに甘えたら1万円をくれるし、高熱を出したらおんぶして病院に連れていってくれたこともあった。飲みに行った帰り道でも、わたしが泥酔して靴を何回も投げてはおかんに拾いに行かせ、当然の事ながら最後の方は放置され、おかんは先に帰ってしまい、靴なかったら歩かれへんやん…とそのまま道でふて寝した日も、おんぶで家まで連れて帰ってくれた。おいここで殴るべきだろ。飴と鞭どうなってる。

もうお互い実家を離れて数年経つ訳ですが、兄家に遊びに行ったらわたしが大好きな芋のしゅわしゅわを準備してくれるし、お土産に牛タンのブロック肉をくれたりする。わたしの誕生日にわたしの名前が入った駅で店を開店したり。オイオイ、どうなっちゃってんのぉ~?とわたし自身が思うほどである。ファミコンのロックマンにハマってることを伝えたら、結婚式の席札には手書きのロックマンがいた。

姪が生まれ先日家に遊びに行ったら、「煙草くさ!!!女子の匂いちゃうでお前!くっさ!くぅ~さ!くぅ~さ!!」と言いながらコートにファブリーズを20回くらい噴射された。ファブリーズもビックリしたはず。だってファブリーズ一気に20いくことないやん。人差し指筋肉痛なってまうて。アメリカの警察でもそない乱れ撃ちせんのよ。
そう言えば子供の頃に笑いながら殺虫剤を顔にガンがけされたことがあったっけ。笑いながらて。猟奇的すぎるんよ。猟奇的で筋肉ある奴は怖すぎるんよ。てか子供の頃は殺虫剤のガンがけで、大人になった今はファブリーズガンかけて。伏線回収みたいなことすな。

そんな兄が先週末に初めてわたしの家に遊びに来てくれたんですが、隅々のホコリや冷蔵庫の中まで笑いながら写真を撮られ「今まで行ったどの女子の家より汚いしヤニ臭い、シャンプーボトルの裏がヌルヌルしてて本当にありえない、俺が彼氏やったら2日で別れる、この家の唯一良いところはゲームへの愛が伝わってくるとこだけ」と言われ、着いて早々もう帰りたい、俺の服を外に干してくれ、臭くなる、ほんまに嫌やと駄々を捏ねられました。わたしはポジティブなので2日は付き合ってくれるんや、ゲームの愛分かってくれるんや、と嬉しくなっていた。

飲んでファミコンをしながら色々なことを話したんですが、電話付きの高級車を乗り回していた父の愛情をたっぷり受け、何もかもが叶うお金持ちだったらしい幼少期から一転して貧乏生活が始まったこと、最終的に家賃も払えず夜逃げみたいに引っ越したこと、友達と離れ離れになって寂しかったこと、だからこそ貧乏だけはしたくないと思ってること、父が逃げてる間に黒服の借金取りが来たこと、黒服がまだ若い母に怒鳴って帰らなかったこと、子供ながらに僕が守らなくちゃとこっそり覗いていたことなどを聞かせてくれた。母からはわたしが連絡を取ってない期間も兄は父と連絡を取り続けていたこと、父に何度かお金を貸していたこと、600万くらいの借金の肩代わりを兄がしたこと、などを聞いたけど、兄はその話は完全にカットしてわたしには知らせなかった。多分わたしの中の父親の威厳を守るためで、長男ってすごいなと思いました。背負ってるものが違うくて。ちょっとだけ尊敬してあげる。

そんなこんなで帰る頃には来週も来るわ♪とご機嫌で家を後にした。最初にあんなに文句言うたなら来るなよ。どんだけ楽しかったんだ。兄に興味がないと言いながらこんなに長文を書いてしまった。興味があって尊敬してるのバレバレじゃん。あーあ。もしこれを読んだひとの中で兄に会う機会があるひとが居たとしても、恥ずかしいから絶対秘密にしておいてね。約束ね。

姪が大きくなったら彼の武勇伝を色々教えてあげたいですね。
読んで頂きありがとうございました。


コーラ