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ロックとは熟練の職人がつくる伝統芸能

2022年の紅白歌合戦は皆さんご覧になられたでしょうか。

私は家でながら見をしていましたが、いまだに多くのロック系ミュージシャンが登場しているのを見て意外な気持ちになりました。

さらにロック的な音楽という範疇で考えると、さらに多くの割合を占めていたと思います。
もちろん個別にみればいい曲が多いですし、長年やっているロックバンドの大御所、ベテラン勢の復活やスペシャルなコラボはとても楽しかったです。

しかし世界的に見てもロック系がこれだけ生き残っているのは日本だけのようで、音楽に関して独自の流行を形成しています。
特にヒップホップ・ラップ系とダンス・EDM系がここまでまったく流行らないのは不思議です。


ちなみに私個人の好みでいうと、よく聴く音楽ジャンルに昔からロックは入っていません。

かなり前から洋楽マニアだったので、USのブラックコンテンポラリー、R&B、ヒップホップ、ヨーロッパのテクノ・ドラムンベース・ハウス、ブラジリアンポップ、あと洋楽の影響が強いJ-POPが中心で、ロック系は80年代以前の懐かしいものという位置づけでした。

なので、80年代のバンドブーム、90年代のV系ブーム、それ以降のいわゆるロキノン系バンド(フェス等で活躍するアーティストなど)も、個別にいいものはあっても、ブームとして乗っかった経験はありません。

ということで今回、これだけロック系音楽が根強く支持されている理由について、私なりの考察をお伝えしたいと思います。


音楽に必要な訓練やテクニックの違い


音楽は音なので、音を出す楽器の進化は必ず音楽に反映されていきます。

ご存じの通りロックは、ボーカルとエレキギター・ベース・ドラムスで構成され、そこにキーボードが入るくらいのシンプルな構成です。

ギターは仕組みが非常にアナログで、ドラムも同様ですが、習得に時間がかかる楽器です。
キーボードも要は電子ピアノなので音自体はすぐに出ますが、当然ピアノと同じくらい難しいと思います。

ロックバンドとは、いわば職人がアナログな楽器をいかにうまく鳴らすかの競争といえます。


しかし90年代以降にメジャーとなったラップは、ただ言葉を言えば成立するわけではなく、さらに音程が変わらないため、テンポ感を出すために非常に速く発音したり、韻を踏んだり、言葉の組み合わせを発明したりという工夫が必要です。

よくお笑い芸人さんが曲に合わせて面白いことを叫ぶのもラップだということがあり、それはそれでいいんですが、あれは昔からある「コミックソング」です。

SOUL'd OUT|ウェカピポ

さらにEDMになるとPCでの音楽制作が必須で、アプリを使って流行の音色を選び、魅力的なフレーズを構築し、さらにDJとしてそれらの複数の音源をフロアで楽しめるように瞬時に組み合わせる技術が必要です。

音楽を制作するPCやデジタル音源を扱うDJ機材も、音楽の知識に加えてハードとソフト、さらにデジタル対応楽器の知識が必須で、そういう人を少し知っていますが、もはやエンジニアといっていいレベルです。


属人的な評価傾向の強さ


ここからは私の感覚ですが、音楽を好きな人の多くには、シンプルでわかりやすいロック系ミュージシャンに対する信頼の厚さがあり、逆に何をやっているか一見よくわからないEDM系アーティストやDJに対する信頼の少なさを強く感じます。

そしてその背景には、現代の音楽のバックグラウンドとして必要なテクニックが昔とは大きく変わってきていることが、一般の音楽ファンにほとんど知られていないという現実があると思います。

さらに現在の音楽技術の発達が、ロックバンドのような職人芸を成立させるために必要な鍛錬を否定するように感じる人もいるでしょう。


つまり、何か新しくて凄そうな技術を駆使するよくわからない人より、伝統的な技術を鍛錬によって身につけた職人が好きなのではないでしょうか。

そういった属人的な評価傾向が強いことが、今や伝統芸といえるロックが生き残っている理由のひとつだと私は思います。


最新技術に対する不信感と忌避感


ここまで考察を進めたところであることに気づきました。

伝統で熟練のロックを評価し新しいジャンルを支持しないという態度は、いまだにFAXを信頼して利用し、エクセルの計算結果を計算機で検算させ、電子マネーやマイナンバーへの抵抗を続けるといった、新しい技術への不信感と忌避感によく似ています。

それを、高年齢になれば誰でも変化に対する嫌悪感が生まれ現状維持を求めようとするものだ、という一般的な結論に落とし込むことは可能ですが、もしそうなら、人口の年代別構成比の偏りがその国の文化的な傾向も左右してしまうという、何か悲しい結論が見えてきてしまいます。

別にラップやEDMの支持が増えてほしいわけではありませんが、音楽みたいな趣味的な存在は、聴きなれた伝統的なものへの評価だけではなく、不思議な新しいものも少しでも気になったら、どんどん支持したらもっと楽しいと思います。




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