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Play with the earth

ーーー地球に生きる者として、どう在るべきなのか。

新型コロナウイルスの流行によって、人類にもたらされた大きな問いだ。
ウイルスの蔓延を防ぐため、人びとの移動が禁じられた結果、大気や水は綺麗になり、「本来の姿」を取り戻しつつある。
だからこそ、母なる地球に生きる上で、我々人間は本来どのようにあるべきかを真剣に考える時なのかもしれない。

2020年5月23日20時にYouTubeで公開された「Play with the earth」はまさに、「地球人」として生きる上でのヒントを与えてくれる映像作品だ。

本作品はCINEMA CARAVAN代表の写真家・志津野雷氏による映像作品である。(*2020年5月24日19:59までの期間限定公開)

CINEMA CARAVAN代表の写真家・志津野雷(しづのらい)が20年間世界各国を旅して周り地球本来の美しさや脅威、その恩恵を受けて生活する人間のドラマを集約し自らが監督を務めた“旅を重ねて成長していく映像作品"
公演の度に映像が編集され、生演奏と合わさることから、一度として同じ内容がない本作。
逗子海岸映画祭でも、忘れられない一夜となり、再上映を望む声を多くいただいています。
何より、近年の逗子海岸映画祭で最も皆さんに観ていただきたい映像作品でもあります。
今回は、2018年に逗子海岸映画祭の最終日に公演した際、マルチトラックで収録したものを編集した特別バージョンを公開します。
CINEMA CARAVAN TVより引用)

逗子海岸映画祭にはまだ行ったことがない。毎年「行きたい」と思いながらも、なんだかんだ他の予定と被って行けなかった。しかし昨年行った友人から「最後の映像作品が良すぎて、帰りの電車でも喋れないほどだった」と聞いて、「今年は絶対に行きたい」と思っていた。

他のイベントと同じくして、新型コロナウイルスによって中止を発表した逗子海岸映画祭だが、今年はこの映像作品を24時間限定公開という形で、主催者の想いが発信された。

満面の笑みでリズムを刻む異国のマーチングバンドの姿が映し出された後、映像と呼応するようなバックミュージックと共に、作品が始まった。まるで自分の意識の奥底に誘われているような感覚を覚える。映像作品の良さは、視覚と聴覚によって、作り手の想いにアクセスし、より深い感覚を味わえることだ。バックミュージックの演奏は、CINEMA CARAVANと縁あるミュージシャンで構成された「Play with the Earth orchestra」によるもの。逗子映画祭では毎年、映像と共に生演奏が行われているそうだ。

Play with the Earth orchestra
naoito http://urx.blue/XG7j
Toshizo Shiraishi http://youtube.com/c/VANLIFEGUITARISTTHG
otoji+ray https://www.otojiray.com/
Gen Nagashima https://soundcloud.com/gen-nagashima
bocchi
Maki Saito
南條レオ http://leonanjo.com/

前述の説明にもある通り、この作品は世界各国を旅した志津野氏の記録と記憶を元に構成されている。映像に記録されているのは、カナダ、ポルトガル、ペルー、ベトナムなどの異国から日本の白川郷や沖縄など、世界各国で暮らす人たちの姿と、自然の景色だ。つまり、地球上のリアルを捉えた記録である。

詳しい内容は、実際に作品を通して知ってほしいのだが、各地の祭りが次々に映し出されるシーンでは、本能のままに瞬間を楽しみ、生き生きとしていた人びとの姿が印象的だった。祭りで生まれる一体感は、PartyやLiveで生まれる「グルーヴ」と同じものだと思う。本能的な感覚を開いた人びとが集い、生まれるエネルギー。母なる大地の上で生まれる、目に見えない“それ”は人間だからこそ生み出せる莫大な力であり、地球の未来を明るく灯す希望をもたらすはずだ。

地球上に生きる上で、避けて通れないものは自然の脅威である。
現代の日本人がその事実を目の当たりにしたのは、2011年の東日本大震災だった。作品には、当時の東北の様子も記録されている。当たり前の日常が自然災害によって一瞬で壊れてしまうことを、改めて思い知らされる。
我々人間の愚かな点は「自分たちが地球の主体である」と認識してしまうことだが、本来は地球上にある自然の一部であり、それらと共存しなくてはいけない。そして、それは今後人類が最も意識していかなくてはいけないものではないだろうか。

「実は人も自然なんですよ」

本作には、解剖学者である養老孟司氏のインタビューも記録されていた。人間の体は地球上で生まれた野菜や穀物、動物などを食して出来ている。つまり、人間は物質的に自然と一体化しているものなのだと、養老氏は話す。

東日本大震災は、現地にいなかった人にとっては、テレビの中の出来事であったかもしれない。しかし今回の新型コロナウイルスは、地球上のほぼ全ての人に降りかかっている。だからこそ、私たちは改めて「地球上の自然の一部として、どのように自然と共存していくのか」を考えていくチャンスなのだと思う。

自然は気高く、美しい。山も海も大地も、晴れ渡った青空に浮かぶ太陽も、夜空に浮かぶ星や月も、雨や雪も雷も、ひれ伏してしまいそうなほどの力を放っている。私はダイビングもスノーボードも、野外で行われるPartyも大好きなのだが、いずれも「自然と一体化する」感覚を味わう瞬間、本来の姿に戻れる気がしている。それがなぜかはずっとわからなかったが、本作を観てその理由が少しわかった気がした。

人間には、感性がある。風や大地の匂いや、天からもたらされる光を感じ、喜びを感じる力が本来は備わっている生き物だ。そしてその喜びを力に変え、知恵を持ち合い、協力しあうことだってできるのだ。飽食飽和の時代、その感性が鈍化してしまう人が多いのは事実だろう。しかし、あらゆる自然が本来の美しさを取り戻しつつある今だからこそ、私たちは気づき、行動していかなくてはいけない。自然災害もウイルスも怖い。そして人口が増え続ける中で、食糧不足が懸念され、温暖化も進み、地球環境が緩やかに壊れていることも事実である。

「地球が健全であるために、人間なんていない方がいいんじゃないか」

そんな意見もある。しかし、本作に記録されていた人びとのように、本能のままに母なる大地の上で遊び、集うことで、人は莫大なエネルギーを発生させる。そして人間は知恵を持つ生き物でもある。人種や性別を超えて協力し合うことで、きっと地球の未来は明るくなるはずだ。「自然の一部」として、私たち人間ができることは何か。今必要なのは、それを一人ひとりが真剣に考えていくことなのではないだろうか。


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