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日本では生まれないクルマのデザイン

クルマのデザインに関して、最近特にヨーロッパの高級車が非常に個性の強いデザインに変わってきていると思いませんか?

フロントつまり顔のデザインが厳つくて重厚な印象のものが多く、正直ちょっと迫力がありすぎると感じ、日本車にもヴェルファイアのような派手なデザインの車はありますが方向性が違うように思います。

ではなぜこういったデザインが生まれているのか、日本車のデザインとの比較も含め考察してみたいと思います。


BMWの巨大すぎるフロントグリル


BMWはフロントの真ん中に2つに分かれた通称キドニーグリル(キドニー:腎臓)という通気口を昔から設けています。
これがブランドのアイデンティティとして親しまれてきましたが、最近そのグリルが巨大化し続けていて古くからのファンを心配(?)させています。

画像は最高級グレードのi7シリーズですが、もはや顔の半分がグリルという強烈な個性を発揮していて、この顔がバックミラーに映ったら私なら反射的に車間距離を大きく空けると思います。

なぜこんなデザインになったかという点ですが、中国市場でこういった存在感が受けるからだとか、今から100年ほど前のBMWのレースカーのような大きな縦長グリル(昔は冷却のため開口部が大きかった)をモチーフにしたなど、さまざまな説があります。


私の想像ですが、BMWは有名な高級車メーカーですが意外と規模が小さく最新のEV等の技術競争から遅れはじめていて、最新テクノロジー以外の差別化要因としてBMWのスローガンである「駆けぬける歓び」の伝統、つまり往年のレースカーを想起させるデザインを打ち出すことにしたのでしょう。

BMWはミニとロールスロイスという個性的な2つのメーカーを傘下に置いていることからもわかるように、おそらく規模を追うより個性で勝負する方向を目指していて、大衆車ではなく一部のマニアが熱烈に支持するメーカーとして存在するようになるのだろうと思います。


メルセデスの横に広がる口


こちらは最高級車であるメルセデスマイバッハGLS600のデザインです。

フロントマスクの各パーツが非常に大きな迫力を感じられるよう配置されていますが、特に下部は横に広く開口し、しかも左右が大きく開いていて大型の魚類や動物の口を連想させ、私には鯨のように見えます。

欧州人の思う重厚な高級感の表現としてこの形があるんだろうとは思いますが、私のような典型的な日本人の目には巨大すぎて高級というよりふてぶてしさや強欲な感じが伝わってきてしまいます。

しかも同様のデザインは各社の高級車に見られ、つまり欧州では広く支持されているようなのですが、どうしてこういう形がいいんだろう?と考えたとき、ひとつ思い当たることがありました。


それは会話の際、日本人は目を見て話し、ヨーロッパ人(アメリカ人も)は口を見て話すという傾向です。

そのため、日本人は相手の目がよく見えないサングラスを嫌い、ヨーロッパ人は口の動きが見えないマスクを嫌う。

また、アニメや映画でせりふと口の動きが合っていなくても日本人はあまり気にしませんが、ヨーロッパ人はリップシンクと呼ばれる動きと音声の同期に非常にこだわる、という話もあります。

そこから、日本の高級車には目のようなライトのデザインが求められ、欧州では口元のように見える開口部のデザインが求められる、と考えられます。


このレクサスLC500は、ライトが左右だけでなく下方向にも流れている非常に独特なデザインで、日本的な印象を非常に大事にするレクサスブランドらしく「目」のフォルムの美しさにこだわったのではないかと想像します。

トヨタの最高級セダンのセンチュリーもライトが大きく整った形状であり、高級SUVで人気のあるランドクルーザーもライトが目立つデザインのように見え、この説は意外と正しいんじゃないかと感じます。


クルマの多様性


ただ最近は国や地域ごとのクルマの顔の個性が昔ほど強くなく、似たようなデザインになってきています。
テスラもBYD(中国のEVメーカー)も少し違いますが似たようなものです。

車を買う立場からしたら世界の良いデザインが日本にすぐに導入されてほしいとは思いつつ、デザインを楽しむという目線では、繊細すぎる日本車、バカでかいアメ車、美しすぎるイタリア車、合理主義な北欧の車、常識の斜め上を行く中国の車など、個性あふれるクルマがこれからも登場してほしいと思います。





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