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建築学生プロジェクトの新芽が集う夜 - sprout student edition開催レポート

こんにちは!バ・アンド・コー株式会社の本間です。

2014年より開催してきたtoCスタートアップのプレゼンイベント「sprout(スプラウト)」。

今回はスピンオフ企画として、建築系学生による社会実装アイデアのプレゼンイベント「sprout〜プレイステック student edition〜」を3月14日(木)に開催しました。
今日は、そのイベントの様子をお届けします!


sproutとは

「sprout」は、「渋谷からベンチャー・スタートアップを応援する」をコンセプトに、2014年よりco-baが実施しているtoCスタートアップに特化したプレゼンイベントです。

スタートアップのピッチイベントの多くは、投資を得ることや事業提携が目的ですが、特に初期のスタートアップにとってはその企業の「ファン」を獲得し、「ファン」の声をプロダクトやサービスに活かしていくことが重要です。

co-baは過去30回以上に渡り「sprout」を開催し、毎回100名近くの参加者を動員。プロダクトやサービスだけでなく事業に対する想いなどの背景から知ってもらい、スタートアップの「ファン」をつくることに取り組んできまし
た。

▲2017年12月に実施した、sprout2017年総集編の写真

sproutのメインコンテンツは、スタートアップによる10x20=200秒のプレゼンテーション。
10枚のスライドが強制的に20秒毎に切り替わり、合計200秒ぴったりでプレゼンを行います。

スタートアップには、この限られた時間の中でオーディエンス(参加者)を魅了するプレゼンをしていただきます。スタートアップによる全てのプレゼンが終了したら、オーディエンスによるファン投票によって優勝者が決定します!

前回は建築・不動産領域の課題に取り組む「プレイステック領域」にスポットライトを当て、開催しました。

前回のアーカイブ動画はこちら↓


sproutスピンオフ企画「student edition」とは?

今回は特別編として、プレゼンを行う登壇者はスタートアップではなく、
建築学生ならではのアイデアの社会実装を目指す学生チームが登壇。学生たちは一般社団法人ASIBAが運営するインキュベーションプログラム「ASIBA」の1期生7チームがプレゼンを行いました。

事業のファンを創出するというsproutの目的と、インキュベーションプログラムの枠を超え、社会実装アイデア・活動の協力者やファンを増やしていきたいというASIBAの目的が合致。

そして、建築不動産領域を牽引してきた一般社団法人HEAD研究会と3社共催という形で開催しました。

一般社団法人HEAD研究会とは?

一般社団法人HEAD研究会とは、建築にかかわる多様な世代の専門家と次代を担う若手が、21世紀の新たな産業のあり方を探求するべく、この分野において多大な研究業績を重ねてきた松村秀一教授を中心に結集したコミュニティです。建築を中心に、不動産やライフスタイル、エネルギーなどの多領域にわたるその活動は「タスクフォース(TF)」と呼ばれる様々な分科会を主体に展開されています。超高齢社会が到来し、20世紀のスクラップ・アンド・ビルド型開発行為の継続にリアリティを持ち得なくなった今、末広がりな産業的環境をしっかりと形づくり、新しく豊かな生き方に結び付け建築・都市環境形成に力強く貢献することを目的としています。

一般社団法人ASIBAとは?

「建築学生のビジョンと才能を社会に届ける足場として、建築・都市領域を変革するアントレプレナーを育てる。」をコンセプトに、ASIBAは建築学生向けの短期実践型インキュベーションプログラム(12週間)や1DAYワークショップなどを企画・運営しています。建築学生が当事者意識をもって自らの提案を実装できるような環境を整備し、建築・都市領域の可能性の拡張を目指します。

学生たちにエールを送る豪華なゲストコメンテーター陣!

今回は駆け出しの学生チームへ、建築業界で長く経験を持たれる方・スタートアップ界隈に知見のある方に「ゲストコメンテーター」として登壇いただき、様々な視点で学生のプレゼンを見守っていただきました。

ゲストコメンテーターを簡単に紹介します。

当日の基調講演と、ゲストコメンテーターをしていただいた、株式会社アフタヌーンソサエティ 代表取締役 清水義次さん。


スタートアップ向けのプロダクト開発を通じて数々のスタートアップ支援に取り組む、株式会社スマートラウンド 取締役チーフエバンジェリスト冨田阿里さん。

スタートアップとのコラボレーション等に積極的に取り組まれている東急株式会社フューチャー・デザイン・ラボにて社内事業家育成を推進する國枝伸行さん。

以上の3名にゲストコメンテーターを務めていただきました!

