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超ざっくり経済学派マップ 〜経済を見る8つの切り口〜

はじめに

コロナで世界中の経済が打撃を受けています。
こういうときこそ、経済の知識を見つめ直すチャンスだと思いますので、自分の学び直しのためにも、経済学派をまとめてみました。
… ただ、とてもざっくりと。

いろいろな考えを持って経済学を研究した人たちがいること。そして、その切り口が結果的に経済を超えて役立つ知恵になっていることを わかってもらえればと思います。

厳密性に欠ける部分はありますが、
経済学を知る前の目次のように活用してもらえればいいな と思っています。

紹介する経済学派

今回触れる学派は8つ。

・古典派
・新古典派
・マルクス派
・ケインズ派
・シュンペーター派
・オーストラリア学派
・制度学派
・行動経済学派

※学派の選定には「ケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド」の第4章を参考にしており、新古典派は主にケンブリッジ学派を指しています。

学派名だけを見ても、なんのこっちゃ状態なので
さっそく(だいたい古い順に)紹介していきます。

古典派 「供給が需要を生む」

中心人物:アダム・スミス、デヴィッド・リカード、ジャン・バティスト・セイ
キーワード:神の見えざる手、セイの法則、労働価値説

学校でも習う「神の見えざる手」という比喩が使われたのがこの古典主義です。「供給が需要を生む」というセイの法則がとても重要な考えになっています。

しかし、その考えに固執しすぎて失業や景気後退のような問題を取り扱えないのがたまに傷。

社会を資本家、労働者、地主の3階級でわけるなど時代遅れな考えが多く、今では中学生が教科書で習うような「昔あった伝統的な学派」になってしまっています。

温故知新な方は、ここから知ってみるのが良いのかもしれません。

新古典派 「市場は放っておけば安定する」

中心人物:アルフレッド・マーシャル
キーワード:自由放任主義、ミクロ経済学、効用価値説

「古典派を受け継ぎつつ、新しい考えを持ってる」学派。
古典派から市場は自ずと安定するという考えを受け継けつぎました。
一方で、経済を合理的な個人の集まりとした(階級の集まりではなく)ところが古典派と異なっています。

このように経済を個人レベルまで細かくして考えることで、汎用的に考えることができ、経済学の主流になりえました。

マルクス派 「資本主義はいずれ崩壊する」

中心人物:カール・マルクス
キーワード:計画経済、社会主義、資本主義の崩壊

資本主義を批判した珍しい学派です。重要なことは、マルクスが社会主義を信じさせて革命を起こそうとしたのではなく、資本主義のシステムを明らかにすることで資本主義の問題点を指摘したということです。

分業による生産性の向上を評価しながらも、効率化され細分化された仕事に人々がやりがいを感じなくなってしまうことを危惧していました。

資本主義に定着した仕事のシステムに疑問を持っている方はマルクスの考えに共感する部分があるかもしれません。

ケインズ派 「市場には政府の介入が必要だ」

中心人物:ジョン・メイナード・ケインズ
キーワード:マクロ経済学、財政・経済政策の必要性、有効需要

現代の資本主義社会に最も適した学派で、大恐慌やリーマンショックなど経済の危機的状況で力を発揮してきました。(経済危機で各国政府が行った対策はとてもケインズ派っぽい)

古典派が重視したセイの法則に対して、ケインズが用いた重要な概念が有効需要で、購買力がなければ需要は生まれないという考え。
不況時には政府が財政出動し、供給サイドの過剰な生産能力に見合うだけの需要を創り出すべきで、そうしなければ経済は再生しないという考えを持っていました。

経済が下向きのとき、あなたが政府の経済対策に聞き耳を立てているのなら、それはあなたがケイジアンだからなのかもしれません。

シュンペーター派 「イノベーションこそ経済の活力だ」

中心人物:ジョゼフ・シュンペーター
キーワード:技術革新

マルクスの「技術開発こそ資本主義の原動力」という言葉を発展させた学派。イノベーターはその経営の官僚化にともないカリスマの生み出す活力を失い、経済全体が衰退していくと予言していました。

