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きっともう、三日坊主


 エッセイを書くにあたり、とりあえず毎日書いてみようかなんて思っていたがこんなにもわかりやすく三日坊主になるとは思わなかった。
 何か書こうと思いつつ主題がないんだよなとぼんやり思っていたら一日が過ぎた。

 文章を書くのは簡単で面白いが、書いている途中で「今はつまらない展開とつまらない文章だな」と自分で思う時がある。それはしょっちゅう起こる。
 昔、二次創作をしていたときは原作とキャラクターを借りていたので書くのは実に容易で、原作人気に乗っかる形でまあまあの支持と膨大な作品を作った。
 その時の私は5000字ほどの小話を毎日書いており書くスピードと話の思い付きに関してはちょっとした自信があった。
 そんな時、いわゆる二次創作内において”神”と呼べる作家に出会ったのだった。
 簡素なつくりの個人サイト、連絡先はメールアドレスのみでぽつぽつとタイトルが並んでいる。どれどれ、読んでみよう……と読み始め、私は驚愕した。

 これは……なに? これこそ、文学なのではないか?
 もはやこれは谷崎か太宰か芥川か……三島か? とにかく、とにかく、話の作りこみと練り上げ方と描写と、すべてが美しく隙もなく歪みもなく精緻に整えられていた。こんな素晴らしい文章が世の中にあるのだろうかと思ったし、強烈に嫉妬した。
 とてもじゃないが私にはこんな文章は書けない。ふるふると手が震え、圧倒的に打ちのめされた。完膚なきまでに、もう勝ち目がないのは明らかでもはや勝負すらなっていないくらいだった。
 私は興奮し、何度もその話を読み込み、書き手が何を伝えたいのかを掬い上げ丁寧に感想のメールを送った。
 返事が来たときかなり喜んだ。交流を深めていくうちに、書き手は女性で私よりも年下だった。
 私は、文章を書くにはある程度のセンスは必要だが書いていたらなんとなく掴めてくるし、単純で簡単なものでその行為を繰り返していけば身につくものだと思っていた。
 そう思っていたが、違うのだった。
 圧倒的な読書量と語彙の多さ、頭の良さとセンスと才能。日常と物事をつぶさに見て・見分け・描写できる心の柔軟性が必要なのだと知らしめされた。まるきり違う世界に住んでいた彼女を前に、私は完全に白旗を挙げた。

 ということで、私は書いていてつまらない展開だな、よくある書き方だなと思いながらどうにかこうにか文章を書き、読みやすいことは心がけている。
(というより、簡単な文章くらいしか書けない・が正しい)
 あーあ、私にも圧倒的なセンスが欲しい……と思いながら、だいぶさぼりがちだった読書をし、語彙力を伸ばし、ささやかならここでエッセイを書き散らしながら生きていこうと思う。
 とりあえず、三日坊主にはならないように。


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