当日の様子をレポート

ここからは、当日の写真とともにイベントの様子をレポートしていきます!

開場の18:30から多くの方にお越しいただき、会場はすでに満員状態!

当日の司会は、バ・アンド・コーの荻野とASIBA代表の二瓶さんが担当しました。

“リノベーション・まちづくりの先駆者”清水義次さんによる基調講演“

「創業時の大失敗と小成功ぶっちゃけ大告白!」というタイトルで、清水さんにご講演いただきました。
以前勤められていた会社を42歳で退職され、現在代表を務める株式会社アフターヌーンソサエティを創業。今までの経験を大失敗から、小成功までたっぷりお話いただきました。

最後に、「失敗するのは当たり前。失敗してもまだ生きている」、失敗を重ねることで成功に近づくことができると、また大切なのは好きなことを突き通すことだと、好きや興味をカタチにしている学生へのエールを贈ってらっしゃいました。

講演後には、「なんでも質問してください。」と会場にお声がけがあり、質問タイムがスタート。芸術系の大学に通う学生さんからが手が上がりました。

学生さんからの質問💭
僕が取り組むプロジェクトは、一見多くの人から無駄と思われることもあるんですが、社会に対して発言していくときに僕なりの価値を提示しています。その結果、価値を見出してくれる方もいるのですが…この”価値”について悩むことが多いです。

僕のスタンスとしては、作り手である自分視点の価値を伝えるのではなくて、受け取り手がそのものに触れながら、使いながら価値を見出してもらいたいと思ってるのですが、清水さんはこのスタンスについてどう思われますか?

と等身大の葛藤をぶつけてくれました。

そんな学生さんの質問に対して清水さんは、今のそのスタンスが一番いいと思います、間違いなくしそれでやっていって欲しいと思います。

と学生の後押しになる愛のあるお言葉をかけられていました。

生成AI活用・リユースデザイン・落語世界観の空間演出など、フレッシュな7プロジェクトを紹介

当日は7組のプロジェクトを発表!ここからは7組のプロジェクトをご紹介していきます。
(※尚、以降紹介する登壇者の所属は3月14日時点での情報となります。)

エントリーNo.1
プロジェクト名:NESS

早稲田大学創造理工学部建築学科 森原正希さん
東京大学大学院工学系研究科 須藤望さん

【プロジェクト概要】
NESSは「生成AIのLoRA(追加学習)を用いた、地域性をもとにしたボトムアップデザインの探求」を行うプロジェクトチームです。画像生成AIを用いた建築設計方法や生成AIをコンヴィヴィアルな道具と見立てた新たな建築デザイン手法やまちづくり手法を開発・展開しています。

コメンテーターの國枝さんからは、「最近のまちづくりにおける住民参加型でニーズを吸い上げながら進めていく形の中でも、”本音の言いづらさ”については、大変核心をついていると思いましたし、それをAIが解決する未来についても大変可能性を感じました」とコメントをいただきました。

エントリーNo.2
プロジェクト名:Withvac

東京大学工学部建築学科 宮田龍弥さん
東京大学工学部建築学科 藤間朋久さん

【プロジェクト概要】
センシングによって得られる設備の運転データをAIを用いて高度に解析することで、設備の不具合や非効率な運転を自動で検知し、設備のメンテナンスを効率化・高度化することを目指します。さらには、設備にとどまらない、建築における全てのデータを統合的に扱うプラットフォームをつくり、データ連携による新たな価値創出を図ります。

数々のビル管理もされている東急の國枝さんより、実際にビル設備での社会実装プロジェクトの実現可能性に関わるコメントや、対象のビルは既存のビルにも対応可能なのかといった質問もいただきました。

エントリーNo.3
プロジェクト名:ReLink

明治大学大学院理工学研究科建築・都市学専攻構法計画研研究室の本多栄亮さん

【プロジェクト概要】
Re(リユース)×Link(つなぐ)ことを目指す、ReLinkは建物解体に伴う廃棄物処理の課題に対処し、すでに存在する中古建材販売市場のストック情報とデザインアイデアのデータベースを提供し、中古建材を見つけやすくしながら、空間デザインに繋げたアイデアと合わせて提供することで、共有可能な価値の発見に繋げ、これまで捨てられていた部材と空間デザインのバリューチェーン・サプライチェーン構築を目指します。

