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弁理士業の魅力 外国関連業務(内外出願)

こんにちは、40代弁理士の石川です。今日は、学生さん又は技術者向けに、弁理士業の魅力として、外国関連業務(内外出願)についてご説明します。

内外出願とは、日本企業が行う、外国の特許庁に対する特許出願、意匠登録出願、商標登録出願等をいいます。日本から外国なので、「内」→「外」となります。逆に外国企業が日本国特許庁に特許等を出願することは、「外」→「内」となるので、外内出願といいます。外内出願については、後日改めて取り上げたいと思います。

近時、「日本市場だけ押さえられればよい」という考えは、ほとんどの企業が取っていません。むしろ、外国に進出しなければ将来はないという考えが主流となっています。このため、特許、意匠、商標の出願も、日本だけでは不十分で、外国へのそれらの出願が必須となってきています。

冒頭の挿絵にあるように、なかでも、中国を中心とするアジア諸国への出願は、近年益々増加する傾向となっています。もちろん、先進国といわれる米国、欧州への出願については、現在でも重要であり、重要度が減少しているということではありません。

弁理士が最も華々しく活躍できるのは、外国関連業務であると思います。弁理士の業務のほとんどは、裏方のような仕事であり、とてもとても地味な役回りが多いです。日陰でひっそりと咲いている花のようです。

ですが、外国代理人との関係になると、いきなりド派手な雰囲気になります。普段のジミ~な仕事ぶりとのギャップがものすごいです。私も当初は圧倒されたものでした。理由を順番に説明します。

前提として、外国特許庁への特許等の出願は、日本国弁理士が行うことができません。したがって、日本企業が外国に出願したい場合には、出願人代理人である日本弁理士から、当該国の弁護士又は弁理士に出願依頼を出すことになります。

現地の弁護士や弁理士と、我々日本弁理士は、どのような関係なのか。一言でいうと、信頼関係で結ばれている関係です。自分たちのクライアントが相手の国に出願する場合には、代理人として力を貸すという関係であり、完全に対等な関係(パートナーシップ)となります。

なので、日ごろから定期的に会ったり、親交のための季節の挨拶レター(クリスマスカードみたいなもの)を交わしたりして、信頼関係を維持することが重要となります。(コロナ禍では、対面は難しいようですが。)

コロナ禍以前の話ですが、大手特許事務所の弁理士は、INTAやAPAAといった弁理士・弁護士の国際的な会合に定期的に参加することで、普段なかなか会えない外国の弁理士・弁護士と面会して、信頼関係を再確認します。相手国に相互に訪問し合うことは大変なので、毎年、弁理士・弁護士が会合の地に集まることで、効率的に20~30か国の弁理士・弁護士と面会することができます。

毎年、地球上のどこか一か所に集まるとはよく考えられたものです。相手が単なるPatent Agent(出願だけをする弁理士)ではなく、Patent Attorney(日本でいう弁理士)だったり、Attorney at law(弁護士)だったりするのも普通です。また、ドイツの代理人は、他の地域に比して、博士号の所持率が異様に高かったりします。

このため、飛行機を乗り継ぎ、場合によっては24時間以上かけて、はるばる地球の裏側から参加する代理人もいます。会話はもちろん、英語で行います。中国、台湾、韓国の代理人は非常に優秀な方(選りすぐりのエリート)が多く、日本の有名大学に国費留学などをした経験があり、たいてい日本語がペラペラだったりします。

INTAのような会合は、100年以上続いていることもあり、その雰囲気は、欧米の社交界のような感じです。(本物の社交界を知らないので、すいませんが、勝手なイメージです。)

多分、歴史的に、欧米の弁理士、弁護士が中心に活動を開始し、その後、アジア諸国、オセアニア、南米等の代理人も徐々に参加し出したという経緯があるのではないか、と勝手に推測します。

なので、当初の欧米の社交界の雰囲気がそのまま引き継がれているんじゃないかな思います。一言でいうと、セレブの集まりです。欧米の女性のドレスも華麗であり、ハリウッドスターのようです。アジアは割と控えめです。さすがに社交ダンスは踊りませんでしたが。

APAA アジア弁理士協会 2017@NZオークランドでの様子
筆者は、下右から2番目

さて、内外出願の話に戻すと、内外出願そのものは、上記した会合とは一転して地味な作業となります。弁理士は、日本に出願した特許等の出願書類を英語に翻訳して、当該国の代理人に出願を依頼します。内外出願では、英訳そのものは翻訳者に依頼することが多いので、弁理士は翻訳された英文をチェックするのが主要な業務となります。注意するのは、訳漏れや誤訳などです。

また、外国の特許庁から拒絶理由が通知された場合には、その応答方針を検討することも重要な業務となります。出願内容は日本と同じでも、外国の特許庁から、思いもよらない拒絶理由を受けることも少なくありません。

現地とのやり取り書面は、英語が多いです。なので、英語力があるに越したことはありません。一方で、英語以外の外国語力が求められることは、まずほとんどありません。

今日は、内外出願についてお話しました。でも、会合のインパクトが強すぎる記事になってしまいましたね。普段の内外出願業務は、重要ですが、地道な作業なので、しょうがないと思います。

普段の弁理士は、日陰でひっそりと咲いています。


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