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夫がくも膜下出血で倒れた話④

こちらの続き。
今回はその後の病状は出てきません。
実家に帰って、子どもたちに事実を伝える話。
※辛くなりそうな人は読むのをお控えくださいね。

実家に着くと、まだ何も知らない子どもたちがいた。
「パパとママはお仕事に行っている」と説明されていたらしい。
目が覚めて両親がおらず、替わりに祖父母が隣に寝ている…
繊細で敏感な6歳娘は、少なくとも何か感じるところはあったはず。


母に食事を用意してもらった。
お腹はすいていたから食べられたような気がする。
その間に、夫の上司や、保育園父母の会の方から、心配いただきたくさんの連絡。その全てに対応した。

「寝てないんでしょ、少し休んだら」と母。
ベッドを借り、目をつむるも、脳が興奮して全く眠れない。

もう少し、必要な人に連絡をしておこう…
夫は職業人と父親として以外にも、たくさん役割を持っていた。
普段からお互いの人間関係などを把握しているのもあり、夫と急に連絡がつかなくなり困る人がたくさんいることも、それが誰であるのかも、概ね予想ができていた。
みんな、すぐに返事をくださった。
夫がどれだけ愛されているか、必要とされているか、わかって、涙が出たり止まったり、忙しかった。

ほんの少し、眠ることができた。

元気な夫はいない。いつもの4人家族ではない。
目が覚めていくうちにその現実が突き付けられた。
夢だったらどれほどよかったか。

「しばらく泊まったら」と母。
子どもたちを再び託し、自宅へ荷物をまとめに一時帰宅。

持ち帰った夫の服も洗濯しなければ。
そういえば、あの人にもあの人にも連絡しなければ。

冷静に作業しているようで、思考が一切まとまらず、同じ動作を何度も繰り返したりした。

大きな洗濯物を干しても、置きっぱなしの「アポロ」の空き箱を見ても、
つい昨日までの元気な夫の気配を感じる。

この服を自分で着ることも、ないかもしれない。
アポロを指先に乗せて食べるしぐさも見られたのも、昨日が最後かもしれない。
そのひとつひとつが、わざわざ私を絶望させた。

思いがけず時間がかかり、実家に戻ったのは夜7時。
子どもたちはいつもどおり、ちっとも言うことを聞いてくれない。
いつもどおり?いや、娘は、いつにもまして、無茶苦茶だった。

今言おう、ちゃんと言おう、と思った。
私は娘を捕まえ、「話がある」と言った。
娘は、何かを察して、受け容れがたいそぶりを見せた。


「大事なお話がある。
 パパは、昨日までとっても元気だったけど、
 今朝、急に、頭の中に血が出て、救急車で病院に運ばれた。

 頭の中に血が出て、死んでしまう人もいる。
 でも、パパはそうならなかった。

 ただ、いつ病院から戻ってくるかはわからない。
 どのぐらい、元気になるかもわからない。

 でも、間違いなく言えるのは、
 パパはとっても強くて、娘ちゃんや息子くんが大好きだから、
 病院でも一生懸命、元気になろうとする。
 病院の先生や看護師さんも、頑張ってくれる。

 だから、ママと息子くんと一緒に、
 おりこうに、できることを頑張って、パパの帰りを待とう。」


娘はわんわん泣いた。ものすごくショックだったと思う。

「聞きたくなかった?」

「ううん、なんでパパいないんだろうって思うから。あと、寝ている間に知らないうちに怖いことが起こってたって思って…」

ひとしきり泣いて、娘は日常に戻った。

(息子は、何かのタイミングで「パパ、いないねえ。お仕事?」と言っていたので、「パパ、あたまいたいいたいで、びょういんにいるよ。げんきになったら、かえってくるよ」と伝えた。「はあい」とよい返事をして、何となくわかってくれた様子)

翌朝、娘は、自宅に帰りたいと言った。
その日は夜の入浴まで済ませ、3人で、夫のいない自宅へ帰った。

⑤に続く。
ちなみに夫は現在、リハビリ病院に入院して鋭意リハビリ中。
「なった話」は進行形だし、厳密にはずっと続くので…
noteとしてどこまで書くかは未定ですが、どこか切りのいいところで切りますね。

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