コメンテーターの清水さんからは「今回のプロジェクトは、建築材がメインテーマになっていましたが、それ以外にも世の中にたくさん溢れているものがたくさん、山のように捨てられずに困っているものがあると思います。例えば洋服とかですね。そういう意味だと、建築以外にも応用できることがたくさんありそうなので、うまくこの仕組みを生かしていってほしい」というコメントをいただきました。

エントリーNo.4
プロジェクト名:Pochant

東京藝術大学美術学部建築科学部 馬場 悠輔さん

【プロジェクト概要】
大量生産されてきた無個性の箱型建築は、あらゆる物事を受け入れる一方、もちこまれた機能に縛られて、予定調和な空間になってしまっています。建築と人の間に波風を立てる存在を設計し、流動的な空間を提案します。その役割を果たすのが、ある一定の条件を満たした物体、Pochantです。

コメンテーターの皆さんは斬新なアイデアに興味津々!清水さんからは、「自室にも*pocheをおいてみたい」など、実際に活用してみたくなった様子。
また、司会者からも購入できるのかなどの質問があり、「オーダーメイドでpocheの条件に合わせて作れるようになっています」と回答していました。

*注釈 Poche:プロジェクトPochantのプロダクト名

エントリーNo.5
プロジェクト名:COLUB

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 山路湧さん

【プロジェクト概要】
COLUBは「ともに学ぶためのツール」です。読書会を開こうと思ったときの最大のハードルは「始まらないこと」と「続かないこと」です。COLUBは事前準備のいらない独自の読書会スタイルと、簡単にテーマ選定・日程調整ができるツールを提供することで、誰もが気軽に「ともに学ぶ」ことのできる社会を目指します。将来的には、学生間のみならず、背景関係なく集まれる、「都市で集う」をHackする未来を作ろうとしています。

コメンテーターの冨田さんから、「スタートアップ界隈でも有価証券報告書の読み合わせ勉強会等をやっているんですが、結構場所や、時間を合わせるのが難しくて…、勉強会開催の際の日程調整の課題については共感ができたし、すぐにでも利用したい!」とコメントをいただきました。

エントリーNo.6
プロジェクト名:stitch

多摩美術大学大学院美術研究科 デザイン専攻環境デザイン領域 森田靖之さん

【プロジェクト概要】
均質的な社会に対して後発的にデザインをしていくこと、アタッチメントとしてデザインしていくことを都市、建築のスケールで考えてきましたが、構想はできても実装が困難です。家具のリメイクという身近なスケールで実装にチャレンジしていきます。

コメンテーターの國枝さんからは、「ものに溢れている現代だからこそ、長く大切に使っていくこと、それが値段に関係なく実現できそうなので、ぜひ東急でできそうなことがあれば一緒に実現したいと」エールをいただきました。

エントリーNo.7
プロジェクト名:おちば
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 中山亘さん

【プロジェクト概要】
落語の演目から舞台空間や出囃子をデザインし、噺の世界観に没入してしまうようなアーティステックな落語会を実現します。街なかに落ち葉がひらりと舞い落ちるようにして都市に生まれる“落ち”の“場”。洗練された空間演出によって掻き立てられた想像力は、無限の妄想の世界へと観客を誘います。上演演目:『愛宕山』で実際のデザインを紹介します。

コメンテーターの國枝さんからは、どんな場所でこのプロジェクトを実行していくイメージを持っているのかについて質問がありました。

その質問に対して中山さんは、
「仮説的にさまざまな場所で挑戦していきたいと考えていて、屋外や、下町の風景が残る場所など、都市の空間も活用しながらやっていきたいと考えています」と回答していました。

どのプロジェクトも思いのこもった熱量の高いもので、その想いはしっかりと参加者の皆さんにも届いていました。

「どのプロジェクトも可能性を感じた!」ゲストコメンテーターからの熱いエール

全チームのプレゼンが終了。実に多様な領域・課題に取り組む登壇者のプロジェクトに温かくも率直なコメントを送ってくださったゲストコメンテーターの皆さんに、総括コメントをいただきました。

國枝さん

正直学生のみなさんのピッチがどんな感じなのかなと参加する前は思っていたんですが、想像以上にすぐに実装できそうなイメージがあり、大変可能性を感じました。ぜひ東急でも一緒にできることがあればお声がけいただけると嬉しいなと思っています。

