見出し画像

寒空の下で本を読む

先月から私は週に1回、彼の打ちっぱなしの付き添いをしている。1人で家に取り残されたくないことを理由に(私は甘えんぼうの寂しがりやで、極度の夫好きだ)、今年ゴルフを始めたばかりの彼の「スイングを撮影するため」という口実を作り、付き添ったのが始まりだった。

打席の後ろにあるソファに座り、次に書きたいノートの内容を箇条書きにしたり、他の人のノートを読んだり、彼のゴルフを眺めたり。色々しているわけだが、ほとんどの時間は本を読んで過ごしている。

ゴルフ場は屋外のため、冷たい風が横から吹きつけるのを感じながら、あってないような微力なヒーターで身体を温める。正直この時期は寒くて仕方がない。しかし、この寒さがまるでキャンプに来ているように感じてとても心地良い。



少し話は変わって、私は今年から彼とキャンプを始めた。昨年末に何か2人の共通する新しい趣味があったらいいね、と話していたのがきっかけだった。

キャンプといっても泊まりはなしのデイキャンプで、朝早くに行って夕方には帰ってくる。猫2匹をお留守番させることはできないし(我が家にはご飯をある分だけ平らげてしまう困った猫が1匹いる)、単純に冬用の寝袋は高いよねと言う理由からだった。

焚き火をして、ご飯を食べて、おやつを食べて、コーヒーを飲んで、火のお世話をする、そんな普通のキャンプ。そんなキャンプの中で1番好きなのが焚き火だ。焚き火がしたくて、いや、するためにキャンプに行っている。寒空の下、焚き火の温かさを感じながらパチパチと薪が燃える音を聞こえる中で、何も考えずに薪をくべてぼーっとする最高の時間。

少し飽きてきたら、次はコーヒーを片手に読書をする。職場に向かう電車の中でするのと、家でじっくりしっかり向き合うのとはまた違う、自然に包まれながらまるで本と対話しているような、そんな気分にさせてくれる時間がこれ以上のない幸せに感じる。煙の香りがほのかに本に移り、帰宅後もその香りで今日の余韻に浸れることが、またとてつもなくいい。



そんなわけで話は戻るが、ゴルフ場の寒空の下、ヒーターで温まりながらする読書が、まるでキャンプで焚き火をしながら読書をしていることを彷彿とさせてくれる。まさに私の中でのお気軽焚き火読書なのだ。しかもキャンプとは違い、手元の本から顔を上げると、そこにはゴルフを頑張る推し(夫)がいる。眼福の極みである。



最後に、最近たまたま読んだ本の中で私の感覚を代弁してくれている一文に出会ったので紹介する。

「もちろん名画はどこで観たって名画だ。けれど夏の夜空に咲く花火を、家の狭いベランダからではなく、川の匂いと夜風を感じる川辺で見上げればひときわ美しいように、映画館で観れば、それはいっそう胸に沁みる。」キネマの神様(原田マハ)P69抜粋



もうすぐ春が来る。焚き火とゴルフ場のヒーターに、あと数えるほどしか楽しませてもらえないことが寂しくて、今から次の冬が楽しみでしかたがない。

寒いのが大嫌いだった私が少し好きになれた、そんな冬だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?