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マティス 自由なフォルム内覧会~求道者マティスの見出だした答え

国立新美術館の『マティス 自由なフォルム』展の内覧会へ行ってきた。
コロナ禍で延期になっていたが、無事に明日から開催される。
昨年の東京都美術館での『マティス』展は、マティスの初期作品が中心だったが、今回はニースのマティス美術館のコレクションをもとにしているためか、マティスのキャリア全体を網羅しながらも、メインはやはりニース時代の作品、特に切り紙だ。
その目玉が、何と言ってもこの〈花と果物〉だ。

80歳のマティスによる、縦約4メートル、横約8メートルに及ぶ、文字通りの大作。
ロサンゼルスのヴィラの壁画装飾のデザインとして依頼され、制作された4つのヴァージョンの一つだ。
よくもまあ、ここまで、と感嘆したくなる。
そもそも、切り紙絵の手法にたどり着いた時点で、マティスはすでに70代だった。
切り絵への転向のきっかけは、大病を患い、体力的に油彩の制作が難しくなったことだった。
その前にも、アメリカの実業家バーンズから、壁画〈ダンス〉を依頼された時に、切った紙を壁にピンで留めて、形や色についての構想を練ったこともあった。


切り絵とは、マティスにとって永遠の課題である「色彩とデッサン」の問題に対する究極の答えだった。
色彩画家としてのイメージが強いマティスだが、デッサンを疎かにしていたわけではない。むしろ、色彩と同じくらい重視していた。
しかし、デッサンで良い線を引けた、と思っても、色をつけてみると、出来が半減してしまうことが少なくなかった。
どうすれば、両者を共存させながら、一つの作品に仕上げられるのか。
その答えが、グアッシュであらかじめ着彩した紙を鋏で切り抜くことだった。
これなら色彩と形とを、同時に決定できる。(頭に思い浮かんだイメージをダイレクトに反映できる)
また、切り出した紙を壁にピンで留めることで、自由に動かすことができるため、描き直す手間が省けるメリットもあった。
『ジャズ』のような小型作品から始まった切り絵は、やがて大型化し、〈花と果物〉のような数メートル級の作品も可能になった。
妥協せず、常に「最高」のものを目刺し続けるマティスの姿勢には、本当に恐れ入る。

そんな彼の姿勢、エネルギーを是非体感して欲しい。

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