見出し画像

弁理士業の魅力 勝ってうれしい中間処理業務

こんにちは、弁理士の石川です。今日は、代理人として、勝つと非常にテンションが上がる中間処理業務についてご説明します。(挿絵は、「そうだ、弁理士にお願いしよう」という出願人の様子を示しております。)

「中間処理業務」とは、特許出願、意匠登録出願、或いは商標登録出願において、特許庁から拒絶理由通知を受領した際に、その応答に必要な書類を作成する業務のことです。通常、審査官が指定した期間内に意見書や手続補正書を提出して応答します。

なお、私が最初の特許事務所で、弁理士の補助としてキャリアをスタートしたときは、自ら進んで中間処理をやらせてもらいました。特許出願用の明細書作成の業務では、当初、明細書に何を書けばいいか、全くわからなかったからです。もちろん、弁理士からの指導はありましたが、自分の中で、明細書のスタイルができていなかったのです。

そういう意味では、中間処理業務は、先輩弁理士が作成した明細書を隅から隅まで読むことになるため、自分の明細書のスタイルを確立するのに非常に有用です。以下、本題の中間処理業務の魅力について語ります。

魅力その1 結論までのレスポンスの良さ

中間処理業務の魅力は、ずばり、結論が出るまでのレスポンスの良さです。特許出願であれば、最終的に特許されるか否かの結論が出るまでに、出願から数年を要する場合があります。意匠でも出願から平均7か月、商標でも出願から平均10か月かかります。ところが、出願の中間処理では、応答書類提出日の数週間から数か月以内に結論がでます。私が担当した最短のケースでは、意見書提出後、翌週に結論が出たこともありました。

そして、中間処理で、特許査定が出たり、登録査定が出た場合には、小躍りしたくなるくらい喜ぶのが弁理士というものです。なぜなら、その結果の如何は、出願人との間の応答方針の調整を含めて、大部分が代理人である弁理士の力量によるものなので、うまくいった場合には、喜びもひとしおとなるわけです。次の仕事に弾みがつくと言っていた先生もおられます。我々弁理士は、特許査定・登録査定をもらった瞬間には、正にそのように天にも昇るような気持ちになります(一瞬だけ。すぐに現実に戻ります。)。

特に、厳しかった案件の場合、例えば、一見すると、あまりにも一般的にみえて特許が取れないかもしれないという事前の見立てにも関わらず、何とか先行技術との違いを見出して、苦労して権利化できたような場合には、その苦労も一瞬で吹き飛ぶくらい嬉しいものです。

魅力その2 代理人としての腕の見せ所である点

初めて拒絶理由通知を見た出願人は、「こんな拒絶理由をもらってしまったけど、どうしよう」と途方にくれてしまうこともあります。そのために、我々弁理士が代理人として選任されているわけですが、特許庁審査官と出願人との間に入って、両者の意思疎通を円滑にするのが我々弁理士の最も重要な任務となります。実際に、拒絶理由通知を見ると、我々弁理士が見ても厳しいなあ~と途方に暮れるケースは多々あるわけですが、出願人のためですので、ここはしっかりと良い応答案を検討することになります。

特許庁審査官は、その職責も大きく影響しているかもしれませんが、どちらかというと学者肌の方が多く、我々から見て、ときに結論に至るまでに飛躍的に判断をされる場合があります。「文献1には○○が記載されている。文献2には××が記載されている。文献1に文献2の××を適用することは当業者容易である。さらに、残存する相違点である請求項1発明の△△は、当業者が適宜に設定できる設計的事項である。」のように。

一方、出願人の企業の担当者は、人にもよりますが、どちらかというと現場に近い方が多く、理屈ではなく現実にはこういうもんなんだという、実践に重きを置いていることが多いです。したがって、多くの場合で、審査官側の「組み合わせ容易」という論理と、出願人側の「現実はこうゆうもんなんだ」という現場の実情と、がぶつかり合うことになります。

我々弁理士は、審査官と出願人の間に入り、出願人の意向を汲みつつ、法律知識やこれまでの経験を生かして、審査官の納得できる説明(ストーリー)を考え、出願人に説明を行います。厳しい場合でも、「審査官のいう通り、駄目です」では弁理士の名が泣きますので、そのプライドにかけて、考えうる最高の応答案を絞りだします。出願人の了承が得られれば、応答書類の作成に移ります。

案件が重要案件だったりする場合には、応答書類作成の前に、面接を利用して、審査官とのコミュニケーションを密にとることになります。(審査官面接については、改めて書くつもりです。)

さて、実際の応答書類(意見書、手続補正書)の作成に移るわけですが、ここでは、本願が、如何にすばらしい発明であるかをどれだけ審査官にアピールできるかが勝負の分かれ目となります。また、先行技術と差別化する補正も非常に重要です。(発明のどこを限定して、どこで差別化するのか。)代理人として最も力量を問われる場面であり、弁理士の腕の見せ所です。

そして、出願人も納得するすばらしい応答書類(意見書、手続補正書)ができれば、いよいよ特許庁に提出です。

魅力その3 勝ち負けがはっきりしている点

応答書類の提出後は、良い結論が出るように、ひたすら神様にお祈りする日々を送ります。あの内容で良かったのか、やはりあの反論では駄目だったか、などと悶々とする日々を送ります。

先々週も来なかった。先週もまだ来なかった。今週になってもまだ結論がこないなぁ・・・。もうお願いだからっ、早く結論教えて・・・。

やがて、こちらも忘れたころに、結論がやってきます。

ハッピーエンドであれば、出願人と共に喜びを分かち合います。駄目だった場合には、真摯に現実を受け止めます。勝ち負けがあるのが、代理人の常です。勝ち負けがはっきりしているのも、この仕事の魅力といえば魅力です。中間処理において、グレーはあまりありません。

以上、弁理士業の魅力 中間処理業務について語らせていただきました。これから社会人としてスタートされる学生さんや、技術者の方に、弁理士業に興味を持ってもらえたら幸いです。


弁理士の石川真一のフェイスブック
facebook.com/benrishiishikawa

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?