経済学派としてよりもむしろ、イノベーションに対する考えとして注目すべきだと思います。

シュンペーターの予言した資本主義の衰えとは裏腹に、現代社会を見る限りそうはなっていません。この予言は100%正しい訳ではありませんでしたが、ベンチャーで働く人は留めておくべき考えではないでしょうか。

オーストリア学派 「市場は放っておけばよい(不確実だから)」

中心人物:ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス、フリードリッヒ・ハイエク、カール・メンガー
キーワード:自由市場主義、市場の自発的秩序、限界効用理論、功利主義

最も自由市場に傾いているのがこの学派。
言ってることは新古典主義と同じですが、自由でいいと考える理由が少し違っていて人間らしいんです。

「だって市場ってよくわかんないんだもん」
市場は複雑すぎてよくわからないので、きっと自発的秩序が生まれるだろうというスタンスを取っています。

これだけだと、適当でいい加減な学派に見えますが、
このオーストリア学派の人間らしさが、限界革命と呼ばれる革命を起こしています。

それまで経済学では、商品の価値はそれを作る労働力で決まりました。
しかし、限界革命により商品の価値はその商品を買うことで得られる満足度(効用)で決まります。

オーストリア学派は、それまでの経済学派になかった人間らしい切り口で、経済学を切り込んだとても面白い学派です。

制度学派 「制度は文化やその時の状況に適応し進化する」

中心人物:ソースタイン・ヴェブレン、ジョン・ロジャーズ・コモンズ
キーワード:過去の制度、ダーウィニズム、ニューディール政策

他の経済学派と違い、制度学派は過去の歴史的な制度を分析し、一つの理論として一般化しようとした学派です。

この学派は今ではかなりマイナーですが、ニューディール政策の想起にこの学派の多くの研究者が関わったそう。

研究者により軸が違うため、とてもひと括りしには表現しにくいですが、始祖であるヴェブレンは、経済学にダーウィンの進化論的視点を取り入れようとしました。

ただ、理論化しきれなかったことと、ニューディール政策で立法化した制度が違憲判決を受けたことで、次第に経済の本流からいなくなっていきました。

行動経済学派 「人間の選択はそれほど賢くない、ありのままを見つめよう」

中心人物:ハーバード・サイモン、ダニエル・カーネマン
キーワード:限られた合理性、ヒューリスティクス、プロスペクト理論、バイアス

 心理学と経済学が融和したような学派。それまでの経済学が人を合理的だとしていたのに対して、人は合理的ではないという見方をしています。そして、その人間が経済活動で実際に行う選択を実験的に解明していきます。

行動経済学研究のおかげで、経済活動の中で人がどんな理屈に従って選択をするかや、どんな偏った(非合理的な)選択をするかといったケースが明らかになっています。

 「経済学を学びたい!」と言って学び始めるのに適してはいないかもしれませんが、マーケティングに役立つ知識です。「なぜ期間限定や数量限定と掲げるか」や「コースのランクがなぜ松竹梅と3つか」など行動経済学で明らかになって、街で実践されていることはたくさんあります。

さいごに

今回紹介した8つの学派に限らず、いろいろな考えをつまみ食いするもよし、一つの考えを深く調べるもよし、、
このnoteがちょっとしたきっかけになれば嬉しいです。

「自分はこの学派だ!その思想を育てよう!」と力む必要はないですが、経済学を教養として育てるのに必要なのは、バランス感覚ではないかと私は考えています。

また、ざっくりと説明するあまり、間違った表現になっているかもしれません。些細なことでもコメントいただけると幸いです。

参考
ケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド ハジュン・チャン
5分でわかる!経済学三大思想「新古典派、ケインズ、マルクス」の流れ 週刊ダイヤモンド編集部
入門 制度経済学 ベルナール シャバンス
カール・マルクス 「資本主義」と闘った社会思想家 佐々木隆治
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