冨田さん

普段はベンチャーキャピタルでピッチイベント開催したりしているんですが、一方でそれを行っていて、時代の流れに本当にこれってあってるんだっけ?今までは生産性や利益を追求することが良いこととされてきたけど、果たしてそれで幸せになってるんだっけ?と投資側の人たちも懐疑的になってきている現状を感じている中で、今日のピッチを聞いていて、これから本当に価値が変わってくる転換期なんじゃないかなと感じました。また30年後40年後それを見届けられると考えると嬉しく思うとともに、みなさん本当に「推し」だなと思いました!これからの転換期をリードする人たちだと思っています、応援しています。


清水さん

7チームとも素晴らしかったと思います。とにかく、着眼点も発想の展開も含めて、面白かった。可能性がそれぞれにあると思いました。さらにこの機会を経ての飛躍を願っています。

ゲストコメンテーターの皆さん、熱いメッセージをありがとうございました!

そして、投票している間に、共催の2社からのプレゼンテーションがありました。

一般社団法人HEAD研究会 理事 新堀さん

この研究会をはじめて、12年目になるHEAD研究会は建築と不動産を軸に、集まった個性の集まったメンバーでやってくるなかで、いろんな人と出会える場になっているとお話されていました。
最近新しい事務所もできたので、きてくださいと紹介もいただきました!

一般社団法人ASIBA 代表理事 二瓶さん

今年1月に一般社団法人化したばかりのASIBA。
学生の、好きとか愛とか想い、やりたいと思う気持ちを守りたいし、伸ばしていきたい、背中を推していきたいと考えているという熱い思いからプレゼンが始まりました。
ASIBAは「とりあえず行動してみたい!」という想いを抱く仲間を集めて、一緒に実現する方法を探ることを大切にしたいと、力強いメッセージが伝わってきました。

受賞者は…結果発表

HEAD研究会賞

Pochant
東京藝術大学美術学部建築科学部 馬場 悠輔さん

「君の想像力をじゃんじゃん実現してください、がんばれ!」と、清水さんから熱いエールをいただきました。

「コンセプトを続けながら、いろんな場所で活動を続けていきたいので、応援よろしくお願いします」と受賞者の馬場さんがコメントしていました。

参加者投票で選ばれた優勝者は・・・?!

NESS
早稲田大学創造理工学部建築学科 森原正希さん
東京大学大学院工学系研究科 須藤望さん

「生成AIのLoRA(追加学習)を用いた、地域性をもとにしたボトムアップデザインの探求」プロジェクトに取り組むNESSチームが優勝者に輝きました!
そして、トロフィーは前回の優勝者の前回受賞者のLIFULL ArchiTech株式会社北川さんから授与されました。

北川さんからは「テクノロジーが必ずしもいいとはいえないですが、AIで”ほどよさ”を求めている視点に可能性を感じました。そして、それを若い方々が頑張ってくれている点に感銘を受けました。」とコメントをいただきました。

NESSのお二人は、このプロジェクトは”現在の都市づくりが本当にこれでいいのか”という危機感から生まれたので、今後愛される都市を目指して、サポートできるツールを作っていきたいと今後の展望についてもコメントしました。

さいごに

イベントの最後には、懇親会が開催されました!

学生たちを取り囲んで、発表したプロジェクトに関する協業可能性等のディスカッションも盛り上がった様子で、なかなか興奮冷めやらぬ雰囲気で会場の熱量の高さを感じました!

テーブルごとに学生のプロジェクトを話すことができるように配置。各テーブル大人気で、活発な情報交換が行われていました。

学生たちのプロジェクトの新芽を見届けた参加者のみなさん。
sproutがファンとして学生たちの活動をいろんなカタチで応援していていくきっかけになった夜になりました。

各プロジェクトに関心を持った皆様はぜひ、当日のアーカイブ動画もぜひご覧ください!

co-ba ebisu & HAMMER by co-baの入居者募集中!

今回のsproutの会場でもあるco-ba ebisu & 姉妹店「HAMMER by co-ba」では、現在入居者を募集中です!

最新募集情報の詳細はこちら↓

またco-ba ebisuでは、会員以外の方もご利用可能な2つのイベントスペースをご用意しております。
ご興味のある方はこちらをご覧ください。

運営会社 バ・アンド・コー株式会社とは

2023年11月に株式会社ツクルバの不動産企画デザイン事業を新設分割により事業承継し、創業しました。場づくりの実践を通じ、これからも場と共に在り続ける思いを込めて、社名を「バ・アンド・コー(Ba & Co)」と名付けました。
"つくるだけではなく、ともによりそう"場づくりに関わる全てを企画していきます。
Ba & Co Inc. Webサイト: https://ba-and.co/

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